二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.122 )
- 日時: 2010/08/20 13:49
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
試合の開始ホイッスルが鳴り、雷門は鬼道から染岡へのパスでキックオフ。
外側では白恋の生徒たちが(主に女子)、吹雪く〜んと黄色い歓声を上げていた。男子たちは、白恋! とそれなりの声を張り上げているが、女子の甲高い声にほとんどかき消されていた。
暇な、と言うか器用な生徒は手製の応援タオルを持参している。持っているのはやはり女子軍団で、白い地に赤い刺繍で、『L・O・V・E』『ふ・ぶ・き』と書かれた二つのタオルを横つなぎにして、激しく振っている。その横ではどっから持ってきたのか、避難訓練に使われる拡声器を持った女子生徒が、白恋! 吹雪! と誰よりも大声で叫んでいた。うるさいのか、辺りの生徒は両手で耳をふさいでいる。
そんな激しい吹雪コールに、染岡はいら立ちの表情を見せる。元々強面の彼だが、怖さがいっそう増す。目はさらにつりあがり、視線もとげとげしい。
白恋のサッカー部のメンバーは、猛獣を前にしたように後ずさる。
「どけぇっ」
染岡が強引に単独ドリブルで上がって行くと、もちろん白恋のMF陣は、彼に近づく。が、彼の鋭い視線にたじろぎ、
「こ、怖いっぺェ!」
悲痛な叫び声を上げながら、狼狽(ろうばい)。あるいは、勇気を持って飛びこんでいっても、染岡の力強い体当たりに吹き飛ばされてしまう。MFが壊滅し、後はDFだけ……というところで吹雪が動く。
だいぶ距離はあったはずなのに、風の様な速さで染岡の横までやってくると、染岡と吹雪は並んで走りだした。
「染岡くんって、北海道の肉食動物みたいだね」
「うるせえ!」
満面の笑顔で、吹雪が染岡に挑発気に話しかけて来た。
肉食動物のようだ、と言われ染岡は憤怒する。吹雪にタックルをしかけるが、きれいに身体を動かしてかわされた。
それからあの気持ち悪いほど得意げな笑みを、顔にまた浮かべる。
「でも肉食動物って、獲物を捕らえることに必死で、周りを見ていないことが多いんだ。だからね——」
突如吹雪が消えた。いや、素早く染岡の進行をふさぐように動いたのだ。
染岡は強行突破をしようと吹雪に突っ込んでいく。 対する吹雪は、慌てず地面をすうっと氷の上を滑った。いつのまにかフィールドに氷が張っている。軽く滑ると、両腕を胸の前でクロスさせる。
「<アイスグランド>!」
吹雪はその体勢で飛びあがる。まるでスケート選手の様な美しい三回転ジャンプ。そして着地すると、氷のフィールドがもこもこと、モグラの通り道のように盛り上がり、染岡の方へと進む。染岡がその盛り上がりに触れた途端、彼は六角形の氷柱の中に閉じ込められていた。サッカーボールが零れ落ち、吹雪が滑りながら、軽くのけぞってボールを胸で受け取る。寒い冷気が、彼の周りに吹いた。
それから吹雪は満足そうに笑い、ボールを地面におろして足で抑える。
「こんな風に、猟師さんの罠にすぐに捕まっちゃう。でもそういう強引なプレー、嫌いじゃないよ」
びびっているMF陣にパスを出した。
だがそれを上がってきていたアイリスが、きれいにカットする。吹雪がまたにっこりと笑いかけ、アイリスも口元だけ笑って見せる。
染岡にたじろぐ白恋メンバーから、ボールを奪うのは簡単だったのかもしれない。
「どう? これが吹雪のスピード」
アイリスはボールを保ちつづけながら、氷から解放された染岡の横に並ぶ。アイリスのスピードは吹雪に負けず劣らず早く、染岡は若干遅れて走る。
「あいつ、DF能力が優れているのか。噂とは全然違うじゃねえか」
息を切らせながら、染岡は悔しそうに呟いた。
ゴール前までやってきたアイリスは、吹雪に回り込まれる。そして染岡に右に動くよう目配せし、染岡にパスを出した。染岡はしっかり、片足で受け取る。
「FWとしての力は……また別の話よ」
「いけ! 染岡!」
ゴールから円堂が大声で叫んだ。
任せろ! と染岡は手を上げてこたえると、右足を引いた。
「おう。<ドラゴンクラッシュ>!」
右足を引くと同時に、背後に青い色の龍が現れた。染岡をしめつけように回り込むが、染岡がボールを撃つと同時に、口を開けて獰猛(どうもう)に牙を見せつけながら、ボールと一緒に進んでいった。
その恐ろしい龍の姿に、白恋の緑の帽子をかぶったGKは反射的にボールをよけた。とろうともしなかった。
「ひえええええええええっ」
彼の絶叫をBGMに、ホイッスルが鳴った。
女子の吹雪を応援する声に拍車がかかる。
「雷門の先制? これはいい戦いになりそうだね」
吹雪は白いマフラーを掴むと、白恋メンバーに笑いかけた。
〜つづく〜