二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.171 )
日時: 2010/09/28 16:49
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: XHLJtWbQ)

 氷塊が回転しながら、ゴルレオに向かう。
 冷気が激しく波打ち、場の空気を一段と冷え込ませる。時折氷の破片が、花弁のように風にあおられる。暗雲の元で、キラキラと煌く。
 初めて見る<エターナルブリザード>は、<ファイアトルネード>を負けないほどの迫力がある。この子ならきっと雷門イレブンを支えてくれる——そんな思いが、心の底から湧き上がってきた。
 心なしかゴルレオの顔は青ざめ、膝がガタガタと震えているような気がする。だが気合を入れるように片手にこぶしを作り、掌(てのひら)にたたきつける。
 <技>は使わず、無謀にも片手でボールを押さえつけてきた。前回と違い、その顔から余裕は消えている。回転を続ける氷塊は、ますます勢いを増す。
 ゴルレオは、ぐっと踏ん張って見せるが、じりじりとボールに抑えられていた。
 やがてゴルレオは力負けしたらしく、ボールごとネットに体を叩きつけられた。ネットから零れ落ちたボールが、虚しくコロコロと転がり、やがて静止した。同時に甲高い音が一回鳴り響き、続いて長く響く音がフィールドを振るわせる。

「勝ったぞッ!」

 円堂が腹の底から大きな歓声を上げた。やがて水の波紋が広がるように、雷門イレブンは、次々と喜びの声をあげる。
 その時吹雪の髪が垂れ下がり、大人しめないつもの吹雪に戻っていたが、誰も気づかなかった。
 蓮もふらつく身体ながらも、懸命に拳を宙に突き上げ、横にいた風丸や円堂と肩を組む。だがふっと気が抜けてしまった。やっという安堵感に身体が支配され、必死に保っていたものが崩れる。蓮は軽く微笑むと、そのまま意識は深淵へと引きずり込まれた。長い間無理をして戦っていたが、もう限界。身体はだるさに覆いつくされ、眠気が再度込み上げてくる。今度ばかりは身体の衝動に身を委ねるしかない。 蓮は眠るように目を閉じ、身体が再び前に投げ出され——かけて、風丸と円堂がが慌てて蓮の身体を前から支える。二人で蓮の肩をそれぞれの肩に手を回す。

「白鳥にずいぶん無理させちまったな」

 風丸が、蓮を優しい眼差しで見つめながら言う。
 意識を失った蓮の寝顔は非常に穏やかで、満足そうな表情をしていた。

「ああ。白鳥のやつもとても頑張ってくれたよな」

 円堂は眠っている蓮に軽く微笑みかけ、労う(ねぎらう)ように頭を撫でる。風丸もまた穏やかな笑みを浮かべ、蓮の頭にそっと触れる。

 穏やかな空気が流れる雷門と違い、敗北したジェミニストームは慄然と雷門イレブンを見つめていた。顔から血の気は失せ、呆然と立ち尽くしている。足が小刻みに震える。
 誰かが弱弱しい声でレーゼ様、と呟く。とたんすがるような視線をジェミニストームがいっせいにレーゼへと向けた。レーゼはたじろいだ仕草をし、逃げるように一歩後進した。

「——どこへ逃げる気だ? レーゼ?」



「うっ……」
「白鳥?」

 しばらく穏やかに眠っていた蓮が突如呻いた。浅い呼吸を繰り返し、顔中に冷や汗が張り付いている。
 蓮の急変に気づいた風丸が円堂と共に、蓮の身体を激しく揺さぶる。すると蓮はうっすらと目を開けた。

「白鳥?」

 円堂が心配そうに蓮の顔を覗き込む。蓮は、魂を抜かれたように揺さぶっても反応しない。痛みを必死に堪えているのか、顔が時折苦痛によってゆがめられる。
 瞳子を呼ぼうと円堂と風丸が顔を上げると、フィールドからジェミニストームの姿がなくなっていた。まるで初めから存在しなかったかのように、気配すら残っていない。冷たい一陣の風がフィールドを吹きぬけた。風が声を運んでくる。

『ふん。ずいぶんと愚かな連中だな』

 とても低い中年のおじさんを思わせる渋い声。円堂はあたりを注意深く見渡すが、誰もいない。白い雪が積もるだけ。
 その声を聞いたとたん、蓮は苦しげに身をよじる。

「誰だ!」

 警戒心をあらわにしながら、円堂が声の主に吠える。声はふんっと鼻で笑う。

『私か? 私の名は『デザーム』。エイリア学園ファーストランクチーム『イプシロン』のキャプテンだ』
「イプシロンだって?」

 新しいチーム名が聞こえ、雷門イレブンに緊張と不安が走る。皆、強張った面持ちでせわしく辺りを見渡すが、声の主は見つからない。

『そう不安げな顔をするな』

 まるで見ているかのような発言に、雷門イレブンは雷に打たれたように呆然とする。

『だが我々に挑む気があるのならば、京都へと足を運ぶがよい。そこでわれらは貴様ら雷門イレブンをまとうではないか。ははははっ!』

 再び北風が吹きつけ、高笑いを持ち去っていく。風がやむころには、空気はしんと静まり返っていた。声はするはずもなく、何もかも風が持ち去ってしまったようであった。

〜三章完〜
よよよよよよようやく三章終わりました!
でも次章予告はまた明日だったり^^;