二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.15 )
日時: 2010/09/15 18:39
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: 今更読むと蓮とアフロディはいいコンビだと思う

「よし、プレー再開だ」

 フィーは呟くと同時に、フェーン……フィールドの中央にサッカーボールを投げた。ヘディングで受け取り、地面に下ろすと同時に、フェーンは一気に雷門側のゴールへと走り出す。まだ、動ける雷門のユニフォームを着た選手が行動を起こすのもほぼ同じだった。

「<疾風ダッシュ>!」

 緑色の髪を赤いヘアゴムでポニーテールにしている少年が、フェーンに向かってかなりの速さで近づいた。右に左にちょこまかと動くのだが、あまりにも速いため、分身して二人で走っているような錯覚を起こさせる。風も起こり、地面から砂埃が立つ。
 今のは<技>。色々あり、ドリブルやシュートキャッチの3つがある。これをぶつけあって戦うのが、この世界のサッカーなのだ。

「ゴールへは……円堂のところへは! 行かせるか!」
「よ〜いしょっと」

 ポニーテールの少年がスライディングをしかけると、フェーンは気の抜けたような声と共にボールを空中に蹴りあげ、自身も一緒に跳び上がった。

「なに!?」
「フィー! 軽くうつであります!」

 戸惑う少年の頭上で、フェーンはちょうど自分の足の高さにまで落下してきたボールを、フィーへと蹴った。そのフィーは、既にゴール前へと移動している。あっけなく胸をそらして、上手いことキャッチする。そして、ボールを地面に下ろし、上から足で押さえつけた。

「これで10点目」

 フィーが片足を引いた——その時。

「させない! <アイス・スパイクル>!」

 蓮は回転しながら、四方八方にジャンプする。彼が地に足をつけた途端、地面は何故か凍りつき、黒いローブの人間たちが何人も氷の彫刻にされていた。もちろんフィーもカチンコチンにされ、ボールは蓮の手に渡っていた。

「よし!」
「…………」

 氷漬けにされた人々の間を、蓮は縫うようにドリブルしていく。凍っていないローブの人間たちは、何故か動かない。ただ、蓮の行動をじっと見やっているだけである。

「面白いね」

 氷漬けの時間は、さほど長くない。背後で、氷が砕ける音がし、黒いローブの人間が、次々とフィールドに立つ。

(行けるか……?)

 ゴール前には、DF(ディフェンス)*サッカーで、防御をする位置のこと。相手からボールを奪ったり、キーパー(後述)の元へ行かせないようにするのが役目)らしき人間が二人もいる。一人ならまだしも、このまま単独でつっこめば、ボールを奪われてしまう。
 なすすべなしか、と蓮が諦めかけた時だった。パチン、と言う指を鳴らす音が、フィールドを震わせる。その瞬間、波が引くように前にいたDFの二人がフィールドの左と右に、それぞれ分かれた。そのまま棒立ちになっているだけで、襲ってくる感じはしない。

「ペコポン人、うつであります」

 挑戦的な口調に振り向くと、フェーンがいた。さっきまでフィールドのほぼ中央にいたはずなのに、ゴール前にあがってきたらしい。

「な……お前、いつのまに!?」
「こんなの実力の1%にも満たないぜ」

 驚きの声を発する蓮を尻目に、フェーンは蓮とは逆方向に走り去って行った。強気な発言を残して。その発言に、蓮は目の前にあるゴールを睨みつけた。
 そこにいるGK(ゴールキーパー(サッカーでゴールを守る位置。ゴールにボールが入ると、点が入ってしまう)は、だらーと力なく両手の力を抜いている。蓮を見くびっているらしい。

「ずいぶんと余裕……な……ん……だ……な」

 GKが二人に見える。呼吸のテンポが速くなる。目の前に見える世界が左に、右に揺れる。靄(もや)がかかったように、視界が薄い白に染められていく。

「くッ」

 蓮は悔しそうに舌打ちをすると、ボールを頭上に蹴りあげた。それと同時に蓮の背に1対の白い羽が生える。白鳥のような白く、穢れを知らない羽であった。
 羽を纏った(まとった)少年は、ボールの元へと舞った。ボールは重力がなくなったように、蓮の前で固定された。そして、ゆっくりとボールは白い電気を帯び始めていく。バチバチと火花を飛ばしながら、電気はボールをすっぽりと包み込んだ。心なしか、ボールを鳥かごに入れたように見える。もちろん、電気の籠の方が大きいので、ボールは中央で浮いている。

「<シュート・ウイングスブースト>!」

 最後の力を絞り切り、蓮はボールに踵(かかと)を思い切りぶつけた。衝撃からか、蓮の背の羽が何枚か宙に舞った。
 舞った羽もボールと同じく帯電を始め、電気が作った球体の中に閉じ込められる。それらが、ボールを追い越し、ゴールへと向かった。

「え? え?」

 GKの横に落ちた羽は、地面に着くと同時に爆発し砂塵(さじん)を起こした。ゴールが見えなくなるほどの砂煙が辺り一面を覆う。その煙の中に、白い電気を身にまとったボールが飛び込んで行った。

「…………!」

 砂煙がやむと同時に、サッカーボールがネットから転がり出て来た。ゴールを告げる笛の音が、静寂した空間を切り裂く。

「ゴール! なんだ! 今のシュートは!」
「へへ……当然だぜ」

 蓮は力なく微笑むと、がっくりと頭を垂れた。背中にあった羽は溶けるように姿を消していき、身体が地面に引っ張られる。顔に当たる風が、やけに冷たく感じた。視界はもう黒しかない。自分を飲み込むとしている。空気を切りながら、蓮の意識は薄れて行った。

 
 
〜つづく〜
風梨(様)の助言により、シュート技披露です^^
あ、後円堂くんたち黙っててすいません;;