二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.316 )
- 日時: 2011/03/05 12:47
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
- 参照: ちなみに3月は蓮の誕生月。日にちは未定。下旬くらい
南雲が何気なく呟いたのと同時刻。漫遊寺に黒い流星が近づいていた。いや、流星ではない。よく見ると、本来白い部分が黒く塗られ、黒い部分は赤く塗られたサッカーボール。かなりのスピードで落下しているために、空中で熱を帯び、黒い尾を引く姿が流星のように見えるのだ。黒い流星は狙いを違わず——漫遊寺の校舎の一角に激突した。くぐもった爆発音が辺りに響き渡り、煙がもうもうと立ち込める。グラウンドは騒然となり、漫遊寺の生徒はただ逃げることしかできなかった。
「な、なんだ?」
その時、蓮は木暮や春奈と共に学校の裏手にある竹林の中にまだいた。何が起こったのかわからず、三人ともおろおろと不安げに辺りを見渡していたが、やがて思考が回復してきた蓮が脳内に思い浮かんだ嫌な仮説を唱える。
「まさかエイリア学園……!?」
春奈と木暮がまさか、と笑い飛ばそうとする前に一人の少女が蓮たちの元に走りこんできた。
フワフワとウェーブがかかったゆるやかな髪をポニーテールにした少女。赤茶色の瞳は芯のありそうな強い瞳で真面目そうな印象を与える。漫遊寺のユニフォームを着ているが、漫遊寺の生徒ではないらしい。木暮が始めて見たような顔つきで少女を見つめている。
「あなたたちが雷門中サッカー部の方たちですか?」
焦った声音で尋ねられ、蓮と春奈はゆっくりと頷く。少女が慌しい仕草をしているのが蓮は気になったが、春奈は気にならないようだ。のんびりとした口調で、親しげに話しかける。
「あなたは霧隠 紅葉(きりがくれ もみじ)さんですね!」
「ど、どちらさま?」
彼女を知っているらしい春奈と違い、わからない蓮は戸惑いながら少女を見つめた。すると紅葉は恭しく一礼し、丁寧な口調で自己紹介をする。
「我は戦国伊賀島(せんごくいがじま)中、霧隠才次の妹です」
「戦国伊賀島中ってフットボールフロンティアに出て、雷門中と戦った学校だよね」
「すっごい死闘だったんですよ」
学校が爆発したことなどすっかり忘れた蓮と春奈は、数分ほど楽しい雑談に夢中に。
雷門VS戦国伊賀島島中との試合を、春奈は身振り手振りを交えて熱く語った。それを蓮は目を輝かせながら聞き入り、その脇では紅葉と木暮があっけに取られたように見ていたが、とうとうしびれを切らした紅葉が蓮と春奈の雑談に口を挟んだ。
「今は雑談をしている場合ではありません! エイリア学園が攻めてきたのです。さあ、早くフィールドへ参りましょう」
漫遊寺のグラウンドへとかけて行く紅葉の背中を見て、蓮と春奈は現実に戻った。
そうだ。おそらくだが、“イプシロン”がこの漫遊寺に攻めてきたのだろう。蓮は自身のうかつさを攻めながら振り向き、春奈と木暮にグラウンドへ行くよう声を投げかける。
「木暮くん、春奈さん、行こう!」
木暮と春奈は同時に頷き、木暮は蓮の後を大急ぎで追いかけ始めた。蓮は意外とスピードがあるらしい。姿がもう校舎の中に入っていた。木暮とは距離が広がる一方である。その姿を見ながら、春奈は脳裏に一つの疑問を覚える。
(白鳥先輩、今日はどうして倒れていないのかしら?)
