二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN!】幻覚花弁。—*angraecum*— ( No.28 )
- 日時: 2010/03/21 10:46
- 名前: むく。 ◆Y1ybAG.6mU (ID: LN5K1jog)
◎ #07 Regains it!
私が治療室の扉を開けた時には既に先客者がいたようで、その人は声を聞かなければ誰だか分からない程包帯を体中に巻かれていた。
幸い包帯の隙間から覗いている赤紫色の髪の毛でその人物がグロ・キシニアという事は少なくとも私には分かる。
「顎の骨を折っている…重傷」
彼はボンゴレ霧の守護者…クローム髑髏とその仲間に敗北したからこんな姿でいるのだろう。
グロは眉を寄せる。怒りの前兆だね。
「完治するには結構な日数が掛かると推測される」
私は出来るだけ彼と間隔を取って座り、声を出さずに沈黙を保ち続けた。
———数時間後。
静かな所でこんなにもじっとしていれば疲れが取れるのは当たり前で、そのおかげか私の体はすっかり調子が良くなっていた。
グロは何も事情を知らない人がここへ入ってきたらミイラ男と間違われるくらい微動だにせず、目だけで私を追っている。
この部屋に聞こえるものといったら、廊下でうるさくしている隊員の声くらいだ。
私はグロに一瞥を投じ、治療室を出た。
と、すぐ目の前に立っていたのはスパナだった。まるで私がこの部屋から出てくるのを待ち構えていたかのような感じだな…
「あ、郁」
「……」
私はスパナを見上げて表情を伺う。彼は柔らかな微笑を溢していた。
「あんた…一体何があった?」
微笑はやがていつもの無表情に戻る。
「………」
「あんたからは喜怒哀楽が感じ取れない」
スパナは繰り返し、
「何があった?」
「……らん」
私は周りの隊員に聞こえないように声を潜める。
「…びゃく、らん」
「白蘭の仕業なのか?」
スパナの問いに浅くコクリと頷いた。
「…白蘭に奪われた」
私は俯いていた顔をゆっくり上げて口パクに近い程の微かな声で言う。
「——感情と…未来を」
…自分の過去を人に明かしたのはこれが初めてだ。そこら辺にいる口の軽い奴に言うよりスパナの方が断然いいと思う。
「…分かった」
スパナは私の肩に手を置き、深刻そうに言った。
「ウチがなんとかする」
「あんたの感情と未来…取り戻してやる」