二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.139 )
- 日時: 2010/08/28 15:46
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
翌朝。今日も穏やかに波がさざめく音が聞こえる。朝日が窓から差し込む中、蓮はベッドの上で、腹に薄い掛け布団をかけ、丸くなるように上下ジャージ姿で寝ていた。時折、口から静かな息が漏れる。その姿は、眠りに落ちる猫などの小動物を連想させる。日光が顔に当たっても起きないのは、涼野とのパス練習ですっかり疲労がたまっていたのと、塔子に振り回された精神的疲労から来るものであった。
「大変だ! 白鳥!」
そこへやはりジャージ姿の塔子が、乱暴に扉を開けて部屋に飛び込んできた。その手には女の子らしい明るいピンクの携帯が握られている。蓮はびくっとわずかに身体を震わせただけで、再び夢の世界に戻る。
蓮の様子を見ていた塔子は苛立ちの表情を見せると、うつした行動は大変ストレートなものだった。ベッドのわきまでずかずかと大股で歩くと、携帯をベッドの上にある棚の上に置いた。そしてベッドの左はしに両膝で乗っかると、丸くなる蓮の肩を鷲掴み(わしづかみ)にした。
「お・き・ろ! お・き・ろ!」
腹の底から大声で叫びながら、塔子は命令系をひたすら連呼する。掴んだ蓮の肩を関節脱臼を目論む(もくろむ)がごとく激しく揺らす。しばらくすると、蓮がかすかに眉をひそめて唸リ声を上げた。重そうに瞼を開き、目を半開きにして上半身だけを起こした。
「……なに塔子さん? 空から隕石が来た?」
完全に寝ぼけているらしく、意味不明な問いかけが来た。
塔子は盛大にため息をつき、棚の上の携帯をとった。そしてメールを呼び出し、蓮の半開きの瞼ぎりぎりに押しつけるように近づけた。
「そんなことあったら、あたしたちは死んでるよ! 白鳥も自分の携帯を見てみろ」
「携帯? なんことさ」
欠伸を噛み殺しながら、ベッドから蓮は全身を起こした。ベッド下に置かれた自分の鞄から携帯を取り出すと、ベッド上にあぐらをかいて携帯をいじる。起動するなり、『新着メール1通』の文字が画面に表示。誰からだろう、と思いつつメールを開くと、差出人は円堂からであった。ボタンをクリックし、メールの本文を見たところで、
「え」
蓮の眠気は一気に吹き飛んだ。目が驚きで完全に見らかれる。
メールに、北海道で吹雪がすごいストライカーであることを確認した、と言うこととジェミニストームが雷門に勝負を挑んできたことが記されていたからだ。蓮は確かめるように視線を何度も上下させ、やがて塔子に向き直る。
「エイリア学園がこの北海道に攻めてくるだって!?」
円堂からのメールを塔子に見せると、塔子は自分の携帯を蓮に手渡した。そこにはSPフィクサーズからのメール画面が映し出されており、北海道にエイリア学園が向かったと言う全く同じ内容が書かれていた。ただしこっちは、可愛らしい絵文字付きであるが。あちこちにハートマークとか顔文字とか。女子高生のメールの様だ。
「スミスたちからも連絡があった。エイリア学園が、この北海道に来ているらしいんだ」
「なんで僕たちの居場所が分かるんだろう」
あくまで蓮は気になることを呟いただけだった。
しかし塔子の面持ちが険しくなり、蓮は少しばかり不思議そうな顔をする。
「ん? 塔子さん、どうかした」
塔子は腕組みをしながら、真剣な表情で答える。
「言われてみると、話が出来すぎていないか? あたしたちが北海道に向かっていることをエイリア学園は何故か知っていて、勝負を挑んできた。なんで知っているんだろ」
「確かに。偶然にしては、出来すぎているよな。どっかで情報が漏れたのかもしれないな」
その時、ふっと頭に涼野が浮かんだ。
エイリア学園がいた場所は奈良、そして北海道。どちらの近くにも涼野はいた。昨日会ったときは嬉しさのあまり大して気にも留めなかったが、深夜遅くに子供が一人でふらつくなどまずあり得ないことだ。親はどうした、所属するサッカークラブってまさかエイリア学園?
一度生まれた疑問は、やがて涼野を疑う疑念へと変わる。白恋にストライカーを探しに行くんだ、と昨晩彼に話した。そのせいで雷門の居場所がばれたのだろうか……?
「……風介。そういえば、エイリア学園がいる傍には、いつも風介が——」
自分の内面世界にのめり込んでいる蓮は、塔子の話を全く聞いていなかった。
漏れたってあたしたちが倒してやるよ! と言う返事のあたりからずっとだ。それでも塔子は蓮の返事も聞かず、独壇場のようにべらべらと話し続ける。
「だから早く宿を出て、みんなと合流するぞ……と言いたいけど」
ようやく現実世界に戻ってきた蓮が、とりあえず話を合わせようと塔子に聞き返す。
「言いたいけど?」
「少し時間を調整するぞ。東京から白恋中学校まで、飛行機で行くなら半日はかかるんだ。だから昼過ぎくらいにつくように調整するよ」
蓮は苦笑しながら、
「……塔子さん、ずるがしこいね」
「二人での観光旅行代、白鳥に請求するか?」
「ご勘弁」
「だろ?」
得意げに塔子にふふんと笑われ、蓮はしてやられたりと言う気分になっていた。ベッドに思わず額をぶつけ、敗北感を紛らわせる。
〜つづく〜