二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.35 )
日時: 2010/06/22 16:19
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: XHLJtWbQ)

 翌朝——よく晴れ渡った空の元、キャラバンは高速道路を進んでいく。
 辺りの景色も山が多くなってきた。古株さんの話によると、もうすぐ奈良に着くとのことだ。その中で。

「白鳥! すげ〜量の菓子だな……」

 隣の席から覗き込む円堂があんぐりと口をあけた。それは昨晩涼野が詫びだと言っていた袋の中身のせいである。
 袋の中はとにかく大量の菓子袋だらけであった。みんなでつまめそうな子袋入りの菓子から、グミにポテトチップスとてんこもり。値段から言えばあのせんべいと同等はありそうだが、とても一人で食えるような量ではない。

「風介のやつ……何を考えているんだ?」
「そのお菓子、みんなで分けたらどうだ?」

 風介への文句を言っていたが、それは後ろから話しかけてきた風丸の声に消されてしまった。

「お菓子! そうッス! 先輩一人じめなんてひどいッス!」

 その声に続くように、かなりふくよかな体格で、よくふくらんだあんぱんのような顔。目はだるまのように丸く、動物のような印象を与える。それと顔に貼りつくように生える緑の短い髪を持つ後輩——壁山 塀五郎(かべやま へいごろう)が声を上げた。

「だな。全部一人で食べるつもりだったのか?」
「いや〜景品だよ。そう景品。くじ引きで当たったんだ」
「はぁ……お菓子が景品なら、俺も夜にやりに行けばよかったッス」

 適当ないいわけをすると、壁山が崩れるように席に座った。思い切り座ったので、バスが少し揺れた気がした。

「あはは……分けてあげるから元気だしなよ」

 蓮がそう言うと、壁山は目に星を宿して拳を天に突き上げた。

「やったッス〜!」

 みなの笑い声を乗せ、キャラバンは西に進んでいく。

「…………」

 白くツンツンとチューリップのように逆立つ髪と、黒いツリ目を持つ少年——豪炎寺 修也(ごうえんじ しゅうや)一人を除いては。

 それから数時間が立ち、キャラバンは奈良の地に到着した。
 今は市街地を走っているためか、歴史の教科書で習ったような遺跡がところどころに見られ、一年生数人がはしゃいで夏未にしかられた。そんな光景を見ながら蓮はぽつりと一言。

「やっぱり東に来ると違うね。もっとあったかいし、空気もなんか違う気がする」
「……白鳥。奈良県の周りの県と府を全部言ってみろ」
「え〜っと。青森県と沖縄県と名古屋県? あと大阪府かな?」
「…………」



 キャラバンは奈良のシカ公園の駐車場に止まった。外に出ると東京より少しばかり暖かい空気に身を包まれた。

「さっそく財前総理がさらわれた現場に向かうわよ」

 瞳子の一言で、一同は公園の中に足を進めた。
 中は、どこまでも広がる鮮やかな緑の芝生が広がる。今は桜の季節であるためか、ピンク色の桜が空いっぱいに両腕を広げていてグリーンのコントラストが美しい。さらにあちこちにいる鹿が、アクセントとなり風景をいっそう盛り上げてくれている。
 辺りを見ると黒いスーツ姿でなおかついかつい面持ちの男たちがぎろりとした目つきで辺りをうかがっているのが見えてきた。

「ひぇええ〜おっかないッス」

 怖がりな壁山が身を震わせながら、頭を抱えた。

「…ッ」

 その横で風丸が顔をゆがめ、一度足を止めた。

「風丸くん?」
「白鳥。なんでもない気にしないでくれ……」
「……そう? ならいいけど——」

 蓮は再び歩き出す。


「総理が攫われたんだ。仕方がないだろう」
「先を急ぐわよ」

 
 しばらく進むと、ふいに巨大な台座のようなものが見えてくる。
 石段を数段登った先には、銅で作られた立派な台座が鎮座していた。ただその上にあったらしい透明な鉱石で作られた石造は、包丁で野菜を切ったかのようにきれいに真っ二つにされ、今は鹿らしい動物の後ろ足部分だけが無残に残されている。

「ひどいね……」

 像の前で蓮が眉を細めていると、不意に壁山が指を指して声を上げた。

「あああああ! このボール!」

 指の先は台座の石段前を指している。その先に目をやると、サッカーボールが落ちていた。フィーが持っていたものに酷似(こくじ)した白い部分が黒く、黒の部分は黄緑で塗られたサッカーボール。
 一番近くにいた円堂が近づき、持ち上げようと試みるが——

「お、重い」

 沸騰したやかんのような顔をした円堂が何度上に上げようとしても、ボールは何故だかびくともしない。ついには円堂がダウンし、荒い息を吐きながら地面に片ひざをついてしまう。

「く」
「宇宙人め! ようやく尻尾を出したな!」

 円堂の声をさえぎるように、少し低めな少女の声がした。なんのことかと雷門イレブンが声のほうを見やると、黒いスーツをびしっと決めた少女一人と、やはり黒スーツの、しかしさまざまな年齢層の大人たちがずらっと並んでいた。

「へ? 宇宙人ってオレたちがか!?」
「あんたたち以外に誰がいるって言うんだ」

 リーダー、なのかわからないが少女が前に進み出てきた。
 ふんわりとふくらんだ濃いピンク色の髪の上に、青地に中央に白いラインが描かれた青いニット帽を被っている。

「オレたちは宇宙人じゃない!」
「とぼけないでよ。そのボールがなによりの証拠だ。犯人は現場に戻るって言うけど……本当らしいね」

 少女の一方的な言いがかりに雷門イレブンは困惑。サッカーボールに触っただけで犯人扱いなんて失礼だろ! と他にも声をあげたが聞いてもらえそうにない。
 しばらく水掛け論が続いたところで、少女が思いついたように、

「だったらサッカーで証明してみなよ」

 となんだか予想外な提案をしてきた。

「あたしたちSPフィクサーズと戦って……勝てたら、認めてあげる。どう?」
「いいぜ! サッカーでオレたちが宇宙人じゃないってことを証明してやるぜ!」

 円堂は憤っていたためか、すんなりと受け入れてしまう。
 雷門イレブン一同はああ……と困ったようにため息をついた。
 

〜つづく〜