二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.27 )
日時: 2010/05/21 12:11
名前: イナズマイレブン ◆GU/3ByX.m. (ID: ErINZn8e)

 そんな調子で10分間、重い沈黙をまといながら進む女子二人。傍から見るとこの恋の調子が見えてきた。
 想う彼は女子二名の気持ちにはどうやら気がつかぬ様子だし、女子二人のほうも告白はまだの様子。この前の理科でやった”ていたいぜんせん”のよう。そんな”ていたいぜんせん”を見ると、手を出したくなるのは蓮の性分である。さっきから何かにつけて、二人をフォローしようと立ち回る。

「ねえ、円堂くんって好きな子とかいないの?」

 その途端、秋と夏未の顔がいっそう紅潮した。でも少し興味がありそうな顔つきでじっと円堂におそるおそる視線を向ける。円堂は笑顔で、自信に満ちた表情で、

「好きな子? 蓮みたいに、サッカーをやっているやつはみんな好きだぞ!」

 見事に勘違い。彼にとってその言葉は疎遠のようだ。
 秋と夏未はある意味期待はずれ、ある意味安心と言いたげな複雑な表情をしていた。

「じゃあ〜……」
「お〜い白鳥。ついたぞ」

 次の質問を考えようとしたとき、円堂が声を上げた。

 目の前にとうとう雷門中学校——昨日から本来通うはずだった中学校が遠めに見えてきてしまった。
 いつもなら立派にそそり立つ校舎が見えるのだろうが、今は山のような形となって目に飛び込んでくる。

「あれが雷門中学校か……壊れる前に来たかったな」
「オレたちがエイリア学園を倒したら、きっと見える! だから早く校舎に行こうぜ!」

 言うなり円堂は校舎のほうに思い切り駆け出していった。なんというか、早く旅をしたくてうずうずしているように見える。だがこんなキャプテンだからこそ、FFで優勝できたんだろう。
 確かに落ち込んでいる暇はない。今朝もニュースで多くの学校が、エイリア学園に破壊されていると聞いた。壊された校舎の映像も目に焼き付けた。そう——今この瞬間にもあのローブのやつらは学校を壊し、たくさんの人をケガさせているのだ。これを許すわけにはいかない。一分でも早く行動し、エイリア学園を倒さなければならない。

「……うん」

 蓮は覚悟を決めるように肩にかけた鞄の紐(ひも)をぎゅっと握り、円堂の後をゆっくりと追いかけ始めた。

 雷門中学校は完全に崩壊していた。
 正面にある本校舎は斜めに傾き、学校のシンボルであるイナズママークが根からぼっきりと折れている。その下には瓦礫という瓦礫が積み重なり、まさに山のようになっている。本校舎はまだいいほうで、体育館や部室棟は完全にその姿を石の塊に変化させていた。——TVで見る地震が起きた土地のよう。ケガ人、死人がいたら完全に『地獄絵図』の風景になってしまいそうである。
 しかしそこに”希望”は待っていた。崩壊した雷門中学校の中でただひとつ——朝日を受けて輝いていた。

「あれ? なんだ?」

 本校舎の手前、グラウンドに一台のバスがあるのに蓮は気がついた。
 大きさは市営のバスほどか。前面は少しでっぱっているし、屋根の上には籠(かご)のようなものがあり、大量のサッカーボールや旗が紐(ひも)で何十にも巻かれていた。
 深い海を思わせるような濃い青いボディ。乗降口がある方の側面には大きく黄色いイナズママーク。乗降口の左横には、「INAZUMA」と中は黄色く太い自体だが、外側は緑で縁取り(ふちどり)されている。

「これは”イナズマキャラバン”だ」
「”イナズマキャラバン”?」
「これに乗って全国を旅するんだぜ!」
「へぇ……」
 
 蓮は改めて「イナズマキャラバン」をしげしげと見つめてみた。これに乗って旅をするのだ、と考えると色々な空想が頭を駆け巡る。
 サッカー部のみんなと走る姿……新しい選手。そうだな女の子がいいな。顔は美人。もしくはかわいい感じで——
 脳裏に美少女選手を浮かべ惚けた顔をしていると、円堂に思い切り肩をたたかれた。妄想が一気に吹き飛ばされた。

「白鳥! みんなお前を待っているぞ!」
「今行くよ」

 半分美少女の選手に会えることを期待しつつ、蓮はいそいそとキャラバンに乗り込んだ。

 車独特の臭いが鼻を突く。はっきり言って苦手である。入ってすぐに運転席があった。ひげをたっぷりと蓄えた初老の男性が座っている。運転手の古株さんだ、と円堂が教えてくれた。蓮は軽い挨拶をすると、運転席をまっすぐ進んだ。中にはサッカー部の面子が思い思いの席に座り、楽しそうに雑談している。
 内部は3にん掛けの席が縦に4つずつ左右に配置され、一番後ろは5、6人は座れそうな広い席になっている。が、みんなの荷物置き場にされていた。

「円堂くん、白鳥くん。遅いわよ。早く席に着きなさい」

 興味深く内部を見渡していると、後ろから瞳子の声が飛んできた。蓮と円堂は一番後ろの席に荷物を置くと、右側の前から2番目の席に腰掛ける。

「みんな揃った(そろった)わね」

 その声にみんなははい! と声をそろえて返事をした。それから瞳子は円堂と蓮の目の前の席に座る。

「古株さん。発進してください」
「ほいきた! イナズマキャラバン発進!」

 古株さんの声を合図に、エンジンがうなり始めた。続いてバスが上下に小刻みに揺れる。

「いくぞーっ!」

 景色が流れ始める。蓮はバスの窓をスライドさせ、顔を出した。冷たい風が蓮の黒髪を揺らす。雷門中学校が遠くなっていく。普通の学生生活が遠ざかっていく。

「いつになったら僕の学生生活は始まるのかな」

 そんな呟きは風がきれいに流してくれたのであった。

〜つづく〜

久しぶりに書きました!ようやく奈良編スタート。
マイペースですが更新していきます☆

投稿名がイナズマイレブンになっていますが、しずくが誤ったものです;;