二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.85 )
日時: 2011/01/13 20:56
名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: lBubOowT)

第三話

私はそれから子供を慧音に引き渡した。
慧音はなにか礼を言っていたが、私はあの声のことが気になっていた。
響き的には英語っぽいが、私は英語に詳しくないのでよく分からない。


今は家に居る。
買ってきた肉は戦闘のせいでちょっと傷んでいたが、まあいい。
適当に調理して食べよう。
肉に塩と胡椒をふりかけて焼くだけの簡単な作業です。
10分後には勝手に焼けるのでほっといて大丈夫だ。
河童の技術は流石だと認めざるを得ないな。

そう言えばあの人間はどうなっているのだろうか。
あの状態で死んでいる、などとは決してないだろうから、まだ寝ているのか……。
ちょっと様子でもみようか。もし死んでいたら捨てなければならない。
私のベッドに突っ込んでいたはずなので寝室へ行く。

……寝ているな。息はしている。
死なれたら死なれたで困るのは私なので内心ヒヤヒヤしていた訳だが、別に気にすることでもなかったようだ。
上から覗き込むように人間の顔を見る。
優男。そういう言葉が似合うような顔だった。
その人間はアホみたいな顔をして寝息を立てているわけだが……。

「う、うぅ……」

お、目が覚めたか?




目を開けると、そこには銀髪の少女が覗き込んでいた。
ワケが分からない。夢かこれは夢なのか?

「お、目が覚めたか?」

目が覚めた……? どういうことだ。
僕は確か変な山で気を失って……。

「っ!? そうだ、ここどこだ!?」

勢いよく飛び上がる。目の前の少女は華麗に避けた。

「っと、いきなり飛び起きたら危ないだろ?」

少女がなにか言っているが僕は構わず質問をした。

「なあ君! ここは一体どこなんだ!?」
「君じゃない。私には犬走椛という名前があってだな——」
「ここはどこなんだ!? 僕はどうしてここにいるんだ!?」
「分かった分かったからまず落ち着かんか! ええい肩を掴んで揺さぶるんじゃない!」



「ったく、少しは落ち着いたか?」
「はい、ゴメンなさい……」

この目の前の男はどこぞのゴシップ記者のように話を聞かない男だった。
まあ確かに自分の家以外で、しかも見知らぬ人物が居て混乱はするだろう。
が、それでも人の話は聞くものだ。

「それでちょいと質問だが、お前はどっから来たんだ?」

人間はちょっと言いよどんだ後、分からないと答えた。
分からないとはどういうことだ?

「あの……自分どうも記憶喪失ってやつみたいで」

頭を掻きながら理由を説明する人間。

「記憶がない、ねぇ……」
「あ、あはは……やっぱり信じがたいですよね」

そりゃ当然だ。
いきなり記憶喪失と言われても普通は疑う。
しかし、この人間が嘘を言っているとは見えない。

「それで、その……犬走さん、一体ここはどこなんですか?」
「椛でいい。そうだな、まずはどこから話すべきか……」

私は人間に分かりやすいようにこの幻想郷のことについて説明した。


幻想郷は一言で言えば『無くなった土地』だ。
どういった理由かはもう忘れた。確か何か大きな出来事が起きたのが原因だ。
それから幻想郷の周りに『博麗大結界』を創って外の世界と完全に遮断した。
それから度々異変など起きたりもして、今日幻想郷は存在している。
……簡単に説明するとこうなる。端折り過ぎてるかもしれないが気にしない。

「そしてここは妖怪達が集う山。人間からは『妖怪の山』と呼ばれているところだ」
「妖怪……ってあの人を襲う見た目がめちゃくちゃ怖いあれですか?」

その認識は間違ってないが……。

「見た目が怖い奴は大抵自我を持たない妖怪だ。私のように自我を持つ奴は大体人間の姿なんだよ」
「えっ、椛さんって妖怪なんですか?」
「そうだが。ほら、耳もあるし尻尾もある」

耳や尻尾を動かす。人間は大層不思議そうにしていた。

「それ、付けているのかと思ってました」
「それだったらどんなに良かったか……」

この尻尾のおかげで里の子供達に引っ張られて苦労している。
子供は苦手なのだ。

「うわっうわっ、すごいもふもふしてる! 何これ触りごこち良すぎますよ!?」
「そうなのか? 私にはよく分からないが……」

……今度触ってみるか。

「ふむふむ、椛の尻尾はこうなっていた、と……」
「オーケイ、取り敢えずテメェは何やってんだ射命丸ぅ?」

いつの間にか射命丸が入ってきていた。プライバシーもなにもあったもんじゃない。

「いやぁ拾ったという人間が目を覚ましたのを確認……もとい聞きましたので」
「ほう? お前どこかにカメラ仕組んでやがるな?」
「あやややや。そんなわけ無いじゃないですか、盗撮魔じゃあるまいし」
「えっと……こちらの方は?」

人間が質問してくる。正直答えるのは嫌だが射命丸が勝手に自己紹介した。

「私は射命丸文というものです。所謂ブン屋というものをやっております」
「はぁ、新聞屋さんですか」
「それでは早速インタビューを——」
「帰れゴシップ。私たちはこれから朝御飯だ」

こいつがいると一生お腹が膨れない。さっさと返したほうが自分の身のためだ。

「あやややや? それはそれは失礼しました! それでは名前だけでも教えてくれませんか?」
「そいつ、記憶喪失だ。ほら帰った帰った」

射命丸は『なんと!』と言って驚いた。

「それは本当ですか!? ふむ、外から来た人間は記憶喪失だった!」
「あの、椛さん。この人は……」
「心配しなくてもいい。それが通常運転の奴だから」
「はぁ……。でも名前がないのって不便だなー」

馬鹿、そんなこと言うと——

「なら私がつけましょうか! これも何かの縁ですし!」

——もう駄目だ。
ここまで来たら嫌でもやる奴だ。
頭が痛くなってきた……。朝から色々ありすぎた。

「ふむ、なら天狗に拾われたので『テン』という名前はどうでしょう?」







第三話でした。いかがでしょう?
主人公の名前は射命丸が決めました。これからはテンと表記させていただきます。
うん、やりすぎた感がある。でもいいよね?
それではー。