二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜☆番外編更新中 ( No.288 )
日時: 2011/02/28 09:02
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
参照: 2ぺーじめ。三点リーダーだらけ。

 しかし南雲の語尾は初めこそ勢いがあったものの、だんだん弱まり、ついには消えてしまった。
 南雲がこういう態度を取る辺り、比較的仲がいい人間に渡すつもりのようだ。
 涼野しか思いつかないのだが、わざと嘘をついていて相手は涼野かもしれない。
 チナン(蓮)は遠まわしに聞いてみることにした。

「じゃあヒントをくれ。そいつのことどう思ってるんだ?」
「そいつは、オレにとっちゃ兄弟みたいな奴で、からかってると面白い奴。でも、ライバルだ。一度は、あいつを土下座させたいと思っているんだぜ? ま〜でも、一人で放っておくと危ないから、オレが保護者にならなきゃいけない。しっかりしてるくせにどっかうっかりしてんだよな。迷惑な奴だぜ」

 窓の外を見ながら、南雲は困ったように語った。うっかりしていると迷惑そうなことを言いつつも、その瞳は嬉しそうに細められて。表情も明るく、話しているときの南雲は、とても楽しそうに見えた。

「へ〜南雲にとって大切な人間なんだな」
「ち、ちげーよ! ただの幼馴染だ!」

 チナン(蓮)が素直に感想を漏らすと、南雲はむきになって言い返してくる。そんな南雲を見てチナン(蓮)は一言。

「そうかそんなに厚石 茂人(あついし しげと)のことが好きか」

 あくまでチナンになりきり、にやりと笑いつつ、的外れな答えを述べておく。
 厚石 茂人は南雲の幼馴染。ただし、今はネオジャパンとか言う、イナズマジャパンの代わりに日本代表の座を狙うチームに所属しているようだが。

「おまえの単細胞頭じゃ無理だったか」

 チナン(蓮)の答えに南雲は噴出し、馬鹿にするような瞳で見つめてきた。なにをー! とチナン(蓮)を演じる蓮は、両腕を上げながら叫んだ……時。
 コントを演じる二人の背後から冷や水のような声がかけられた。

「朝からキミたちは暇人だな」

 南雲は露骨に顔をしかめ、チナン(蓮)は少しむっとしながら振り向くと、蔑むような視線をこちらに向けている涼野と、少し金髪が乱れ気味のアフロディ。 二人とも、既にジャージに着替えている。

「お、ふう……涼野にアフロディ! おはよーさん!」

 知られてはいけない人間がこうも簡単に揃ってしまったことに戸惑いを感じながらも、チナン(蓮)は明るく挨拶をした。演じることに慣れてきたのか、違和感はない。見た目以外。
 また風介と呼びかかったが、涼野は別段反応しなかった。アフロディだけは、チナンと呼び方が同じなので助かる。
 涼野は形式的に無感情な声でおはようと返し、アフロディは微笑みながら返した。

「そういや。風介もオレが渡すつもりのを相手に作ったんだぜ」

 南雲は嫌らしく口角を上げながら涼野を指差し、涼野が目を少し見開いて固まる。チナン(蓮)は、それを見逃さず、すぐさま問いを突きつける。

「涼野はそいつのことどう思っている?」
「どう、と言われてもな」

 涼野は考え込むように手を顎に当て、下を向く。

「そう聞かれても表現に困る。上手い言葉が思いつかない」

 しばし沈黙が流れ、涼野は柔らかい笑みを浮かべながら顔を上げた。

「そうだな。私にとっての彼は、色々と頼りがいのある親友だ。側にいると不思議と落ち着く。それでいて危なっかしい——私や晴矢がいなければどうなることか」

 訥々(とつとつ)と語る涼野の横顔は、どこか嬉しそうで楽しそうに、蓮には思えた。しかし、そこまで語った後、涼野は言葉を切った。急に声を荒げる。

「チナン、キミは私に何を話させているのだ!」

 急に声を荒げた涼野を、南雲と涼野は目を丸くして見やる。チナン(蓮)だけは、落ち着き払って涼野に目をやっていた。涼野は、勢いよく言いすぎたのか、ぜえぜえと荒い息を吐いている。頬が僅かに上気していた。

