二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.24 )
- 日時: 2010/04/20 18:22
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ErINZn8e)
アスファルトに二つの長い影が伸びる。円堂と蓮だった。
辺りは住宅街で、家の前にあるブロック塀が道路で言う街路樹のように左右にずっと続いている。もう夕暮れなせいか、家へと駆けていく子供たちや、帰宅が早い大人の姿が時折見受けられる。
蓮は学校の制服から、雷門中指定のジャージに着替え、肩から白い肩掛け鞄を提げていた。ジャージは青い長ズボンに、ズボンと同じ色の上着だ。上着の袖には、黄色で雷模様がデザインされている。
空はすっかり茜色に染まり、上に行くほど藍色の夜の空へと変わろうとしている。天気というのは非常に気まぐれだ。さっきまで曇っていたくせに、もう晴れているのだから。きっと太陽が出てきたい気分なのだろう。変わっていく。天気も。そして人も……
「変わっていくんだ……」
いつのまにか独り言になっていた。横から円堂が不思議そうな顔で覗き込んでくる。その頭上で蓮を馬鹿にするようにカラスが鳴いた。
「何が変わっていくんだ?」
「ん?」
蓮は視線を上に向けた。どこまでも広がる藍とオレンジのコントラストの空が広がっていた。
「いや……僕さっきまでサッカーやる気なかったのにさ。いつのまにかやる気になったなぁって」
「それはお前がサッカーを好きだから、だろ?」
視線を円堂の方に戻すと、蓮はふっと微笑を浮かべた。
「サッカーが好きかぁ。大会で倒れてから、そんなこと一回も言ったことがなかった。……でも、考えてみればそうなのかも。親に無理やりサッカークラブやめさせられても、ボールを持って一人で勝手に出かけてた。休み時間は、友達とサッカーをしていた」
「やっぱりサッカー好きなんだな!」
そうだね、と蓮が笑って返す。と、円堂がとある家の前で止まった。蓮の家とほぼ変わらない大きさの、一戸建ての家。屋根の色は赤い。ブロック塀には「円堂」と白い表札がくっついている。
「ここ円堂くんの家?」
首をかしげる蓮の前で、円堂は家の扉に手をかける。鍵は開けてないはずなのに、あっさりと開いた。かなり不用心である。お母さんは少しだらしがない人かも……と考えながら、少々遠慮がちに、円堂の後に続き家の扉を閉めた。
「ただいまー!」
「あら、守。お帰りなさい」
円堂が元気に帰宅の挨拶をすると、家の奥から一人の女性が顔をのぞかせる。恐らく円堂の母親だろう。ちょっとふくよかで、しっかりしていそうな表情の女性だった。円堂とは、あまり似ていない。
「この子が電話で言っていた蓮くんね。なかなかかっこいい子ね」
「いきなりお邪魔して申し訳ありません」
「いいのよ。まだ中学生の子が家で一人でいるなんて危ないでしょう? 遠慮しないでね」
円堂の母親の言葉が終わるのと同時くらいに、円堂が靴を乱暴に脱いで家に上がり、それから蓮の腕を引っ張ってきた。
「白鳥! 早く夕飯食べようぜ!」
すると円堂の母親が若干目を吊り上げながら、
「守! 先に手を洗ってきなさい! 汚いままじゃ、食べさせないわよ!」
と怒鳴ってきた。よく通る声なので、耳の鼓膜を針でつつかれたような感じがした。耳が少し痛む。
「わ、わかったよ。母ちゃん」
耳をさすりながら、円堂は廊下のすぐ近くにある部屋に入っていった。蓮も靴を脱ぎ、きちんと揃えるとその部屋に入る。居間だった。
入ってすぐの場所にキッチンがあり、その横にはテーブルと二人づつ座れるソファが向かいに並んでいた。その向こうはテレビがあり、その前はちゃぶ台がおかれ、座布団が周りにやはり4つ置かれている。
「円堂くんってせっかちだね」
手を洗う蓮の横で、円堂はお腹をさすって見せる。
「もう腹ペコペコなんだ〜」
「僕も」
同意した時、返事をするようにお腹が情けない音を出した。と同時に円堂のお腹も鳴った。ふいに二人の視線が混じり合う。そのままよくはわからないが、蓮の口から笑いが漏れる(もれる)。円堂もつられたのか、大笑いし始めた。
「白鳥は素直だなぁ!」
「なんだよ! 円堂くんだって!」
怒ってみるが、声が震えた。笑っているせいだ。そのせいで怖く聞こえない。ますます円堂が大爆笑する。蓮の笑いも過熱する。しかし——
「守! 蓮くん! 早くしないと夕食食べさせないわよ!」
母親の怒鳴り声に鎮圧されたのであった。
〜一章完〜