二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.265 )
日時: 2011/02/16 17:36
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

 それから数十分後の住宅街には、

「おれがいちばんのりだぜ!」
「まってよー! はるやー!」
「ふたりとも、まて!」

 ぎゃあぎゃあと嬌声を上げながら先陣を走る子供三名と、

「こら! 走るな! まて!」

 その子供たちより、だいぶ離れた場所で、命令形を連呼しながら、必死に子供たちを追いかける、サッカーボールを抱えた中学生がいた。

 公園を出た直後、幼い涼野がおなかがすいた、と蓮のジャージの裾を掴み、空腹を訴えてきた。
 蓮を見上げる幼い涼野の青緑の瞳は、子供らしいあどけないもので、蓮の父性(?)本能をくすぐるものだった。それにつられた蓮は、顔を綻ばせながら、つい、いいよなんて首肯してしまったのだ。

「はらへった。なんかくわせろ」

 幼い涼野が嬉しそうに少し微笑む横で、幼い南雲が偉そうな口調で要求する。幼い南雲に年上を敬う気持ちはあまりないらしい。蓮は“年上”として、幼い南雲の額に自分の額をくっつけ、少し目つきを厳しくしながら、叱るように言う。

「年上に命令するな」
「おれはたいやきがいいぜ! なあ、たろうおにいちゃん、たいやきたべようぜ!」

 幼い南雲はするりと蓮の額から自分の額を離し、叱られてもけろりとしている。そして、聞いてもいないのに自分が食べたいものを元気に提案した。えぇ…・・・と蓮は嫌そうな声を出した。が、その横で幼い涼野は、幼い蓮に近づくと、

「たいやきか。うまそうだな」
「ぼく、たいやきだいすき!」

 蓮が不平そうな顔をする下で、勝手に話を進め、二人で盛り上がり始めた。
 ここでたいやきはなしと言えば、またさっきのように幼い自分が空涙(そらなみだ)を流すに違いない。さっきの大人たちのナイフで刺すような鋭い視線は、もう浴びたくない。    
 独りでにため息を漏らしながら、蓮はジャージのポケットから財布を出す。黒い皮で出来た財布である。お札が入る前ポケットを指で広げるが、札はない。すぐ下にあるポケットのような小銭入れを開き、財布をひっくりかえす。掌に乗ったのは、日光を反射して輝く500円玉が一枚のみ。掌に乗った500円玉を力強く握ると、拳を振るわせる。蓮は悔しそうな表情で、

(くっそぉ)

 心内で悪態をついた。
 それというのも、昨日蓮が知っている南雲と涼野とちょっとした賭けを思い出したせいである。
 内容はじゃんけんをし、負けたものが二人にジュースとお菓子をおごると言うよくある趣旨のもの。そして、蓮は見事に二人に敗北し、少ない小遣いが炎のように燃やされ、氷のように溶かされたわけである。蓮は二日続けて、南雲と涼野におごらされる羽目となったのだ。

 息せき切りながら走っていた蓮も、とうとう息が苦しくなり、ふらふらと近くの電柱にもたれかかる。
ちなみにやんちゃ坊主たちは、住居をそのまま店舗として利用しているたい焼き屋の前で、既に品定めに入っている。自分たちの背より高い場所に置かれた、たいやきを、小さい身体を一生懸命伸ばしながら、食い入るように見つめている。

「ぼく、何食べたいのかな?」

 エプロンを着たお姉さんが優しく話しかけ、三人は声をそろえて、

「あんこあじをください!」
「ぼ、僕も……」

 息を整えながら、蓮も片手を挙げて遠慮がちに頼んだ。

「おいしい!」
「そうだな、れん」

たいやきを頭からかじった幼い蓮が歓声をあげ、左横にいる幼い涼野が微笑を浮かべた。 たいやきを購入後、蓮たちは、蓮が幼い涼野とであった公園に戻り、ベンチに座ってたいやきを食べていた。
幼い蓮と幼い涼野は、頭からゆっくりと食べるが、幼い南雲はわざわざ尻尾から食べている。かなりの勢いでばくついており、たいやきは、もう頭くらいしか残っていない。

(晴矢だけ尻尾派か。そういや、今も尻尾から食べてたな)

 そんな何気ない違いを見ながら、蓮は成長した南雲を思い出した。前に三人でたいやきを食べたとき、南雲だけ尻尾から食べていた。涼野が、南雲だけ違うのを言いことにからかってい、南雲はこんなことを言っていた。

『頭の方があんこがつまってるだろ? 俺はお前らと違って、最後までじっくり味わいたいんだよ』

挑発的な南雲の声が脳裏に蘇り、蓮は同い年の二人に無性に会いたくなった。自然と袋を握り締る手に力が入り、袋が乾いた音を立てた。たいやきは、少し冷めかかっていて、袋の上から持っていても、熱くはない。

「たろうおにいちゃん、くわないならおれがたべるぞ?」

 蓮が全く食べないことにめざとく気づいた幼い南雲が、蓮の手からたいやきを取ろうとする。蓮はたいやきを守るように身体を丸め、横目でじろりと幼い南雲を睨みつける。

「今から食べるところだ」

 少し怒りながら、口を大きく開けると、蓮は南雲の真似をして尻尾から噛む。さっくと口の中で衣が砕け、欠片が少しジャージの上に零れる。同時にほろ苦いあんこの味が舌の上に広がった。横目で幼い涼野と蓮を見ると、二人とも口の周りがあんこのつぶだらけになていた。

「ところで晴矢くんは尻尾から食べるんだね?」

 半分ほど食べたところで、蓮は退屈そうに足を揺らしていた幼い南雲に話しかける。幼い南雲は足を揺らすのを止め、蓮に顔を向ける。

「だって、さいごまでうまいほうがいいだろ?」

 幼い南雲は、今の南雲と変わらない、明るい笑顔を見せてくれた。それを見た蓮は懐旧の思いとともに、目金を激しく求める気持ちも湧き上がってきた。
 ——いつになったら、帰れるのかな。言の葉にならない程の小さな声量で、蓮はそっと公園の空気の中に思いを吐き出した。

〜つづく〜
ただ、たい焼き食う話でしたwww長かった妄想短編も次回で終わりますwww

私は頭から食べる派ですね、たいやき。電車で数駅行った場所に、おいしいたいやき屋さんがあり、たま〜に食べます。蓮たちのようにあんこがすきかと問われれば、否。私の好みはクリーム味なりwあんこも好きですが、断然クリーム派ですwあまっぽさの加減がちょうどいい!
って、サッカー小説でなんでたいやきの話になるんだろう^^;サッカーボールの扱いもぞんざいにww

次々回は時期ずれバレンタイン短編♪なぜかホ・チナン(ファイアードラゴンの控えGK)が出てきますが、相当キャラ作っていますw後どこまで削れるか、画面と勝負してます……