二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.252 )
日時: 2011/02/08 19:13
名前: しずく ◆rbfwpZl7v6 (ID: Ua50T30Q)

「ところでおにいちゃんのなまえはなんだよ?」

 その時、幼い南雲が蓮に尋ねた。そういえば、まだ幼い南雲と涼野に、自己紹介をしていなかったことを今更ながら思い知らされる。あんまり黙っていると先ほどみたいに不審者と勘違いされる恐れもあるため、蓮は即興で偽名を口走った。

「山田 太郎って言うんだ」

 男らしい貫禄に満ちた名前など、とっさに思いつけるわけなく——蓮はよくある名前の代表格ともいえるものを挙げた。
 その名前を聞いた幼い南雲と涼野は顔を合わせ、幼い南雲は笑いながら一言、

「だっせーなまえだな」
「うるさいな」

 幼いとはいえ、南雲にからかわれるとなにやら腹立たしい。蓮は向きになって反論した。晴矢くんこそ……と口から出掛かったのを、蓮は慌てて飲み込んだ。今は幼い南雲とじゃれあっている場合ではない。ふと現実に戻ると、幼い涼野が何かを訴えるように蓮を上目遣いで見ていた。彼が何を望んでいるのかは言われなくても蓮はわかっていた。

「後は蓮くんと仲直りしないとね」

 そう、幼い自分と仲直りすること。思ったとおり、幼い涼野はこっくりと頷いた。そして幼い南雲の方に向き直る。

「はるや、れんにきちんとあやまってくれ」
「おまえもな」
「でも、れんはどこに?」
「しらねーよ」
「知ってるよ」

 答えに窮した幼い南雲の上から、蓮の声が降って来た。幼い二人は同時に目を見開き、蓮に注目した。蓮は抜けるような青い空を、焦点が定まらない目でぼんやりと見上げている。

「僕は蓮くんの居場所を知ってるよ」

 蓮は独り言のように言った。それから、不思議そうに見上げてくる幼い二人の視線を感じながら、二人には聞こえないほど小さな声で、だって僕は未来から来たからねと付け加えておいた。

 蓮は幼い二人を引き連れ、初めに幼い涼野がいた公園に戻ってきた。 案の定公園のベンチにその目的となる人物はいた。ブランコ近くにあるベンチに座り、嗚咽(おえつ)を漏らしながら、人目を憚らずに涙を流していた。その光景を見た幼い南雲と涼野は蓮の手から離れると、その泣いている人間の元へと駆けていく。一方の蓮は、半分引き気味にその泣いている少年を見ていた。その顔は何やら呆れたとも嫌そうなともとれる微妙なものであるが、こうなることには理由がある。
 幼い南雲と涼野が駆け寄った人間は、二人に気づくと、ばっと顔をあげる。ばねにはじかれたようにベンチから下り、二人の前に立った。

「はるやぁ! ふうすけぇ!」

 黒曜石のような漆黒の瞳を潤ませ泣き叫ぶこの少年こそ——幼い白鳥 蓮その人だった。背丈は幼い南雲と涼野より少し小さく、黒い髪は、今の蓮よりだいぶ長い。それと頼りなさそうな顔付きのおかげで、傍から見ると女の子のように見える。不幸なことに、今日の服装もお日様園の職員がふざけたのか、オレンジ色のTシャツに黄色いキュロットを着ている。どっからどう見ても少女だが、実際の蓮は男である。
 その服装と見ていて情けない言動の数々は、成長した蓮の心を軽くえぐり、立ちくらみに近いものを起こさせていた。蓮は立つことに意識を集中させ、現実から半分逃避していた。それもそのはず、蓮は小さい頃の気弱な自分が大嫌いなのだ。何度も忘れようと努力したこともある。が、目をそらしても、忘れたい過去は容赦なく記憶を蘇らせてくれる。 最終的な逃避行動として、自分はこんなに弱くかった、と蓮が自分に言い訳。それでも現実は甘くない。目の前の小さな蓮は、成長した蓮に精神的なダメージを与え続ける。

「ごめんなさい! いちごたべちゃったぼくがわるかったよぉ。だってぼくがおいしいとおもってたべたけど、はるやもふうすけも、だいすきだよね。こんどぼくのぜんぶあげる。だから、だから……」

 幼い蓮は鼻をすすりながら、まだ涙を流しながら、幼い南雲と涼野に何回も頭を下げた。必死に謝っているせいか、言っている内容も支離滅裂だし、声も涙声で掠れている。最後には語尾も弱弱しくなり、ついに消えた。幼い南雲と涼野の顔を、不安げに眺めた。二人は、硬い表情で蓮を見つめていた。

〜つづく〜
なんか蓮が逃避行動してますが、みなさまにも忘れたい過去はあると思います。かくいう私も色々あります^^;
どうでもいいですが、バレンタインデーの短編書きたくなってきた。多分ファイアードラゴンによるカオスストーリーになると思いますww