二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN!】幻覚花弁。—*angraecum*— ( No.26 )
- 日時: 2010/03/20 18:18
- 名前: むく。 ◆Y1ybAG.6mU (ID: W8wXq41i)
◎ #06 戻ってきた穏やかさ
さっきまでやたらと騒がしかった第二格納庫は、何事もなかったかのように穏やかさを取り戻していた。
地上に影響は及ばなかったと思う。
「………」
スパナは口の中の飴をポロッと地面に落とし、目を丸くして辺りを眺め感嘆している。
野猿は宝石のように目をキラキラと輝かせ、私は疲労気味の体をひんやりとした床に預けた。
「す…すっげぇ!!すげえよ、お前!!」
数分間の沈黙の後、始めに声をあげたのは野猿だ。
私は首をガクっと傾け、野猿の歓喜の声に浸る事にする。
「オイラ、あんなすげえ技見たの久しぶりだぜっ!!郁アネキっ」
聞き慣れない単語に耳を向けつつ、私が再生した機具の数々に触っては驚いている野猿に目を遣った。
「ウチもあんたの能力には感心した。良ければデータを取らせて欲しい」
今度は別の角度から話しかけてくるスパナに視線を注いだ。軽い目の運動になるかもしれない。
「構わない」
「あんたの新しい技の開発にも手を貸す。宜しく」
微笑んでいる少年の顔を見上げてから、手元に目を落とした。
手を伸ばすスパナに反射的に自分の右手が動く。
私は別の意味で手を借りて、よろめきながら立ち上がった。
「こちらこそ」
そう呟くと同時に、ふと横を見ると野猿がはしゃぎ回りながら私たちの方へと走ってきた。
「アネキっ!!今度はオイラと勝負してくれねえ??」
「…今は少し疲労気味。また今度ね」
野猿は口を尖らせる。
「ちぇー。じゃあ暇な時は言ってくれよ!」
「分かった」
「ショアっ!!」
野猿は両手をひろげながら子供のウサギのように跳ねている。
「少し休ませて。治療室を借りるとチェルべッロに伝えておいてね」
私はスパナに伝言を頼み、開けたままだった扉から出て治療室へと向かった。
野猿の「じゃーなー!!郁アネキーっ」という声がいつまでも耳に残っていた。