二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 好きだなんて言ってないからっ!【銀魂】600コメ記念絵UP! ( No.633 )
日時: 2010/05/25 21:37
名前: 夕詠 ◆NowzvQPzTI (ID: pR7JxfSl)
参照: http://id27.fm-p.jp/227/yuu0812/

【第七十二訓:本当に大切なものに気付くのは 決まって失った後】



———第一倉庫前。

「・・・はぁ・・・っ・・・」

二人の乱れた息が、真っ赤な地面が広がるその空間に聞こえた。
そのうちの一人、桂が、

「アイツじゃなくても、四体族がここまで強いとは・・・俺達は少々見くびっていた様だな」

と、自嘲じみた笑みを浮かべた。

「男が二人掛かりでも、このザマだぜ?このまま一気にいかねーと・・・やべぇな」

桂と背中合わせになっている高杉も言った。
するとその前にいる、人物は彼等を嘲笑うように、

「四体族を見くびってくれては困るな。私達は夜兎族よりも強い。それは義手だろうと変わらない」

その女は綺麗な金髪を風に揺らし、緩んだ右腕の包帯を直す。

「———さぁ、そろそろ決着をつけるとしようか。お前らには死んでもらおう。四体族を見下していた罰だと思え!!・・・紅蓮隊紅華、詠!推して参る!」

金髪の女が薄く笑みを浮かべながら刀を両手で握った。
すると、高杉と桂は笑う。

「別に、見下してなんかねぇよ」

「見下したりなんかすると、怒る奴が一人居るものでな」

すると、詠と名乗る女は驚いたような表情を見せた。

「お前達の知り合いの四体族って———アイツか」

その時、遠くから聞こえた靴の音が高杉たちの後ろで止まった。
その方向には、二つの影。

「やはり、お前が———・・・」





———倉庫街某所。

「あれ?その程度なんだー。やっぱり人間なんてそんなモンだよね。つまんないの」

椿鬼が笑いながら言った。
土萌さんたちが、第一倉庫に向かって少し経った。
そんな少しの時間だったのに———土萌さん、

「———・・・ゴメンなさい・・・っ」

私じゃ、無理だったわ・・・。
せめて、アンタはだけは死なないでくれ。
アンタが居なくなったら、黒蝶隊の奴らはどうすればいいんだ。
だから土萌さん、アンタは

「死んだら・・・許さねーからな・・・っ!!」

あたしが今、振り絞れるだけの声で言った。
多分、呟きぐらいにしかなっていないだろうなと思いながら、自嘲じみた笑みを浮かべた。

「辞世の句、だっけ?・・・は詠み終わった?———じゃ、」

椿鬼は非情に笑う。
ムカつく。でも反撃する体力さえも残っていない。


・・・土萌さん、私黒蝶隊で、

「———バイバイ」



アンタが隊長で、よかった———・・・。

その刹那、視界が紅く染まった。




———別の倉庫街某所。

・・・何なのよ、一体!

「く・・・っ!」

この閻とか言う女、斬っても斬っても異常なスピードで傷が治っていく。
これじゃあ、キリがないっつーのっ!!

「あのーさっきから気になってたんだけどさ、」

ほら、こんな会話ふっかけてくる余裕だってあるのよ?
・・・ヤバイ、腹立ってきちゃった☆

「私、女じゃないからね?」

そんなモノローグを流していると、びっくりして声が出なくなるぐらいの驚愕発言が耳に入った。

「はぁっ!?何言ってんのよ。アンタ女でしょ?」

すると閻は首を横に振って、

「いや、女の格好してるけど、あくまでも女装だからさ」

あまりにも突拍子な内容過ぎて、刀落としそうなんだけど。
その時、地面から金属音がした。
・・・あ、やべ。落ちちゃった。

「あ、隙ありー」

その言葉と共に刀が振り上げられる。
———・・・これ、やばいな。
あたしは反射的に目を閉じた。

紅い飛沫が降り注ぐ。
だが、不思議と痛くは無くて。
あたしは目を開けた。

「・・・フツー戦闘中に、刀落としますかィ」

「そ、総悟っ!!」

あたしを庇ったらしい総悟は、脇腹の当たりに刀が刺さっていた。

「大丈夫・・・っ!?」

あたしのせいだ。
あたしのせいで、総悟は———。



総悟———。



「・・・貴方、人の心配している場合ではないんじゃないですか?」

あたしの直ぐ後ろから声が聞こえ、振り返った———
時にはもう遅かったらしい。

「ぐ・・・っ!!」

あまりの痛みに痛みのする所を見ると、刀が刺さっていた。
あたし、せっかく総悟に護ってもらったのに・・・結局ダメか。
あたし———ここで死んじゃうんだ。
だったら、彩加にもう一回会いたいな。

いっつもボケるあたしに、冷たいながらもツッコんでくれる、彩加。
剣術が上手くて強い、彩加。
何だかんだ言っても優しい、彩加。

「・・・あたし、彩加のこと———」

大好きだった。





———・・・ありがとう。