そうエイリア学園が現れると決まって倒れていた蓮が何故、倒れないのかという疑問。
「さあ、勝負だ! イプシロン!」
漫遊寺のグラウンドでは、既に雷門中サッカー部とイプシロンが睨み合っていた。
イプシロンは11人。控えはいないらしい。宇宙服を思わせる赤い地に黒のラインが入ったユニフォーム。見ていて痛々しくなるのは気のせいだろうか。
「おや、お仲間も到着したようだな」
蓮と春奈、木暮が走ってくるのを見ると一際背の高い男——イプシロンのキャプテン、デザームが唇をゆがめる。
デザームはひょろっと長い顔にかあんり吊り上った赤い目、と言う爬虫類を思わせる顔付き。ぼさぼさに乱れた髪の一部は首元で何十にも巻かれ、マフラーのようになっている。
デザームとイプシロンが投げかける侮蔑の視線を蓮は丁寧に睨み返しながら、歩く。怖いのか木暮は、蓮の足元にぴったりとくっつきながら、おずおずとイプシロンの顔を眺めていた。蓮が円堂の真後ろに立つと、円堂は振り向き、心配そうな顔で口を開いた。
「白鳥、今日は身体の方は大丈夫なのか?」
仲間たちも蓮を気遣うような視線を送り、蓮はみなの優しさに心が震えた。不思議なことに今日の体調は優れているから、力が出せそうだ。蓮は自信に満ちた表情で、はっきりとした声で答え、好戦的な光を目に宿してイプシロンを見やる。
「うん。これはいつもより戦いやすそうだ」
「でも無理すんなよ。つらかったら、いつでも言ってくれていいんだからな?」
「大丈夫」
蓮が力強く断言すると、聞き覚えのある含み笑いが聞こえた。声の方を振り向くと、あざ笑うような顔をした吹雪——いや瞳がオレンジになっているからアツヤ、がいた。アツヤを発見した途端、蓮の顔が強張る。柔らかい笑みがみるみるうちに蓮らしくない、警戒心に満ち溢れたものへと変貌する。蓮の態度に雷門サッカー部に小さなどよめきが駆け抜けた。
「よお、白鳥。倒れてお荷物になるなよ」
「余計なお世話だ。おまえは攻めることだけに集中しろ」
からかうようにアツヤが言って、蓮は口調を荒くしながらアツヤに鋭い視線を送った。吹雪(アツヤ)と蓮の間にピリピリとした空気が流れていることに、雷門サッカー部の面々は、ただただ疑問符を浮かべることしかできなかった。隣り合ったもの同士でどうしたんだ? と耳打ちをしあっても、誰も何もわからなかった。そのうち円堂が二人をなだめようと近づき、
「みんな、作戦を伝えるから集まって」
瞳子に集合の指示を出され、アツヤは挑発するように蓮に笑いかけ、蓮はすました顔をしてアツヤに背を向けて通り過ぎた。イライラしたように大またかつ早足で歩く蓮に染岡が近づき、小声で話しかける。
「おまえ、吹雪のこと嫌いなのか?」
「FWの吹雪は嫌いだ。でもDFの吹雪は好きだ」
蓮はアツヤを睨みながら小声で答える。
仲間たちは”士郎”と”アツヤ”の区別がついていない。相談しても無駄だろう。
何故か自分だけにあのような態度をとるアツヤ。瞳を覗き込んだときの恐怖感は今も忘れられない。あいつだけは理解できない。あいつだけは信じられないんだ。
蓮と春奈は今までのいきさつを聞いた。
イプシロンは急にグラウンドに現れ、漫遊寺サッカー部に勝負を挑んだのだと言う。
しかし漫遊寺サッカー部は、『サッカーはあくまで修行。勝負は受けかねない』と自身らの信条で断った。だがイプシロンは『断るのなら、敗北宣言をしたのも同然だ』と学校破壊を始めた。蓮たちが一番初めに聞いたのはその音だったのだ。
そして当然の流れで、円堂たちが漫遊寺に変わり試合を受ける羽目になった。
漫遊寺の生徒は、遠巻きに校舎の影から雷門イレブンを見やっていた。その視線には応援する気持ちが込められたものと、勝てるかどうか半信半疑、と言った物が混ざっている。
学校を破壊するような地球外生命体に一般人が勝てるか、と言う疑問を覚えても無理はないだろう。
瞳子の指示で雷門イレブンはそれぞれのポジションに着く。蓮は瞳子の指示で、右サイドのMFの役職に置かれた。そのわけは木暮。
春奈が必死に懇願し、晴れて木暮は雷門のDFとして試合に出られたというわけだ。雷門のユニフォームを身にまとう木暮はなにやら緊張の面持ちでいまいち頼りない。そして足が小さく震えていた。
対するイプシロンは余裕綽々だった。前線に立つ青い髪を扇風機のようなおだんごにした少女——マキュアは振り向いて、ゴールに立つデザームに甘ったるい声で質問を投げかける。
「ねぇデザーム様。あたしたち“エネルギー”0だけど、“チャージ”なしで大丈夫かなぁ?」
「マキュア。無駄口を叩くな」
デザームに叱られたマキュアは、はぁ〜いと間の抜けた返事をして前を向いた。
今の会話を鬼道は、はっきりと聞いていた。ゴーグルの奥にある切れ長の赤い瞳が細められ、『天才ゲームメイカー』と呼ばれる優れた頭脳がわずかな言葉に疑問を呈する。
(“エネルギー”だと?)
