二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 好きだなんて言ってないからっ!【銀魂】やっと桃VS蒼城!! ( No.409 )
- 日時: 2010/04/20 21:28
- 名前: 夕詠 ◆NowzvQPzTI (ID: HccPNei.)
【第四十八訓:紅イ月、狂ノウタ】
「弱者は消す、が僕達のルールなんですよ。それに僕の情報を流しそうだったんで、物理的に口を利けなくしてやろうと思いましてね。姫愛達には悪いですけど、仕方無いんですよ」
その人物は笑みを浮かべた。
「・・・やっぱり神経どうかしてるんじゃねぇのか?ちょっとこっち来いや。その面一回見てみたくてな。ここからじゃ逆光で見えねぇんだよ」
土方さんは言う。
「分かりました」
「見えないぐらいが謎でいいかな、なんて思ったんだけどな」
紅蓮隊の2人はそれぞれ思い思いに口を開くと、前に進み出た。
「桃、お前が蒼城を殺れよ。大将同士の対決の方がおもしれぇだろ?」
晋助、そんな軽く考えないでよ。
あたしは蒼城の方を見た。
そのときふと、初めて見た敵のトップの顔は、
「———・・・何で、貴方が・・・っ!?」
茶色のサラサラと風に靡く髪と、襟と袖に黒いラインが入った白いチャイナ服の紅蓮隊隊長らしき人物の隣。
すらっとした長身、常に笑った眼、銀色のサラサラな一房だけ黒く染まった髪。
そして、高くも低くも無い柔らかい声。
「———・・・師匠」
その顔は紛れも無く、師匠そのもので。
「「狂夜・・・!!」」
銀時と晋助もそう思ったのだろう。
驚きの色が隠しきれない。
師匠は喉を鳴らすように笑う。
「久しぶりやな、桃、銀時、晋助。びっくりしたやろ?まさか、敵のトップが俺やったなんて思ってへんかったんちゃう?」
「気づかなかった・・・だって、そんな事———!!」
あたしは自分の言葉で気づいた。
いろいろな事が頭にフラッシュバックしてくる。
———分かった。
巽が蒼城を『きょーちゃん』って呼ぶ理由。
蒼城の名前が不明な理由。
同じように、師匠の名字が不明な理由。
あたし、蒼城の名前も師匠の名字も知らなかったんだっけ———。
今、やっと分かった、師匠の本名。
ずっと気になってたけど聞くタイミングが掴めなくて。
———でも、こんなカタチで知りたくなんかなかったよ・・・。
ずっと、一緒にいたのに、謎だらけで掴めなくて。
昔から何を考えてるのかが分からなかった。
———分からなかったんだ。
「・・・無理だ」
いや、
「あたしはあの人に傷一つつけることさえも出来ないよ・・・」
分かりたくなかったのかもしれない。
「っていうか、狂夜って関西弁なの?」
茶髪の男は問う。
「本来はそうやけど、神夜とか紅蓮隊の前では丁寧語にしとったなァ」
そこ、変える必要あったんですか?
「やっぱり、俺は笑い顔と喋り方が特徴やからな。どっちかを変えとかんと、裏の顔がばれてまうんやないかー?思って」
だから今日まで気づかれなかったんですね!
さっすが師匠です☆
「おーいソコ、感心すんなー」
あ、すんません銀八先生。
「先生じゃねーだろィ」
お、珍しいじゃん。総悟がツッコミなんてさ。
「つか、狂夜。神夜って誰だ?」
晋助が若干スルーされそうだった、その質問を師匠に投げかけた。
「春雨第七師団団長補佐、神夜。俺の事だよ。あ、ちなみに神の夜って書いて『かぐや』。ここを支配してる神威とは親戚ね」
男なのに『かぐや』とか笑えるんですけど。
顔も女みたいだし、ホントは女だったりしてー!
「わ、笑うな!・・・気にしてんだから」
余計に笑えるんだけど。
「もういいよ・・・っていうか、蒼城とその子って師弟だったんだ」
腕を組んで壁にもたれかかった、神夜が喉を鳴らすように笑っていた。
っわー、コイツ強引に話しかえる気だぞー。
「———殺すのに支障とかないの?」
神夜は口元を歪めて笑みを浮かべた。
そうだった。これは勝負、殺し合い。
師匠だの、弟子だの言ってられないんだ。
「大丈夫や。俺には何の問題もあらへんよ」
たとえ師匠だろうと、あたしたち真選組の敵である事には変わりない。
あっちも同じだ。あたしが弟子だろうと敵なんだ。
それに、今の師匠は師匠であって師匠ではない。
師匠は情報がなんとかなどの理由で人を撃ったり、ましてや殺すなんてことはしない人のはずだ。少なくともあたしといた時はそうだった。
今の師匠は、表の顔の“狂夜”ではなく、裏の顔の“蒼城”だ。
・・・そう思えば殺れる。
そうして自分に暗示をかける。
かけなきゃ、やってらんない。
「・・・・・・っ」
でも、その思いとは裏腹に、あたしの頬を涙が伝う。
それはあたしの中の色々な感情の表れで。
苛立ち、憤り、悲しみ・・・全てがあたしを狂わせる。
「桃・・・」
無理だ、嫌だ、戦いたくない、
戦えない。
「みんなが早く屯所に帰りたいのは分かる。分かってるよ———でも、ゴメン・・・裄、晋助、銀時、総悟、土方さん」
戦えるワケ、ないじゃんか。
師匠の口元に笑みが浮かんだように見えた。
「あたしだって、早く蒼城を倒して屯所に帰りたい・・・。みんなでバカみたいに騒いで、笑って、たまに泣いて、そんなあの場所に笑って帰りたいよ。でも、あたしにあの人は殺れないよ・・・」
あたしは、どうすればいいんだよ・・・!!
「俺、ぼーっとしてたらアカン言わへんかったっけ?」
そんなあたしの様子を見て、隙を突こうと思ったのかあたしの横を刀が掠める。
「っ!?」
「てめ・・・っ!!いくら狂夜だからって許さねぇぞ!!」
「銀時!お前は引っ込んでろ!俺がやらァ!!」
銀時と晋助が刀を師匠に向かって振りおろした。
ただただ、月が———紅い。
・・・嫌だ、嫌だ、嫌だ、
「嫌——————っ!!」
紅い月は、狂わせる。