二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜え、参照6000? ( No.377 )
日時: 2011/03/28 15:07
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

 影山と鬼道の間には、何かあるのだろう。しかしフットボールフロンティアの時にはいなかったから、理解はできない。
 蓮は地面を蹴り続ける鬼道に近づくと、落ち着いてというように鬼道の両肩を掴んだ。鬼道は地面を蹴るのを止め、顔をバッと上げた。
 ゴーグルの奥の瞳は驚いたように揺れていたが、すぐに怒りの光を宿す。

「……影山ってやる時は徹底的なんだね。ひどいやつだ」

 蓮は鬼道の肩から両手を離し、同調するように言った。鬼道は悔しそうな顔で天を仰ぐ。

「あいつは雷門を倒すことにした後は、世宇子中の名の下に“神のアクア”を作り、そのおかげでようやく逮捕された。だが、あいつはここにいる。あいつの企みは早く止めなくては……!」

 鬼道は鉄扉に近づこうとして、蓮は鬼道が何をしようとしているのか理解する。急いで両腕を伸ばしながら、鬼道の前に回りこむ。鬼道はこの前見せた怒気を孕んだ瞳で、蓮を睨み据えた。
 円堂たちが怖さのあまり身体をびくっと震わせる中、蓮は怖気づかずに強気な顔で鬼道と対峙している。鬼道が睨めば、睨み返す。普段の穏やかな態度からは想像がつかない、強気な態度だ。

「白鳥。そこをどけ! オレは影山と決着をつける必要がある!」

 鬼道が怒鳴り声を張り上げ、蓮は反射的に振り向いた。
やはり声が聞こえたらしく、波止場前をうろついていた男たちが一斉にこちらを向く。
 向かれる前に蓮は鬼道の腕を掴んで、無理矢理円堂たちがいる塀側に連れ込んだ。鬼道が蓮の手を払いのけようとし、蓮は、鬼道を睨みながら非難するような声で意見する。

「一つ聞くけど、僕たちまで捕まったら、木暮くんや他のみんなはどうなるんだよ?」

 その言葉でようやく鬼道は今の事態を思い出したような顔付きになった。「すまない」と短く謝ると、蓮に背を向けて俯いてしまう。
 蓮は鬼道の腕から手を外すと、心配そうな声で鬼道に話しかける。

「鬼道くんどうしたの? 急に焦りだして」

 すると今まで黙っていた円堂が動く。蓮の横に歩み寄ると、鬼道に控えめに声をかける。

「鬼道、白鳥に話してもいいよな?」

 鬼道はみなに背を向けたまま頷いた。背中から喪失感と怒りと悔しさと悲しみと——複雑な感情を感じさせられる。蓮は黙って鬼道を見つめていたが、円堂に向き直る。

「鬼道は元々帝国学園にいたんだ」

「え、帝国学園に?」

 話はこうだった。
 
 両親を早くに亡くした鬼道と春奈は養護施設に引き取られた。その養護施設で、鬼道はサッカーの才能を影山に見出され(みいだされ)、影山が鬼道財閥に養子縁組を推薦し、鬼道は鬼道家に引き取られたのだという。司令塔として育成され、それはサッカーにおいて司令塔であることは、多くの系列企業を束ねることのシミュレーションであるというのが理由らしい。こじつけっぽいと蓮は思ったが、あえて声には出さなかった。
 
 春奈も言っていたが、その後、施設に残された春奈は音無夫婦に引き取られ、二人はバラバラになってしまったのだ。春奈と鬼道の苗字が違うことは気にしてはいたが、こういう悲惨な過去だとは春奈の話を聞くまで蓮は知らなかった。
 春奈はごく普通に育ったのに対して、鬼道はずっと影山にサッカーを教わったのだという。そして当然のごとく帝国学園に入った。相手校を圧倒的な力で捻じ伏せていたらしい。今からは考え付かない。だが、雷門と一戦を交えたことで鬼道は変わる。
 影山が行う行為に疑問を持ち、雷門と再度戦うときには雷門の命を助けたらしい。もし鬼道が口を出さなければ、雷門は鉄骨の下敷きになっていたのだと言う。帝国学園は影山から離反し、自分たちのサッカーで戦った。
 この鉄骨が原因で影山は一度は警察に捕まったらしいが、証拠不足で釈放。今度は世宇子中を率いて、帝国学園を潰した。そして世宇子を倒すため、鬼道は雷門の仲間に——

「…………」

 長い話を聞き終わり、蓮は驚きと戸惑いが混じった顔で鬼道の背中に目をやっていた。風になびく鬼道の青いマントだけが音を立てている。
 鬼道が影山にこだわる理由が分かった気がする。離反したからこそ、逆に悪事を止めたいと思うのだろう。かつてサッカーを関ったからこそ、”悪事”を許せないのだろう。ただ鬼道が影山を拒絶するような態度から察するに、影山との関係を断ち切りたいのかもしれない。

〜つづく〜