二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.84 )
- 日時: 2011/01/13 02:48
- 名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: lBubOowT)
第二話
人間の里。
人間とは銘打っているが、実際のところは妖怪も住まう平和な里である。
私はここの里しか知らないが、果たして全部が全部平和かと言われればそうではない。
本来妖怪は人間を襲い、人間は妖怪に怯える関係にある。
今こそ人間と妖怪は共存しているが、一昔前は人間の死体は平気で転がっていた。
というより死体がない日など無かった。
私は肉食だが人間を取って喰おうなどとは思ってなかった。他に食べる物も沢山あったわけだし。
家族を喰われたものは絶えなかったと聞く。
そこから負の感情が芽生えて、今でも妖怪撲滅とした過激団体も存在している。
別にあの関係が運命などとは思わない。しかし、過ぎたことを気にしてなんになると言うのだろうか。
人間のことを悪く言うわけではない。それでもこうやって考えてしまう。
……いけない。こういう風に考えてしまうのは悪い癖だ。
さっさと目的の物でも買って——
「おお、椛じゃないか! どうしたんだこんなところで」
——なんてこった。
私に話しかけてきた女性は『上白沢慧音』と言う。この里で寺子屋をしている人間だ。
私はこの慧音と友人関係にある。きっかけは些細なことなので省略する。
友人関係ではあるのだが……この人は非常に苦手だ。
よくも悪くも頭が硬い人で、なんというか融通が聞かないというか……。
私は適当に答えた。
「ああ、ちょっと肉を切らしてな……。そういうお前は? 今日は寺子屋は休みか」
「そんなわけないだろう。今日もちゃんとやっているさ。なんなら来るか?」
カラカラと笑う慧音。人柄は里で一番いい人だ。
恐らく慧音の魂胆は私に特別講師でもやってもらいたいのだろう。それで何度やらされたことか。
「遠慮しておくよ。それに、今日は哨戒の任務がある日なんだ」
「それは残念。まあ暇な時にでも来てくれ。子供達が会いたがってたぞ?」
「アイツらか……。子供は苦手なんだがなぁ」
「そういう割には楽しそうだったじゃないか。お前を見てると知人を思い出すよ」
慧音の知人は噂で聞く限り、迷いの竹林で案内人をしていると言われている。
その人は野宿をするらしいので恐らく慧音が世話を焼いてるだけだろう。
「ははっ、通い妻も大概にしとけよ」
「誰が通い妻か。ただアイツは普段の生活がだな」
「あーはいはい分かった分かった。というかそろそろ時間じゃないか? 休み時間にしては長すぎると思うが」
「おっと、もうこんな時間か。じゃあな、お前も頑張れよ」
「頑張るって言っても哨戒はいっつも暇だけどな」
今日は肉がいつもより20円安かった。
なんでも外から大量に肉が来たという話だが……そんな肉で大丈夫なのだろうか。
まあ私は妖怪だし死ぬことはないだろう。多分。
さて帰るか。家には人間を残したままだし、早く帰らないと何をされるか分からない。
そう考えて両足に力を込めた時だった。
——突如、里に大きい揺れが襲ってきた。
「っ!?」
バランスを崩してしまう。
一体何が起きたのか分からない。
地震……とは違うようだ。建造物は一切壊れていない。
だったら今の揺れはなんだったのだろうか。
「椛!」
「慧音!? 一体どうした!」
向こうから血相を変えて走ってくる慧音の姿が見えた。
かなり焦っているようだが一体どうしたというのか。
「こ、子供が一人攫われた……」
「何があったんだ?」
「突然大きく揺れただろう? その時身長が高めの男が窓から入ってきて、それで……」
「馬鹿野郎! なんでお前は子供たちから離れてんだ!」
「離れざるを得なかったんだよッ! 大丈夫。子供達は『隠した』」
『隠した』……それなら安心だ。
なら、私がやれることは一つ。
「それじゃあ私は犯人を追いかければいいんだな?」
「頼む。犯人探しはお前が一番得意だと思ってな」
「いいよ。んじゃ、ちょっと行ってくる。お前は里に被害が出てないか確認してくれ」
「分かった。気をつけてくれよ」
「誰に言ってんだ。私は天狗だぞ?」
私の能力は『千里先を見通す程度の能力』。所謂『千里眼』というやつだ。
しかも私はそれなりに鼻は利く。犯人探しには持って来いだ。
慧音からは子供の匂いを発していたので、恐らく戯れていたのだろう。
そこに突然やられたということだろう。
慧音から子供の匂いを拝借させてもらった。
子供の匂いを辿るか眼で見つけるかすればいい。簡単な話だ。
私は両足に力を込めて、跳んだ。
上空から探すつもりだ。その方が早い。
空から里を眺めた。
——見つけた。
高速で近づく。犯人は人目につかない家の中に居た。
「はーいどーもー。子供を返してもらうぞ?」
犯人は黒いローブの様なものを纏っていた。身長は慧音の言う通り高身長。ビンゴだ。
「私も急いでいるんだ。さっさと降参しろ」
「…………」
男は私の言葉には答えなかった。
代わりにゆっくりと近づいてきた。
私は溜息をついた。
「はぁ……ツイてねぇよなぁ。私も、お前もさ」
そう言うと同時に私は一気に近づいて蹴りを入れた。
ごっ、という鈍い音が響く。
しかしそれは私の蹴りから出る音ではない。
私に拳を入れた男から出た音だった。
「がっ、あぁあああああ!?」
見えなかった。
にも関わらず私はノーバウンドで1m以上吹っ飛んだ。
対する男は微動だにしない。
「…………」
男は、そのまま背中を向けた。
視線の先には、子供。
——まさか。
背中に冷たいものが走る。
「させっ、るかぁああああああああ!!」
飛び起きて男の背中に思いっきりタックルをする。私もろとも倒れこんだ。
阻止出来た。後はコイツをどうにかするだけだが……。
私は確認をしていなかった。そいつが本当に倒れているのか。
そして……そいつが、本物の犯人なのかさえ。
「ん。ご苦労さんだったな。やっぱ偽モン置いといてよかったわー」
——え?
私は声のする方を向く。
しかし誰もいない。もう一度倒れた男を見る。
瞬間、それはボロボロに崩れだし、跡形もなく消えていった。
「あーアンタもご苦労だねぇ。見事に釣られちゃって。あ、その子供いらねぇから連れ帰っていいよ?」
「ま、まて! お前はどこから話してるんだ!?」
「あーごめんごめん。そいつぁ教えられない。ま、知りたかったらこの言葉でも覚えておけ」
私はその言葉を危うく聞き逃すところだった。そいつは気軽に話すようにそう言った。
「『アッシュ』。うん、『アッシュ』って言葉覚えといて。それが今後お前らに関係してくるから」
どうもです。
第二話いかがでしょうか?
後半になるにつれてグダグダになって申し訳ないです。いつか修正できるといいなー。
それではー。