二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN!】幻覚花弁。*angraecum*祝絵完成! ( No.151 )
日時: 2010/04/13 19:09
名前: むく。 ◆Y1ybAG.6mU (ID: EkFUTbCM)

◎ #22 打ち上げ花火


「あー!おいスパナ!!なんで郁アネキと手ぇ繋いでるんだよ」

私とスパナが金魚すくいの大きな屋台の前に着いたとき、野猿は指を指しながらぴょんぴょんと飛び跳ねる。

「あっ。ホントだ!」

「えー?どうしちゃったの郁チャン!スパナ!」

スパナの顔を見上げると、彼はいつもの無表情にほんの少し笑みを加えたような表情で三人を見つめていたが、

「郁が迷子になりそうで心配だった。ただそれだけの理由だ」

淡々と告げた。

「ずりーよスパナだけ!オイラだって…」

野猿はスパナの空いている方の手をグイグイ引っ張りながら言う。

「なんだ野猿。お前は郁が好きなのか?」

「そ、そんなんじゃねーけど!郁アネキと手を繋げるのって滅多にねーだろ!?だから、その…なんていうか
——」

と、横目でちらちらとこっちを見てくる野猿。

「別に私は」

四分音符二つ分程度の間を空け、

「どちらでも構わない」

「でもさ、郁だって両手塞がれてたら何もできないじゃん?」

と輪廻。そして私はスパナへ体を向ける。

「断言しておくけど、少なくとも私は迷子にはならない。だから」

「そうか。郁が言うならな」

スパナはあっさり手を離した。

私の汗か彼の汗かは定かではないが、私の右手は少しだけ汗ばんでいた。

——すると、

『会場の皆様。本日は第八十七回並盛神社夏祭りにお越し頂き、誠にありがとうございます』

プツっという音が聞こえたと同時に、大型スーパーでよく流れるようなアナウンスが辺りに響き渡る。

『ただいまより花火の打ち上げを行いますので、係の人は鳥居の前までお越し下さいませ』

どうやらこの祭りは花火大会も兼ねているらしい。

「えっ?マジで!?なんか凄いのドカーンってやるのかな」

ゆりなは藍色に輝く星空を見上げながら言った。

ふと、山本がいるだろうと思われる辺りの方に目を遣ると、彼は鳥居へと向かっている最中だった。