二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜久々本編☆ ( No.320 )
- 日時: 2011/03/12 10:44
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
- 参照: 研崎=私にとっては羽崎なのだよ
「壊す必要があるって、北海道で言っていた“大切なもの”のこと?」
「ああ、そうだ」
涼野が首肯し、蓮はなおも問いを重ねる。
「せっかく取り戻しかかっているのに、壊す必要があるの?」
「ああ、そうだ」
「風介はどっちが大切なの?」
「……わからない」
答えると、涼野は口ごもる。本当に葛藤している様子が傍目に取れて、蓮は心を痛めた。——その原因を知らずに。
「一位になりたいのは事実だな。だが、“大切なもの”を壊すのも怖いのだ」
「オレは……別に」
南雲は脇で言葉を濁していた。二人にとって大切な友人でもいるのかなと蓮は考え、
「その“大切なもの”、壊したらどうなるの?」
恐る恐る蓮が聞くと、涼野はしっかりと蓮を見つめ、落ち着いた声音で答える。
「恐らく、二度と元には戻らないだろう。永久(とわ)に戻ることはない。一位になるのはいつでも可能だろう。しかし、こちらは失ってしまえば永遠に帰ってこない」
蓮は頭の中で次にどんな言葉を紡げばよいか悩んでいた。
単なる人生相談ではないのだ。決定しだいでは涼野と南雲が大きく後悔するかもしれない。そう思うと、尚更(なおさら)下手なことは言いたくない。
「キミならどうする?」
「……え?」
いきなり話を振られた蓮はびっくりして現実に戻った。
涼野が青緑の瞳で蓮を見据えている。
その瞳にからかいや冗談といった類(たぐい)のものはなく、真剣な瞳そのものだ。そして瞳同様真剣な声で、
「目の前に見える利益と、自分にとって“大切な何か”。……表現が悪いな。こうならどうだ? 目の前に財宝がある。しかし、財宝をとるには仲間を殺さなければならない。どちらかを選ばなければならないとしたら、キミならどちらを望む?」
上手い答えが見つからず助けを求めるように南雲に目をやると、南雲も蓮の答えを聞こうとするかのように身を乗り出し、金色の瞳で蓮をじっと見つめていた。蓮は困った顔で交互に二人を見やると、仕方なしに自分の考えを述べ始める。
「えっと、僕なら、“大切な何か”を壊すのが怖くて、えっと仲間を殺すのが怖くて……きっと逃げてしまうと、仲間と共に財宝を捨てて逃げてしまうと思う。僕はそう言う臆病な人間だから」
苦笑すると、蓮は景色に目をむけ、手すりを掴んだ。風が吹いて、三人の前髪を揺らした。
周りにいる人間の顔振りはだいぶ変わり、男子中学生3人でなにやら話をしている光景は、明らかに浮いていた。外人らしい人間が興味深そうに三人を観察していた。
「けど、人は追い込まれると変わる。僕だって地理は大嫌いだけど、テスト前はかなり勉強して、赤点以上は取ろうとするしね。——それと同じで、例えば親から期待がかかっていてさ、レギュラーになれ、とか言われたらその“大切なもの”を壊すかも。あ、財宝で言うとだな。親が病気で大金が必要とかそう言う理由があれば、仲間をやってしまうかもしれない。人は状況によって、すぐに変わってしまうから」
昔、蓮は母を喜ばせようとして取ってはいけないと言われた公園の花を摘んだことがある。
あの年でやってはいけないと分かっていたはずなのに、悪いことをした。ルールを守る大人しい子が、一日でいたずら小僧に様変わり。このくらいなら軽いものだが、人が良くも悪くも簡単に変わることを蓮はよく知っていた。——そう、自分一人を置き去りにし、海に身を投げた親がそうなのだから。
親のことを思い出した蓮は、自然と表情が曇り始めた。三人の間には表現に困る重い空気。だが、そこへ空気を吹っ飛ばすような明るいノリの声が聞こえた。
「晴矢様ぁ!」
「き、灸?」
