二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.185 )
- 日時: 2010/10/20 13:25
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
蓮は感慨深げにポツリと呟いた。
その時柔らかい視線をあちこちから感じた。周りを見渡すと、自分と円堂を中心にキャラバンに乗る仲間がぐるりと円状に立っていた。いつからいたのだろう。みんながみんな全員笑っていた。微笑んでいた。顔全体で笑っていれば、口元だけの子もいる。例えるなら子供が帰ってきた時の母のような。休み時間に、ふざけた友達が見せるような。表現はいくらでも思いつく、どこまでも純粋で優しい、暖かい笑み。見ていて幸せになる笑み。
わがままを言った自分にどうしてこんな笑みを、みんは見せてくれるのだろう。こんな笑みを見せてくれる人は、自分を荷物だと思っていない——僅かな希望が確信に変わった時、蓮は全身が熱くなった。
「オレに鬼道」
円堂は言いながら、歩き始める。円状に立つ仲間の前を時計回りに、ゆっくりと通って行く。仲間の前を通る時、その人物を手で示し、呼びながら。蓮の目線も、自然と円堂の動きを追っていた。黒い瞳にたくさんの人が映り込んでいく。
「風丸、吹雪、染岡、塔子、壁山、栗松、一之瀬、土門、目金、夏未、秋、春奈」
仲間の名が呼ばれるたび、蓮の心は震えた。同時にその人物との思い出が脳裏に浮かぶ。
円堂くんにはいつも励ましてもらってばっかり。鬼道くんは、とても戦術が上手い。自分の能力を見極め、色々と指導してくれたっけ。風丸くんは身体を支えてくれた。吹雪君はスキーを教えてくれた。染岡くんは一生懸命スキーをやり、<ワイバーンクラッシュ>と言う技を身に付けた。ジェミニストームとの試合の前半、つまりは自分が気絶していた時に決めたと聞いた。見てみたかった。塔子とは北海道旅行をした。みんなには言えないけど、楽しかった。壁山くんと栗松くんにはいつも笑わせてもらっている。一之瀬くんと土門くんは、アメリカの話をしたっけ。英語をしゃべって見せたら驚いていた。目金とは語った。いや、彼の知識はすごい。常人の域を超えている。秋に夏未に春奈。おにぎり、とてもおいしかった。
本当にどうでもいい……道端の石のようにありふれた、変哲もない思い出だらけ。けれども。それら全てで自分の周りに雷門のみんながいることを思い出す。みんながいる——そう小さく言葉を漏らした時、再び鬼道の前に来た円堂が、蓮の正面に戻ってくる。
「それに今はいないけど豪炎寺だって——ここにいる雷門サッカー部は、みーんな白鳥の味方だ!」
そこまで言いきり、円堂が思い出したように、
「それにオレ、旅立つ前に白鳥に言ったよな? お前が十分プレイできるようになるまで、チーム全員で支えるって」
蓮は、改めて円状になっている仲間を全員見渡してみた。みんな蓮と目が合うと手を振ったり、笑いかけてくれたりする。誰も視線をそらしたり、睨んだりしなかった。ちゃんと蓮を見据え、ちゃんと笑みを見せてくれる。それが妙に嬉しくて。気付くとまた眦(まなじり)から涙が溢れていた。頬を伝って、グラウンドを濡らす。滂沱だが、今回は息苦しさが全くない。蛇口をひねると水が流れるように、無駄にだらだらと流れるのだ。蓮は男が簡単に泣くなど情けなくて、両手で顔を覆い俯いた。口だけは覆わなかった。
「……わがまま言ってごめんなさい」
蓮は大きく、はっきりと涙声で謝罪した。そして顔を上げる。黒い瞳は少し充血し赤っぽい。涙の跡がまた増えている。けれどその表情に葛藤の類は見られず、変わりに強い意志が宿っていた。
円状に並ぶ仲間たちを再度順々に見やり、最後に円堂と一対一で向き合う。
「どうか」
蓮は息を吸い、一気に言葉を述べる。
「迷惑じゃなきゃ。どうか、これからもこの白鳥 蓮の面倒を見てやってください」
一度だけ頭を下げ、再び蓮は顔を上げる。笑っていた。細められた瞼に残る涙が、キラキラと輝く。周りも花が咲いたように、一段と明るくなった。心から笑った、蓮の偽りのない笑顔。赤ん坊が見せる笑顔によく似ていた。
その時、風が吹いた。空のねずみ色の雲を、円堂たちから見て東側に押し流していく。雲の切れ目から光が差し込むみ、グラウンドが、ところどころスポットライトで当てられたように明るくなる。やがて雲は完全になくなり、北海道の太陽が顔を出した。辺りが急に明るくなり、グラウンドのラインを、周りにある木々を徐々に浮かべあがらせていく。眩しくて、雷門イレブンは目を細めた。
ただ円堂と蓮は、光の中で見つめ合ったままだった。互いの髪が風を孕んで(はらんで)、静かに揺れている。蓮の目からたくさんの煌きが零れ、風が持ち去って行く。小さな煌きは、集まって光のカーテンを形作る。
カーテンは風に揺らされ、流れるように左から右へと光の粒となって消えていく。蛇行しながらどこへ消えていく。地上に天の川が生まれたようだった。
「堅苦しくなるなよ、白鳥。もちろんだ。なっ?」
「うん。これからもよろしく」
蓮はもう一度だけ、太陽にも負けない笑顔を見せた。その時、不意に涼野が宗谷岬でかけてくれた言葉が耳の奥底にはっきりと蘇る。
『キミならできるはずだ』
(そうだな、風介)
蓮は上を見上げる。どこまでも澄み渡る青い空に、力強く太陽が頭上にある。よく晴れていた。
(もっと頑張ってみるよ、風介)
太陽はどこからでも見えるから、きっと届くだろうと信じて。蓮は太陽に心の中で語りかけた。
〜つづく〜
なんかきずいたら6000字オーバーになってました^^;そして何だこのシーン!?
涙がキラキラ流れるってとこ、何となく好きです。雲の隙間から光が差すシーンは、アニメ「獣の奏者エリン」から。アルが誕生する回のあたりです(知らない人はすいません;;)。綺麗だったので〜^^
恐ろしや恐ろしや。今回のこれ書いといてあれですが、かなり意味不明!意味身長(あ、漢字違うや)。円堂君たち雷門イレブンと蓮の絆を、感じていただければ幸いです。もともと友情アニメですしね^^