「そうか大切な人間なんだな」
「違うと言っているだろう!」
 
 チナン(蓮)が今度はからかう様に言うと、涼野はむきになって強い口調で否定してきた。頬がますます赤くなっている。

「今の言葉は流せ。聞かなかったことにしろ。そうでなければ、キミはいてつく闇の冷たさを知ることになるだろう」

 そして、チナン(蓮)を憎憎しげに睨みつけながら、涼野は捨て台詞を吐く。チナン(蓮)に背を向けると、かなり早足でその場から離れ始めた。

「おい、アフロディ行こうぜ。風介、待てよ!」
「涼野!」

 その光景を見ていた南雲はアフロディに声をかけると、アフロディと共に駆け出す。涼野の名前を呼びながら、南雲と涼野の姿は遠ざかっていく。遠くなる背中を見ながら、チナン(蓮)はグリーンのニット帽を取った。
 再度凝結し始めた窓から手で水滴を拭うと、窓にニッコリと笑いかける。

「晴矢と風介、僕のことそんな風に思ってたんだ」

 身体がほんのりと温まり、頬までもなぜか熱い。現に蓮は頬を桃色に染め、恥ずかしそうに双眸を緩めていた。
 南雲や涼野にあの言葉を言われたとき、身体の奥底から何か熱いものが湧き上がった。
 抑える事に必死だったが、もう平気だ。まだほのかに温かい体温を感じながら、蓮は窓に映った自分の像をしっかりと見据える。

「晴矢、風介。キミたちは最高の親友。一緒に世界を目指そうね」

 あたたかい声で囁いた。

 こんなことは本人たちにはもちろん言えない。言った途端、気を失える自信がある。ただ何となく思いだけは吐き出したかった。
 それから約一名を忘れていたことに気づき、慌てて付け加える。

「あ、アフロディ! キミはあれだ。チームのよしみだ! 勘違いするな……で、でもアフロディってかっこいいよね。スタイルも抜群だし、プレーも華麗で……って僕は何を言っているんだ」

 どうもアフロディにはうまい言葉が思いつかない。蓮は傍から見ればひかれそうな独り言を小声で吐きまくっていた。その時、近くのドアが開く音がし、蓮は急いでニット帽を被りなおす。
 音の方を見ると、蓮から見て右手の部屋から、チャンスゥが顔を出していた。

「おや、チナン。おはようございます」
「おはよう! チャ……キャプテン!」

 独り言が聞かれなかったことに安堵しつつも、チナン(蓮)はチャンスゥに手を振る。ジャージ姿のチャンスゥは部屋のドアを閉めてから、チナン(蓮)に向かって、

「今日はあなたにとっていい一日になるはずですよ」
 
 意味不明な言葉を向けた。チナン(蓮)がわからずにぼうっとしていると、チャンスゥは敵に見せるような不敵な笑みを顔に作った。

「わたしの完全なる戦術の中に……あなたは既に囚われているのですから」

 びゅおっと強い北風が吹きつけ、窓枠を揺らした。

〜つづく〜
オーバーが怖いので、コメントは追記です。
バレンタインですから、幼馴染コンビが蓮をどう思っているのか言ってもらいました。
蓮がどう思っているかはそのうち書きますww
大好きだとか言うと、腐向けになりかねないので自重。
それと蓮がアフロディに微妙な態度をとっているし、アフロディはなぜか蓮を呼び捨ての謎。
前挫折した小説とは違う設定があります。披露できるとしたら、本編が沖縄戦の後まで行かんと。
あ、そういえば雷門とイナズマジャパンの短編を全く書いてない((