二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.38 )
日時: 2010/06/29 15:50
名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: XHLJtWbQ)

 巨シカ像からほんの少し離れた場所に、サッカーフィールドがあった。広さはごく一般的な広さ。フィールドの周りを残し芝生はすべて刈られ、砂地が顔を出している。ラインマークは、学校によくある石灰で書かれたものらしく、ところどころ消えかかっていた。

「ところで、どうしてオレたちはサッカーやるんだ?」

 こちら側のゴールの前で円堂が首をかしげた。怒ることに夢中で、ほかの事は気にしていなかったらしい。円堂の発言を聞いた夏未が少し眉間に顔を寄せながら、

「SPフィクサーズは総理を守るためのボディガード……まあ偉い人を守る警察のようなものですって。——サッカー好きな総理の影響で、サッカーで体を鍛えているそうよ」
「……ずいぶん無茶だね。サッカーだけで政府要人を守るなんて」
「まあ、いいんじゃないか」

 少し間があき、鬼道が口を開く。

「監督。今回の作戦は?」
「そうね。きみたちの好きなようにやってようだい」

 またもしごくあっさりとそんな一言。チーム内に小さなどよめきの嵐が起きる。あるものは声を上げ、あるものは無言のまま。だが大抵は不安げな表情をし、互いに顔を見やりながら意見を交わしている。

「お、おい。大丈夫なのか?」
「作戦なしで勝てるんッスか!?」

 そんな中でも鬼道ただ一人だけ顔色をまったく変えず、冷静な口調で言う。

「監督は、オレたちのプレイが見たいんだろう」
「そ。新しい子も加わって、あなたたちのプレーは変わるはず。力を見せて頂戴」

 そして瞳子は蓮へと向き直る。

「……白鳥くんは、下がっていなさい」
「そっか。体力がな……」

 無遠慮な壁山が口を開きかけ、チームからあちこち冷たい視線を投げかけられ、慌てて口を閉じた。蓮へとびくしくしながら視線を向ける。蓮は少し微笑み、気にしてないよ。と声をかける。
 チームは押し黙った。蓮はわかっていたとはいえ、改めて自分がお荷物であることを悟らされる。
 10分しかプレイできない選手など、本来なら捨てられてしまうのだろう。それでも円堂くんは、雷門のみんなは自分をチームに入れてくれた。監督がどのタイミングで入れてくれるかはわからないが、出れたら頑張ろう。時間が長くなるのを待っているチームのために、精一杯やろう。

「わかりました」

 はっきりと蓮は頷くと、チームメイトをぐるりと見渡して、

「みんな頑張ってきてくれよ!」

 と声援を送った。みんなは、白鳥待っているぜ。後で頑張れよ、等と逆に励ましてくれた。そしてフィールドの中へと進んでいく。

 試合は雷門の劣勢(れっせい)だった。
 パスをまわそうとして、SP側にボールを奪われてしまう。ドリブルをしていても、カットされてしまう。サッカーの優勝校とは思えない、凡ミスが目立つ。特に風丸、染岡、壁山の三人が誰よりも反応が遅い。時々苦痛に顔をゆがめ、足をさすっている。その光景をフィールドの中央部分の外側にいる蓮は見て、

「風丸くんたち……足、怪我しているんじゃあ」

 独り言のように呟く。瞳子の表情が少し険しくなったが、蓮は気がついていなかった。

「かもしれないわね。傘美野でのケガは、おそらくまだ完治していないはず。ぴんぴんしているのは、白鳥くんと、友達に会いに行っていた、一之瀬くん、土門くんくらいでしょう」
「え! 怪我したままプレイして大丈夫なのか?」
「…………」

 夏未からの答えはなかった。そして同時に——時計を見ていた古株さんが、鋭くホイッスルを吹き鳴らす。スコアは、0−0のままであった。

「みんな。後半からの指示を伝えるわよ」

 休憩時間の時、不意に瞳子監督が口を開いた。スポーツドリンクを飲んでいたり、ベンチに座って休んでいたりしたメンバーは、視線を瞳子に集中させる。

「風丸くん、壁山くん、染岡くん。後半はベンチに下がっていなさい」

 ざわざわっと再びどよめきの嵐。納得がいかないのか、3人とも瞳子に食って掛かる。

「監督! どういうことだ!」
「そうっス! ただでさえ人数が少ないのに!」
「オレたちが抜けたら、チームは余計戦いづらくなりますよ!」

 いつも通り表情をまったく変えないまま瞳子は、

「……白鳥くん。風丸くんの位置に入りなさい」
「え? DFってことですか?」

 またチームが混乱するようなことを言った。白鳥はFWじゃないのか? なんでDFなんだ? とあちこちでクエスチョンマークが飛び交う。
 それは蓮自身も同じである。小学校のころ——倒れる前は、ずっとFWをこなしてきた。エースストライカーとまでは行かないが、そこそこの活躍はしていた覚えがある。現におとといの試合だって、あいつら点を取れた。それなのに……何故?

「作戦は以上よ」
「でも監督!」
「お〜い! そろそろ後半の時間じゃぞ」

 古株さんから声がかかり、しぶしぶメンバーはフィールドの中へと進んでいく。蓮は、ジャージを脱ぎ、雷門の鮮やかなユニフォームに袖を通していく。




〜つづく〜
かきましたぁ^^私はポジションではFWが好きです。吹雪やガゼル、かっこいいですよね。