二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆人気投票開催中! ( No.235 )
日時: 2011/02/02 16:45
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)
参照: 今、人気投票で壁山が熱かったことに驚愕

 蓮がまず目を開いて見えた光景は、抜けるような青い空だった。
 ずっと目を閉じていても何も感じないし、何も聞こえなかったので、とうとうしびれを切らした。目金に許可を取らず、勝手に目を開けると、白い綿あめみたいな雲が数個浮いている空が飛び込んできた。
 なんだ何も変わらないじゃないか、と蓮は安心半分、残念半分の息をふっと吐き出し、視線を下げながら立ち上がる。目金はいなかった。辺りに視線を彷徨わせるものの、目金の姿はどこにもない。が、蓮は目金の代わりに妙な感覚を発見した。公園の遊具がやけに真新しいのだ。
 蓮が幼いころから存在していたこの公園の遊具のほとんどは、塗装がはげ、鉄の茶色が露になっていたはずなのに、今いる公園の遊具は塗装がほとんどはげていなかった。今日、目金と来た時ははげていたはずなのに、目を閉じたたった数分の間で誰かが塗ったとでも言うのだろうか。疑問を覚えたが、目金が心配だった蓮は、目金のことを探そうとすぐさま頭を切り替え、この考えを脳の隅に追いやった。
 携帯をジャージのズボンのポケットから取り出し、目金の番号にかけるが、電波の届かない場所にいます、と無機質な声が電話の向こう側から聞こえ、蓮はため息をついて、携帯をズボンのポケットに戻した。
 それなら誰かに尋ねようと辺りを見渡すと、ちょうどブランコに小さい男の子がいるのを見つけた。誰かを待っているのか、俯きながら、地面に両足をつけて、退屈そうにブランコを小さく揺らしている。その少年に話を聞こうと、蓮は、ブランコの柵前まで駆け寄った。小さな男の子は何かが考え事でもしているのか、蓮が近づいても顔を上げない。
 話していいものか、と少し蓮は逡巡(しゅんじゅん)したが、思い切って小さい男の子に話しかける。

「キミ、この辺りで、眼鏡をかけたお兄さんを見なかった?」

 話しかけられた男の子はびくっと肩を震わせ、ブランコを揺らすのを止めた。驚いたように顔を上げた。 その顔を見た蓮は、我が目を疑い、思わず柵から軽く身体を乗り出してしまう。

(ふ、風介!?)

 顔を上げた少年の相貌は——涼野風介にあまりにも似すぎていた。が、似ていると言っても、背丈は蓮が知っている涼野より2,3回りは小さい。それに、顔つきも落ち着いた印象の中にどこか幼さが残っている。しかし、髪形は今とほとんと同じだし、綺麗な青緑の瞳に宿る輝きは、まぎれもなく涼野風介のものだった。青地のフード付き長袖シャツに紺のジーンズ姿でも、その印象は変わらない。
 いきなり涼野似の少年に出会った蓮は、何と言葉をつづけてよいかわからずに固まったまま、その少年と頭の中に思い浮かべた記憶の中の幼い涼野風介と”見比べる”。記憶の中の涼野も、今目の前にいる涼野の様な感じがする。いや、全く同じ人間だった。

