二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 好きだなんて言ってないからっ!【銀魂】 ( No.581 )
- 日時: 2010/05/17 22:21
- 名前: 夕詠 ◆NowzvQPzTI (ID: nO1e2KZX)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
【第六十三訓:気まずくなったら とりあえず注いどけ】
万事屋銀ちゃんの一室で『ガッキーが来た!・・・ってことで飲み明かそうぜェェェ!!』という名目の飲み会は、
「今夜は無礼講ぜよーっ!」
という辰馬の言葉を皮切りにスタートした。
メンバーは主に攘夷戦争時代のヤツらと総悟と土方さんと近藤さんとザキだ。
皆思い思いに、酒を飲んだり、何か食べたりしている。
その中であたしは晋助、ヅラ、銀時、辰馬といた。
辰馬がさっきから酒を薦めてくるけど、一応あたし未成年だから!
・・・まぁ、いっか。辰馬ー酒ーっ!
「おぉ、どんどん飲め飲め。飲むと楽しいきに、遠慮せんでよか」
いや、遠慮してたわけじゃないんだけど。
単純に未成年だからなんだけど。
「そういえば、桃の兄貴は今どうしているんじゃ?あの後色々あったと聞いたんじゃが・・・」
その問いにあたしの動きは何秒間かだけ止まった。
兄貴———・・・。
特にいうほどの話でもないから、近藤さんたちには言ってないけど、実はあたしには3歳離れた兄貴がいる。
でも、ある一件があってから顔すら見ていない。見たいとも思わない。
はっきり言って、あたしはアイツが嫌いだからだ。
なにやら気まずい雰囲気に耐えられなくなったのか、辰馬はあたしの猪口に酒を注ぎながらいう。
「・・・それにしても、桃。お前さん、えらい別嬪さんになったんじゃながか?」
へ!?そんな事ないよ!!
すると晋助が辰馬の肩に腕を乗せる。
「だろォ?もう別嬪どころの騒ぎじゃねぇよー」
あ、ダメだコレ。完璧に酔ってるよ。
すると銀時も、
「オイ、辰馬ァ。いくら桃が別嬪だからっつっても、お前なんかには渡ねーからなァー?」
と辰馬にもたれ掛かりながら言った。
こっちもダメだ。二人とも、ただの酔っ払いじゃんかよ。
アレ?ヅラは?
「ヅラならあっちにおるじゃろ」
あ、ホントだ。
椅子の方で『日本の夜明け』とか『攘夷活動』について熱弁をふるってる。
でもヅラ、二人ともベロンベロンで気づいてないけどアンタが喋ってんの近藤さんだから!
すると辰馬があたしの肩を叩いた。
「桃、その酒熱燗じゃけ、冷めてまうきに早く飲まんと」
確かに注いでもらったときに熱かったのに、今はそんなに熱くないな。
でも、あたし猫舌だからちょうどいいかもな。
「んじゃ、いただきまーす・・・」
初めて酒なんて飲むなぁ。一応警察だからさ、未成年飲酒はまずいかなーって。
あ、でも総悟は飲んでるよな。
それを一口、口に含んで飲み込むと、顔がだんだんと熱くなってくる。
「・・・オイ、辰馬」
「なんじゃ?」
あたしは猪口を晋助の鼻っ面につき付ける。
「・・・ねん」
「聞こえないきに、もちっと大きな声で喋ってくれ・・・」
辰馬が言い終わらないうちにあたしは続けた。
「———・・・酒が足りへん言うてんねんっ!!!」
その声にその場に居た全員が振り向いた。
恐らく一瞬で酔いが冷めただろう。
「もっと持ってこいやボケェェ!テメーらに芸者の精神は備わっとらんのかァァ!!」
普段ならきっと、そんなの備わってるわけねぇだろうがァァァ!!!と新八が返すところなのだが、その新八が今日はいなかった。
「まさか桃が酒乱だったとは思ってなかったぜ・・・」
「わしもじゃ・・・」
晋助と辰馬は呟く。
「オラ、晋助、辰馬ァァ!テメーら何しとるんや!そこで喋っとる暇があるんやったら酒もってこんかい、酒ェェェ!!」
「「・・・すっ、すみませんでしたァァァ!!!」」
ソレからはよく覚えていない。
とにかく楽しかった。そんな夜だった。
「ん・・・」
俺は寝起きで重い瞼を薄く開いた。
ここは———どこだ?
首を横に動かすと、すーすーと気持ち良さそうに寝息を立てる桃の顔があった。
———あ、そうだ。万事屋の中で酒盛りしてたんだっけな・・・。
頭痛ェし、二日酔いか・・・。
でも外の明るさからいって、まだ朝ではないらしい。丑三つ時ぐらいだろうか。
そんな時、万事屋の床を誰かが歩く音がした。
一体、誰だ?
その足音は椅子に寝転んだ俺の頭の横で止まった。
「———誰だ」
俺はその人物に問うた。
するとその人物は答える。
「杉さん、俺だよ。ちゃんと鬼兵隊総督補佐として真面目に仕事してたらさぁ、ちょっと報告ができちゃって」
登場の仕方がシリアスだった割には、あっけらかんとした声で言った。
「七桜か。・・・報告は何だ?」
「実は———奴らが動き出した。今すぐ阻止しにいくのが妥当だよ。・・・どうする?」
七桜は不適に笑みを零す。
それと同じ様に俺も笑う。
「行くに決まってんだろうがよォ」
俺と七桜は玄関に向かって歩いた。
・・・と思ったのだが、七桜は少し部屋に残っていたらしい。
七桜は部屋に居た少女の頭を撫でた。
そして黒い笑みを浮かべながら、
「———そこそこ可愛くなったんじゃない?」
月が明るさに消えそうなその時、呟くのだった。