二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN!】幻覚花弁。—*angraecum*— ( No.274 )
- 日時: 2010/07/07 18:11
- 名前: むく。 ◆Y1ybAG.6mU (ID: otheHgZZ)
- 参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_test/view.html?347496
◎ #28 —お祭り騒ぎ!—
——暫く沈黙が続いた。
何か言おうとしては口を閉ざして顔を赤らめ、そしてまた何かを言おうと…と、さっきから同じ事を繰り返す山本。
「今、何を言った?」
私は一歩山本に近づく。
「え、あ…まあ、なんだ…?その…さ」
ごくり、と彼の唾を飲み込む音が聞こえ、
「中津が…俺…ぇ」
疑問符を頭に浮かべながら表情を窺うが、俯いたその顔は影に隠れている。
「なんでもねえよっ!気にすんな。皆も心配してるだろうし、戻ろうぜ」
「……分かった」
不審な山本に疑念を覚えるが、一切忘れよう。
「あっ、来た来た!山本君、郁チャン、射的やろうよ射的」
再び人々がごった返す屋台の通りに出た私たちは、ゆりなに誘われて射的をする事になった。見れば、彼女の片手にはクマのぬいぐるみが抱かれている。もう景品を手に入れたらしい。
「オッケーなのな!」
「構わない」
「ほい、じゃあこっちこっち!おじちゃん、この二人も」
「はいよっ!一回五十円ね」
ゆりなが手招きをして連れて行かれた先には、まあ、ベタといえばベタな気もするが、店主らしき人が坊主頭に鉢巻…よく見る50代スタイルにハッピという容姿で立っていた。
「うーし、やるか」
早くも山本はコルク銃に弾を詰めると、几帳面に並べられている商品をしげしげと見つめる。
「お、お兄ちゃん格好いいね」
「あははっ!おだてちゃいかんよおじちゃん!!」
いつの間にか屋台側に回って山本を応援するゆりなの声の数秒後。カチャッと、コルク銃の引き金を引く音がした。
「は、凄いな…」
「うわあ、二つ取りじゃないの♪」
言葉通り、山本は見事にぬいぐるみと駄菓子が入っている袋を弾いていた。
「少し狙いを外しちまったが…まあいいか。中津、やってみろよ」
口をぱくぱくさせている店主を横目に、山本は笑顔で私に番を振る。期待はしないでほしい。
予想通り、と言うべきだろう。
一回で五発分の弾を貰ったのだが、全て商品からは離れた隅の方の棚や、屋台の外——そのうちの二発は店主とゆりなの額に的中した。
「これはある意味凄いね…」
フォローになっているのか分からないが、ゆりなの顔は明らかに引き攣っていた。
「そういう時だってあるさ!ほら、俺の一個やるから」
と、山本から差し出された手に乗っていたのはりんごの目覚まし時計。寝坊する事はないと思うが一応貰っておく。
「………そう」
「あっ、そ、そうだ。輪廻チャンと野猿がヨーヨー釣りのとこにいると思うから行こうか!ありがと、おじちゃん」
「おう。また来てな」
などと明るく振る舞っているが、正直ゆりなの足取りは重かった。