二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.370 )
日時: 2011/03/25 14:07
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: ZgrHCz15)

 木暮がいないことに気がついた円堂たちは、蓮と吹雪が氷付けにした男たちを問いただすことにした。

 男たちが溶ける前に、円堂たちは、ロープを四つ、キャラバンから持ってきた。太さも長さも十分あり、簡単にはほどけないだろう。
 男たちの氷が溶ける頃を見計らい、円堂たちは四つのグループに分かれて、それぞれロープを持って男に襲いかかった。
 数で敵わない男たちは、あっさりと捕えられ、ロープで身体をぐるぐる巻きにされた。手は後ろ手に縛られ、身動きはとれないようだ。

 男たちは、息を切らしながら、頭と足を激しく動かして逃げ出そうとするが、身体がエビのように反るだけだ。動かすタイミングは、計ったように同じで気持ち悪い。やがて疲れたのか、荒い呼吸をしながら、動くのを止める。

 蓮は、転がされた男の顔の近くに歩み寄る。隣に吹雪が並ぶ。
 男は、うつ伏せになっていたが、二人のスパイクが砂利を踏む音に気付くと、頭を持ち上げた。白い歯を剥き出しにした獰猛な顔で二人を睨む。
 蓮も吹雪も全く動じず、穏やかな二人にしては珍しく厳しい視線を、男に送った。

「木暮くんはどこ?」

「ふん。守秘義務だ」

 蓮が腕を組ながら率直に聞いて、男はつんけんした態度で答える。
 残りの三人も円堂たちが問い詰めているが、答えは似たり寄ったりだった。

「じゃあ、何で子供をさらったりしたんだい」

 吹雪が厳しい表情を崩さずに質問を変えると、男はにやりと怪しく笑った。

「気になるんなら、この先にある埠頭ふとうに行きな。そこで、すべてがわかる」

「口が滑ったな」

 揶揄するように蓮が言うと、男はますます嫌な笑みを深くする。

「わざと滑らせてやったのだ。オレたちが警察に捕まろうと、雷門が潰れるのは確実だからな。ははははっ!」

 頭だけを動かして、男は高笑いをした。蓮は睨むように目を細め、吹雪は驚いたのか目を丸くした。
そして、静かな川のせせらぎに混じり——パトカーのサイレンの音が聞こえ初めた。円堂が、知り合いの鬼瓦おにがわら刑事を呼んだのである。

「くっそ。木暮の行方はわからずじまいかよ」

「木暮くん、無事でいて」

 遠くなっていくパトカーを睨みながら、染岡は地団駄を踏んだ。横では、春奈が手を組んで木暮の無事を祈っていた。
 染岡は、八つ当たりに足元にあった小石を一つ掴むと、川に向かって放り投げた。小石は、弧を描きながら川に向かい、僅な水音としぶきを上げて、水の中に消える。
 それを目で追っていた鬼道は顔を上げ、円堂たちの方に振り向いた。

「……やはり、埠頭に行くしかないだろう」

「でも、罠だったらどうするんだ?」

 用心深い風丸が意見し、何人か顔を鬼道から反らした。返り討ちにされたら、という不安の色が顔に出ている。
 悩む鬼道に、蓮が助け船を出す。

「罠でも、手がかりはそれだけだ。可能性があるなら、食いつかなきゃ」

「そうだけど……!」

 風丸は何か言おうとして、口を閉ざした。物言いたげな顔つきで蓮の顔を見ている。

「オレは行くぜ」

 微妙な空気が漂う中、その空気を破るように円堂が声を発した。
 みなの視線が、自然と円堂に集中する。円堂はみなの視線を浴びながら、堂々と断言した。

「だって、仲間のピンチなんだぜ。罠でも、木暮の手がかりになりそうなら、行くべきだ」

「けど、襲われたりしたらどうするんだ?」

 風丸が聞いて、蓮が提案する。

「じゃあ、四人くらいで行ったらどうかな? 少ない方が動きやすそうだし、もし見つかっても、すぐに逃げられるんじゃないかな?」

「確かに大勢で行くより、行動できそうだな」

「白鳥! 頭いいな!」

 納得するように鬼道が呟き、円堂たちが素直に誉め称えた。蓮は、仲間の感心するような声にはにかみ、円堂が高らかに宣言する。

「さあ、木暮を救うぞ!」

 蓮たちは力強い雄叫びと共に拳を天に突き上げた。空は曇り始めていた。

〜つづく〜