南雲がその人間の名を呼んで口をあんぐりと開け、涼野と蓮が瞠目する中、灸が観光客を左右に押しやりながら強引にこちらに近づいてきた。押しやられた観光客は少々迷惑そうである。
狐の瞳に似た白い瞳。中には黒い線がある。無造作に跳ねた赤い髪。戦国時代に出てきそうな赤い紐で一つにまとめている。走るたび、その赤い髪が揺れた。
もう少し手入れすれば可愛いのに、と蓮は内心で感想を述べる。Tシャツにジーパンと言うラフな格好で男のようだが、小さな胸のふくらみを蓮は見逃していなかった。灸はどかどかと南雲に近づくと、
「どこをほっつき歩いているんですか! むー……」
南雲に片手で口をふさがれた。さらにもう片方の手で抱き込むように身体を拘束された。状況が読めない蓮は呆然とし、涼野はいつものことだ、と蓮に説明をしていた。
灸は手足をばたつかせて抵抗し、南雲はそれをめんどくさそうに顔をしかめた。蓮に引きつった笑みを向ける。
「す、すまねぇな蓮! オレたち急用が……おら、帰るぞ灸」
「えー! 俺も蓮さんと話したいです!」
言いながら南雲は、嫌がる灸の両手を掴んで、かなり強引に引っ張っていった。駄々をこねる子供を無理やり引っ張る親のようだ。蓮は呆気にとられてただ見つめることしかできなかった。
「またすぐにでも会おう。すまない」
「あ、大丈夫だよ。また会おうね」
涼野が短く詫びを入れ、蓮は笑顔で遠ざかる三人の背中を見送った。
「壊さなければならない大切な人ってあの子かな?」
それから清水寺から離れた住宅街で大きな怒声が響いた。雷が落ちるような大音量で、散歩中の犬が哀れなことに気絶した。辺りの住人は窓の鍵を閉めるなり、耳を塞いだりする。
「こらぁぁああ! 灸てめーっ! 何しにきやがった!」
「すいません! すいません! 俺はただ、お二人を呼びにきただけですよぉーっ! 研崎が呼んでいるんです!」
今にも殴りそうな勢いの南雲を前に、灸はひたすら平謝り。言い訳をいくつ並べても、南雲には通じそうにない。南雲はますます目を吊り上げ、興奮して言い募る。
「空気を読め! オレと風介の正体が蓮にばれたらどうするつもりだ!」
「え、晴矢様が実はエイリア学園、マスターランクチーム『プロミネンス』のキャプテンで、風介様が同ランク『ダイヤモンドダスト』のキャプテンだってこと、言っていなかったんですか!?」
驚いて灸が零した言葉に、南雲と涼野は辺りを見渡す。幸いなことに蓮も雷門中サッカー部もいない。いるのは、黒いハト一匹。金色の瞳を輝かせ、じっと三人を見下ろしている。
「だから、でかい声で言うなって何度言えばわかるんだ!」
同時刻。清水寺の土産物屋と土産物屋の間に二人の少女がいた。こんな狭い場所にいるのも怪しいが、彼らの瞳はずっとある人物を追っていた。——土産物屋の前を駆け抜ける蓮の姿を。
「ねえ、レアン」
「なに、クララ?」
レアンと呼ばれた少女が不機嫌そうな声で尋ねる。あまり仲はよくないらしい。
「ガゼル様とバーン様の幼馴染……ちょっとムカつくと思わないかしら?」
クララが目の前を通り過ぎていく蓮を憎憎しげに見つめながら呟いて、レアンは鼻で笑う。
「ふ〜ん。あなたとわたし。珍しく気が合うのね」
「嫌だけど、プロミネンスに相談があるのよ」
「なあに? ダイヤモンドダストさん」
クララは長いことレアンの耳に何やら耳打ちをしていた。
蓮は彼らの前で塔子と合流し、何やら楽しげに話しながらクララとレアンから遠ざかっていく。レアンはその背中を見つめながら、
「・・・・・・ふふ。面白そうね」
暗闇の中で笑った。
〜四章完〜
やっと四章おわったぁぁぁあああ!夢幻さんのオリキャラも初登場v本当に短編うっちゃらかして申し訳ないです;;必ず書きますorz
ちなみに解説〜南雲と涼野が言っている壊すべきものは「蓮との絆」。
永久に帰ってこないというのは、涼野の思いすぎみたいな感じです。蓮だったらきっと許してくれない。そんな悲しい心情があります;;
果てさてレアンとクララの企みは……?
さあて……佐久間と源田書けるかなぁ^^;初書きなので、キャラ崩壊の予感がします;;