二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN!】幻覚花弁。—*angraecum*— ( No.143 )
日時: 2010/04/11 18:22
名前: むく ◆Y1ybAG.6mU (ID: zKIbyn23)

◎ #20 —偶然の再会→


会場に着いたのは夏祭りが開催される六時を三分過ぎた頃だった。

10年前になるがここに来た時の記憶は残っていて、それも昔と何一つ変わっていない。

周りにある屋台ではチョコバナナを作っていたり、鉄板に油を敷いたりしていたりして着々と営業を始めているようだ。

「ねえ、一つ提案なんだけど…ジャンケンに負けた人が全員分のチョコバナナ奢るってのはどう?」

すると輪廻がチョコバナナの屋台から垂れ下がっている値段の書かれた紙を一瞥してから言う。

「あ、それ面白いね♪私は賛成かな」

「ウチはどちらでも構わない」

「オイラ最近金欠気味だからパス」

「………」

スパナと無言の私は賛成に回され、賛成四の反対一でジャンケン決行。

「よし、ジャーンケーンポン!」

というゆりなの掛け声と共に五つの手が出される。

輪廻とスパナと野猿とゆりなはグーで、私だけがチョキ。

見事に一発負けだ。

「じゃあ郁。貴女行ってらっしゃい」

輪廻に背中を押されて私はスタスタと屋台に駆け寄った。

このチョコバナナの屋台の店員、どこかで見たことも無くはない。

「へい、いらっしゃい!!…って、あんた中津?…やっぱりか!いやあ久しぶりだな♪なんか性格変わってねーか?」

頭に捻り鉢巻を着けて法被を羽織っている少年——それは確かに山本武、そのものだった。

彼は私の幼馴染みでもあり、幼稚園時代の一番の親友だ。

「あなたはここで何を」

「いつもなら親父の友達がこの屋台やってんだけどさ、今年は訳あってできねぇんだって。だから代わりに俺がやることになったんだ」

このままだとつい長話になりそうなのでここら辺で切り上げておこう。

「そう。それ五本ちょうだい」

私は沢山並べられているチョコバナナを指差しながら言った。

「五本も?そんなに食うのか?」

「違う」

「じゃあなんでだ?」

「負けた。ジャンケンで」

そこまでで理由を把握した山本はすっと私の前に差し出す。

「そっか。じゃあ親友大大サービスでこれお前にやるよ。この五本は俺の奢りだ。なに、心配すんなって!!」

そして山本は昔から変わらない爽やかな笑顔を振りまいた。