二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.257 )
日時: 2011/02/14 15:18
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

「ねえ三人とも、一つ聞いていいかな?」
「あんだよ」
「なんだ?」
「なあに?」
「将来の夢ってある?」

 考えてみると、幼い頃の南雲や涼野、自分の夢は覚えていない。思い出したいが無理だ。
 幼稚園の文集は、義父母が謝って古紙回収に出してしまったせいで、もう手元には残っていないからだ。 南雲や涼野は持っていそうだが、こいつらはよく蓮の恥ずかしい過去をほじくりかえしては、からかうのが好きなので、蓮は聞きたくないのだった。
 この質問をする主な理由に、実は半分はからかってくる南雲や涼野への復讐の意図もある。こんなこと言ってたよなぁ、とたまにはあの二人を馬鹿にしたいものなのだ。蓮は二人が子供らしいへんなことを言うのを期待していた。
 幼い南雲は、二人から腕をはずした。三人は互いに顔を見合うと、まずは幼い南雲が口を開いた。自身満々に蓮に話す。

「おれはふうすけとれんといっしょにサッカーやるんだ!」
「おお、仲がいいんだね」

 褒めるような口先だが、内心では幼い南雲がしごくまっとうなことを言ったのを残念に思っていた。
 続いて蓮が幼い涼野に目配せすると、幼い涼野はしばし考えるように視線を宙に送ってから、蓮を見上げる。

「わたしか? わたしはやきゅうせんしゅになる」
「なんで?」
 
 蓮は涼野をからかうネタが出来たと喜びながら、一応尋ねる。
 すると幼い涼野は刺すような視線を、幼い南雲と蓮へ順々に送って、不平そうな顔で蓮に目を合わせる。

「はるやとれんにまねされるのがいやなのだ。わたしだって、サッカーせんしゅがいい」

 どうやら三人と同じになるのが嫌で無理して夢をねじ曲げているらしい。無理に意地を張っている涼野が可愛いく思えて、蓮は優しく声をかける。

「無理する必要はないよ。三人でサッカー選手になればいいだろ?」
「…………」

 幼い涼野が冷たい表情で——目を少し吊り上げながら、蓮を睨む。
 蓮は小さく笑い声を立て、さっきの南雲のように幼い涼野の頬を人差し指でつっついた。ぷにぷにしていて柔らかい感触がする。幼い涼野は嫌そうに顔をしかめるが大人しくしている。

「いじっぱりだね〜風介くん」
「うるさい」
 
 茶化すように蓮が人差し指で何度か頬をつっつくと、幼い涼野は機嫌が悪そうな低い声を出した。
 これ以上いたずらをするとどんなことになるのかわからない覇気を纏っているので、蓮は残念そうに幼い涼野をつつくのを止め、幼い自分の方に顔を向ける。 こうして中学生になり、小さい自分と会うのは、何だか懐かしい。蓮は懐かしむように自然と目元を緩くした。一方幼い自分は無邪気に、

「たろうおにいちゃん! ぼくはね〜、はるやとふうすけにまもってもらえる、りっぱなおとこになるんだ!」
「は?」

 耳を疑うような言葉を実に嬉しそうに話してくれた。蓮は間の抜けた声を出し、手の力が自然に抜けた。サッカーボールを独りでに落としてしまった。サッカーボールが地面で数回虚しい音を立てて跳ねる。 ボールへの反応が早いのだろう——幼い蓮はすぐにボールの方へ走り、ボールを両手で抱え、蓮に差し出した。

「おにいちゃん! ボールおとしたよ!」
「あ、ありがとう……」

 蓮はどうにか言葉を吐き出しながら、立ち上がり、幼い蓮からボールを受け取った。
 それから改めて幼い蓮と同じ目線までしゃがみ、必死に平静を装いながら尋ねる。

「あ、あのね蓮くん……ど、どうしてそんな夢があるのかな?」

 幼い蓮は小首をかしげ、さも当然そうに、

「だって、まえにひとみこねえさんいってたよ! れんはよわいから、ふたりにまもってもらいなさいって!」
「……そっか」

 蓮は目眩を起こしそうにながらも、ふらふらと立ち上がった。
 恐らく瞳子がふざけて言ったのをまともに受けているのだろう。子供だから仕方ないと説得する考えが浮かぶと同時に少しは疑えよ、と思う相反する気持ちが心の中で衝突しあう。どちらが自分の本当の思いなのか、蓮にはわからなかった。

「そ、そろそろ帰ろうかな」

 もうこれ以上いると精神がどうにかなりそうなので、蓮は現実から逃避するように幼い南雲たちに背を向けた。
 すぐにえー! と三人は非難の声を上げる。

「たろうおにいちゃん、もうかえるのか?」と、名残惜しそうな目で幼い涼野が、
「もっとあそぼーぜ!」と、遊び足りない様子の幼い南雲が、
「なにかごようじなの?」と、必死そうな目で幼い蓮が、それぞれ今の蓮の背中に声をかける。しかし蓮は、残念そうに振り向きながら片手を挙げる。

「これから用事があるしさ、かえ……ああっ」

 “帰る”と言いかけ、蓮は絶望的な声を出す。

「僕……どうやって帰ればいいんだ!?」

 蓮は真っ青な顔になり、頭を抱える。目金に過去に来る方法は聞いていても、未来、正しくは蓮が今現在生きている時間にどう帰ればいいかは、全く聞いていなかったからだ。
 帰れない、突きつけられた現実が蓮の頭の中で何度もぐるぐるしていた。

〜つづく〜
「僕は晴矢と風介に守ってもらえる立派な男になる」と言う幼少蓮の台詞が前々から書きたかったのですが、ようやく書くことが出来ましたww
普通逆!「二人を守る立派な男になる」って言うのならマシなのに、その逆にしたら面白いかなぁとふっと思ったのがきっかけですbどこまでも蓮は女々しいのであったちゃ(