二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.183 )
日時: 2010/10/09 16:46
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: また長い!

(染岡くん……)

 蓮を覗き込む染岡の瞳には、怒気とも憐憫(れんびん)の情ともとれる奇妙な色を宿していた。
 その瞳と目が合うと、蓮はうっと小さく呻いた(うめいた)。殴られた左頬と地面に強打した右腕が針の先でつつかれたようにしくしくと痛み始めた。だが同時に、心もまた痛み始めた。自分はとんでもないことをしたと言う黒い思いが胸の底から湧き出る。わかってはいたが、感情が欲するままに叫び引き起こしてしまったこと。不思議と後悔の念はなかった。
 イライラした時にやけ食いをしたり、人に愚痴ったりするとすっきりするのと根本的に同じだ、と蓮は考えていた。ただ、今回はぶつけられる相手が……サッカーで例えるならGKが着用するグローブなしの選手に、強いシュートを打ちこむようなものだろう。普通そんなことをしたら、相手にもよるが怪我は免れない。きっと思いをぶつけた雷門メンバーは、ねんざの代わりに『嫌悪』と言うものを持つだろう。散々強いシュートを放っておいて、謝りもしないのだから。
 そんなことをうっすらと思案していると、やはり染岡の相貌(そうぼう)が厳しくなった。染岡の瞳にあったのは、怒りの色。嘲笑、侮蔑(ぶべつ)。頭に嫌な単語が駆け抜けて行く。ゆっくりと染岡の口が開いていく。どんな風に嘲笑われるかな、と蓮は自虐的に心の中で笑っていた。——しかし。

「……なんで」

 とても低い声。でもその声はとても震えていた。染岡は蓮から視線をそらし、拳を震わせている。だがすぐに蓮へ視線を戻すと、

「なんでオレたちに相談しなかったんだ!」

 腹の底から出す大きな怒声を、蓮に浴びせかける。あまりのでかさに風圧が生まれ、蓮の前髪が浮いた。
 予想とは違う言葉に蓮は一瞬戸惑うが、疼く(うずく)右腕を擦りながら起き上がった。見るとぶつけた部分には大きな赤紫の痣が現れ、周りには小さな切り傷がかなりあった。周りには小石や砂利が付着している。
 蓮は、不安げな面持ちで染岡を黙って見つめた。次の言葉を待つ。
 苛立ちの表情で染岡は蓮を見つめ返していた。腕組みをし、片方のスパイクの先で地面を叩いている。ややあって、染岡は足の先で地面を叩くのを止めた。

「白鳥。お前大事なことを忘れてるだろ」

 急に飛んできた言葉に蓮はわけがわからず困惑する。
 忘れていることと言っても、思いつくのは幼い頃の記憶がないことのみ。だが、それは今更すぎる。
 蓮は、遠慮がちに染岡に聞き返す。

「えっとな、何を?」

 すると染岡は、呆れたようにため息をついた。

「やっぱりわかってねぇんだな。いいかお前は、今ここで何をするために北海道に立っているんだ?」
「サッカーやるため。仲間を集めて……エイリア学園を倒すためだ」

 蓮の語気はだんだん尻すぼみになった。最後の方は、もはや囁きに近い。答えを聞いた染岡は頷き、さらに問いを重ねてくる。

「そうだな。そのサッカーをやる仲間はどこにいる?」

 何が言いたいのかと思いつつ、蓮は当然のように、

「”ここ”。この白恋中のグラウンド」

 答えた。すると染岡の顔が明るくなる。

「そう、それがお前が忘れているもんだ」

 ますます染岡の意図(いと)を見抜けず、蓮はとうとう頭を抱えて悶え始めた(もだえはじめた)。すると染岡がまあよく聞け、と前置きをした。

「はっきり言うぜ。白鳥は、自分の内に閉じこもっていて、”ここ”——つまり周りが見えなくなってんだよ。お前のこと誰も荷物なんて、思っちゃいねえ。一人で考えることも大事だけどな……お前のアレルギーの問題は、一人じゃ解決できないだろ? ま、円堂に代わるぜ。こーいうのは円堂が得意だからな」

〜つづく〜