だが考えを邪魔するように試合開始のホイッスルが鳴らされた。染岡がセンターラインに置かれたボールをタッチし、アツヤに。
次の瞬間、アツヤはドリブルの体制に入る。そのまま持ち前のスピードでイプシロンのMF,DFを一気に抜きさった。いや抜きさる、は違うか。
イプシロンのMF・DFはアツヤに邪魔しようと近づく素振りは見せるものの、何もしない。
アツヤがゴール前へと進んでいくのを黙って見送っているのだ。
——確実に実力を測っている。そのことに気が付いた蓮は前に進みながら、舌をかんだ。そんな中でも時間は流れる。
アツヤはデザームと一対一と言うまたとないチャンスを作り出していた。円堂がゴール前から大きな声で声援を送る。デザームが不適に笑い、アツヤは地面に手をつけて両足を広げる。とたん寒気がしてきた。空気が渦を巻き、風が低く唸る音が聞こえる。
「吹き荒れろ! <エターナル・ブリザード>!」
アツヤの雄たけびと共に、冷気を纏った氷塊がデザームに襲い掛かる。氷塊が日の光を受けてきらめく中、デザームは嘲笑を浮かべた。飛んできた氷塊に向かい、すっと片手を差し出す。まるで普通のシュートを止めるかのように。
「なっ」
小さくアツヤが驚きの声を上げる中、デザームの掌と凍りついたボールがぶつかり合う。氷のボールはデザームの掌に収まった途端、姿を一瞬で水に変えた。しゅーっとスチームに似た音が立ち、白い煙と共に水滴がデザームのスパイクを濡らした。
雷門イレブンの誰もが、愕然とした。この光景を信じられなかった。
「……<エターナル・ブリザード>が片手で止められた」
蓮が呆然と呟く中、デザームは大きく目を見開くアツヤに笑いかける。
「これが雷門最強の必殺技か。笑わせる」
「なんだと!」
「イプシロンの戦士たちよ! 反撃だ!」
デザームは大きく振りかぶり、目の前にいたDFへとボールを出す。しかし、そのボールはDFに届くことはなかった。
「そうはさせないよ!」
近くにいた蓮がすぐさまDFの前に立ち、すばやくボールを奪い取ったからだ。すぐさま辺りを見た渡すが、染岡にもアツヤにもイプシロンの選手が張り付いていて、パスを出せない。
無理をするなと言われたがやるしかないようだ。倒れる覚悟を決めると、蓮は右足を後方に振り上げて、シュート体制に入る。
「久々にシュートをうってやるよ! <ホーリー・ウィング>!」
蓮がボールを蹴った瞬間、ボールの周りに多くの発行する白い羽が現れた。白い羽はまるで自分の意思を持つかのように軸をデザームのほうへと向け、ボールと共に矢のように降り注ぐ。身体の力が一気に抜け、視界が揺らぐ。
大した威力がないことをデザームはわかっているのか、不敵な笑みを浮かべた。
「ならばこの一撃でゲームは終了だ」
「え?」
デザームが言い放った刹那。
気づくと蓮は、身体を吹き飛ばされ、地面に叩きつけられていた。痛む身体を擦りながら上半身を起こすと、雷門サッカー部の面々が悲鳴を上げて宙に身体を持ち上げられている光景が視界に飛び込んできた。その原因は、赤いオーラを纏ったボール。
槍か何かか。先端を尖らせ、槍のような形になったボールが地面をえぐりながら、円堂の元へと近づく。
止めたいが、この位置では間に合わない。とうとう壁山が吹っ飛び、残るは木暮一人。しかし、彼は逃げていた。ボールが進むのと同方向、つまりは円堂の元に。必死に走っているようだが、とうとうこけてしまい、赤いオーラを纏ったボールに追いつかれた。
蓮は無意識に木暮の名を叫び——固まった。
こけて逆立ちになった木暮が両足でボールをはさみ、その体制のままこまのように回り始めたのだ。
吹き飛ばされることもなく、むしろボールの方が木暮の回転と共に赤い光を弱まらせていく。やがて木暮が力尽きたように、回転をやめて足から地面に倒れた。木暮の足から零れた、ただのサッカーボールが、地面に落ちて何回か跳ねて止まる。そして辺りを見渡すと、
「イプシロンが、消えた?」
イプシロンの姿は忽然と消えていた。
〜つづく〜
なんか無理やりww
薔薇結晶さん遅れてすいませんでした!次章でも出しますので活躍はもう少しお待ちを^^;