「しらない」

 幼い涼野が短く否定し、蓮は現実に引き戻された。

「そ、そっか」

 過去に来たと言う事実に困惑したまま、蓮は取りあえず笑った。すると、幼い涼野は悲しそうに視線を下げ、また地面に足をつけたままブランコをこぎ始める。甲高い音が虚しく辺りに響いた。
 幼い涼野がいるなら幼い南雲と幼い自分もどこかにいるはずだと、蓮は二人の姿を求めたが、いなかった。
 この頃の涼野は、南雲と蓮と三人でいたはずなのだが、今日は何かあったらしく、一人でいるようだ。
 幼い涼野が悲しげにブランコを揺らす姿をしばらく蓮は心配そうに眺めていたが、やがて柵を乗り越え、幼い涼野の左隣の空いたブランコに近づく。ブランコの板の上に、両足を乗せ、そのまま膝を前に突き出し、力を入れた。初めはゆっくりだったブランコもだんだんスピードが出て、ブランコは忙しく前後に動く。その勢いで、蓮の前髪が風をはらんで持ち上がる。蓮は、心から楽しんでいるらしく、楽しそうな笑みを浮かべていた。
 ブランコが何回か往復するうちに、顔を下げていた幼い涼野が蓮の方向へと顔を向けた。興味深そうな顔で、青緑の瞳で蓮の動きをしばらく追って、

「おにいちゃんは、たちこぎがすきなのか?」

 と落ち着いた声音で問うた。蓮はブランコをこいだまま幼い涼野を一瞥し、今は遠ざかる空へと視線を投げかけながらふっと笑った。

「そうだね」
「なぜだ」
「何故って……そりゃあ、空に飛べる気がするからだよ。一番高いところまで行ったら、鳥のように飛べる気がするだろう?」

 今度は近づく空を見ながら蓮は無邪気に幼い涼野に語りかける。
 今もそうだが、蓮はブランコが空に向かってとびあがるあの瞬間が好きだった。思いっきり後ろに下がって、陸上で言う助走をつけて、空に跳び上がる。陸上でハードルを跳ぶのが快感であるように、ブランコが宙に上がる瞬間、何だか空に近づける気がして楽しいのだ。僅かな時間だが、鳥になれるようで面白い。
 と、ここで蓮は涼野が幼いことを思い出した。幼い涼野がもし真似をしたりすると危険だと、蓮はブランコに座り、急いでブランコを止めて、涼野の方を向きながら慌てて注意しておく。

「あ、でも本当にやっちゃいけないよ。危ないからね」
「そんなことはしっている。キミも、やってはいけないぞ」

 普通の子供ならはーい! と元気に答えそうなものだが、幼い涼野は随分素っ気ない返事をし、逆に蓮をたしなめた。中学生である蓮より、年下の、それも幼稚園程の涼野の方がしっかりしているように見える。

「そ、そっか」

 正鵠を射るその言葉に蓮はそれ以上答えられなかった。と、幼い涼野はまた顔を下げ、沈痛な面持ちでブランコを揺らし始めた。その様子が気になった蓮は、ブランコから降りると、幼い涼野の真正面に立ち、視線を合わせるように屈んだ。

「……キミ、元気ないね」

 蓮が幼い涼野に心配そうに話しかけると、幼い涼野はゆっくりと顔を上げ、蓮を見つめた。その瞳は、いつもとは違った意味で綺麗な色に透き通っていた。悲しみの色で満たされていた。何か言おうと迷っているのか、口が開きかかっている。

「どうしたの?」

 優しい口調で蓮が聞くと、幼い涼野は安心したらしい。悲しみの色で満ちていた瞳に、助けを求めるような必死な光が宿り、蚊が鳴くような声で呟く。

「はるやとれんとけんかした」

 その瞬間、蓮の脳裏にあることが思い出された。あのサッカーが上手い男の人と会った時、自分は涼野や南雲と大喧嘩をしていた。自分がいる時間(いま)はきっとその日なのかもしれない。涼野と、南雲と。大喧嘩をしたあの日なのかも——

〜つづく〜
お久です^^今週中からは落ち着いて書けそうなので、何とかこのふぁいん様リクの短編を仕上げていきたいと思います。人気投票は、一月の末まで行いますv

最近イナズマ映画の公式サイトを見たら、人気投票第二弾が開催!されていると言うことを初めて知りました^^;。嫌な予感がしつつ、試しに風丸に投票してみたところ、壁山が他のキャラたちを押しのけて断トツトップ! ……五条祭り&コイル祭りが頭に再来。これは壁山祭り? と言うのでしょうか。
眼鏡が目金って誤字がありましたね;;ややこしい