二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜短編リク募集中♪ ( No.196 )
日時: 2010/10/29 15:10
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 昼過ぎに白恋中学を出たせいか、北海道を出る前に日が沈んでしまった。ちょうど、その頃イナズマキャラバンは山中を走っていたので、適当な場所で一晩を明かすこととなった。ちょうどよく、木がない広場の様な場所が見つかり、イナズマキャラバンはそこに止まっていた。
 その晩。やはり眠れない蓮は、一人キャラバンの屋場に乗り、物思いにふけっていた。ジャージをしっかり着て、体育座りになり、天を見上げていた。
 ふーっと息を吐くと、すぐさま白くなり、やがて空気の中に溶けていった。まだ北海道にいるせいか、空気は澄んでいて肌寒い。蓮はぶるっと身を震わせた。
 キャラバンの屋場には荷物を乗せるために、鉄製の柵で囲まれた小さなスペースがある。大人二人が楽々座れる程の広さはあり、キャラバンの後ろにかかっている鉄製の段から登ることが出来る。よくここに円堂や他のメンバーが座りに来るのだと言う。
 円堂に乗ってみろよ! 気持ちいいぞ! と前々から勧められてはいたが、機会がなく、蓮は今日こうして初めて乗ったのであった。上に乗っているせいか、辺りの風景が良く見える。
 キャラバンの前には女子メンバーが止まる、とんがり帽子の様な形をしたピンクのテント。辺りには針葉樹林が生え、空いっぱいに枝を伸ばしている。針葉樹林の下には短い雑草が惜しげっている。夜であるせいか、虫が鳴くどこか儚く(はかなく)弱弱しい音だけが聞こえてくる。嫌なくらいに静かである。

「星、綺麗だなぁ」

 蓮は呟いた。
 頭上を振り仰ぐと、枝と枝の間から、満天の星空が見える。冷たい風が吹き、ざわざわと葉を揺らす。その風情(ふぜい)がある光景に目を奪われていた蓮は、下から誰かの視線を感じた。
 誰かと思い、落ちないよう柵を掴みながら下を覗き込むと、吹雪がこちらを見上げていた。白いマフラーが風に弄ばれている(もてあそばれている)。

「ふ」

 吹雪の名を呼ぼうとして、蓮は言葉を飲み込む。

(あれ? なんだかいつもの吹雪くんじゃないみたいだ)

 妙な違和感を覚えた。確かにそこにいるのは吹雪だが、”何か”が違うと己の第六感が、蓮に囁きかけてくるのだ。何だろうと思い、蓮は吹雪の顔を凝視し、蓮の相貌が獲物を狙うハンターのごとく鋭くなった。
 集中してみると、吹雪の違いが驚くほどはっきりと見えて来た。雷門ジャージと風をはらんで揺れるタオルの様なマフラーだけは同じだが。
 まず髪の違いに目が言った。いつもより青白くなり、上に跳ねている。そして何よりその瞳。今の吹雪には好戦的な色が宿っているし、第一彼の瞳はオレンジではないはずだ。
 違和感の原因に気づいた蓮は顔をこわばらせ、

「……お前は誰だ?」

 威嚇するように低い声で『吹雪』に尋ねた。恐ろしさからか、柵をつかむ手が小刻みに揺れている。

「誰?」

 素っ頓狂(すっとんきょう)な返事がし、『吹雪』は高笑いをした。にいっと口元を不気味に歪ませ、蓮を見上げて嘲笑する。

「おいおい、白鳥。たった数日で、チームメイトのこと忘れちまったのかよ。オレは吹雪だ。吹雪 士郎」
「お前は、吹雪 士郎くんじゃない!」

 からかうように自分を指差し言った吹雪の言葉をいなし、蓮は言い放った。自分を奮い立たせ、攻撃的な口調で攻める。不気味な『吹雪』の視線を弾こうとするかのように、きっと『吹雪』を睨みつける。
 初めは驚いたように『吹雪』は目を丸くしていたが、再び含み笑いを浮かべ、くく……っと引くように笑った。

「くく……オレを『士郎』じゃないと見破ったのは、アイリス以外ではお前が初めてだ。雷門には、とんだやつがいたもんだぜ」

 そこまで言い切ると、『吹雪』は真顔に戻る。

「ああ。オレは吹雪 士郎じゃねぇ。オレの名は『アツヤ』だ。吹雪 アツヤ」
「……じゃあ吹雪くんは二重人格」

 頭の中に浮かんだ可能性を独り言のようにポツリと言うと、アツヤはあっさり首を縦に振った。

「そういうことだ。よく覚えておきな。ちなみに試合の時に、FWとして出てんのはオレ。DFとして出てんのは士郎の方だぜ」
「吹雪 アツヤ——それがお前の名前なのか。お前はアツヤって呼ぶ。士郎くんの方は、これからも吹雪くんと呼ばせてもらうよ」
「好きにしろよ」

〜つづく〜