二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.394 )
- 日時: 2011/04/02 14:12
- 名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 8gvA/W.A)
食堂に戻った南雲と涼野は、アフロディを交え蓮を元気づける具体的な方法について議論していた。しかし、そううまくはいかず。
「うーん」
三人分の悶える声が零れた。アフロディたちは、腕を組んで難しい顔をしている。
気を効かせたチャンスゥが、三人の前に湯気がたっているマグカップを置く。それに目もくれず、アフロディは頭を抱えて悶えていた。南雲は、やけくそになってマグカップを勢いよく傾けた。涼野は、蓮が心配なのか天井をじっと見つめていた。
蓮を元気づけようと簡単に言ったものの、いい考えはなかなか出てこなかった。アフロディ、南雲、涼野は己の知恵を絞るものの、論点を迷走するばかり。最終的には、〈カオスブレイク〉を蓮にぶつければいいとか、血迷った発言が飛び出す始末だ。
三人寄れば文殊の知恵とか言う格言があるが、それを言った人間を問いただしたくなる迷いようだ。
見兼ねたチャンスゥが、アフロディたちに何度か助言しようとした。が、三人は自分たちでやると言って、チャンスゥが口を挟むのを嫌がる。普段、試合などで頭を使うことは、蓮やチャンスゥにやらせる三人が、自分たちだけで解決しようとすることに、チャンスゥは驚愕した。
(——これは彼ら自身で解決しなければならない問題ですね)
これは、試合ではない。試合を組み立てるゲームメイカーは、必要ないのだ。否、彼ら自身で組み立てなければならない"試合"なのだ。相手の心理を的確に把握し、今の状況を的確に判断する。難しいことだが、アフロディたちには出来ると言う確信があった。チャンスゥは立ち上がると、静かに食堂から出た。
*
時計の長針が一周し、外にはすっかり夜の帳が降りていた。チャンスゥが注いでくれたお茶は、すっかりぬるくなってしまっていた。三つとも、ほとんど減っていない。
食堂はエアコンが聞いているので、心地よい暖かさが保たれていた。
食堂に三人だけ残るアフロディたちは、すっかり気疲れしていた。アフロディは机に突っ伏し、南雲はそっくり返り、涼野は上に身体を伸ばしていた。三人とも顔に疲労の色が見えている。
「なあ、風介、アフロディ。誕生日ってなんなんだ?」
南雲が体勢を前に戻しながら言葉を発し、アフロディが顔を上げて南雲を見る。その際、邪魔な髪は後ろに払った。
「南雲、いきなりどうしたんだい?」
涼野とアフロディの不思議そうな視線を受けた南雲は、バツが悪そうに二人から視線を逸らした。
「誕生日って、なんなのかなぁって思っただけだよ。オレたちは当たり前に"嬉しい日"だと思うけど、蓮を見ると誕生日はなんだって思うんだよ」
「生まれた日をご馳走を食べたりして家族や友人と祝うことだろう?」
アフロディがさも当然そうに答えて、南雲は肩を竦める。
「んな当たり前のことは、龍でもわかるぜ。じゃあ聞くけど、なんで祝うんだよ?」
「う〜ん。親なら『生まれてきてくれてありがとう』って、メッセージを伝えるためだな。友達は、『一緒にいてくれてありがとう』かな」
何とか答えを捻り出したアフロディ。すると、今の今まで黙っていた涼野が、急に口を開き、
「……アフロディ。キミは初めになんといった?」
「え? 『生まれてきてくれてありがとう』?」
戸惑いながらアフロディが答えると、涼野は何やら思いついたような表情で、二人の顔を交互に眺める。
「それだ。蓮は自分が生まれたことを、悪いことだと思い込んでいる。今の言葉をかければ、もしかすると」
そこまで聞くと、アフロディは得心が行く顔つきになった。
「なるほど。”生まれた”と言う、行為自体を祝福するんだね?」
「……なんか恥ずかしいな」
しかし南雲は恥ずかしがり、言うのをしぶっている。いくら幼馴染みでも、『生まれて来てくれてありがとう』等とは、面と向かっていいずらい。南雲は、どうすればよいか考え込んでいた。その様子を見つめていた涼野は、南雲の方に身体を向けると、話を切り出す。
〜つづく〜