二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナズマイレブン】〜試練 ( No.407 )
- 日時: 2011/04/18 15:03
- 名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: 2.TlWg7X)
- 参照: 最後にgdgd解説来ます。
「ただいま」
そこへ、アフロディが戻ってきた。少し大きめな白い箱を両手でしっかりと抱えている。南雲たちを避けるようにしてテーブルの前に動くと、箱をテーブルの上に置いた。
南雲と涼野はすぐさまテーブルを取り囲んで足を崩し、箱の蓋を開けようとした。だが、アフロディが箱をかっさらう。南雲と涼野は、アフロディを睨んだ。蓮は、苦笑いを浮かべて、事態の行方を見守っている。
「早く食わせろ」
「そうだ。けちだぞ」
南雲と涼野が抗議すると、アフロディはわざとらしく大きなため息をついて正座した。箱を机に置きながら、
「南雲、涼野。今日の主役は誰かわかっているかい?」
蓮に視線を向けた。南雲と涼野も誘われるように蓮に顔を向ける。あ、と同時に声を漏らした。途端、南雲と涼野は笑みを作り、蓮を手招きする。早く箱の中のものを食べたいようだ。非情に単純でわかりやすい連中である。
蓮はテーブルの前に、南雲と涼野の間に座ると、向かいのアフロディが箱を開けて、と目で合図を送ってくる。南雲と涼野に至っては、テーブルから身を乗りだし、そわそわしながら箱が開かれるのを待っている。蓮が箱を開けないのがじれったいらしく、急かすような視線を投げ掛けてくる。
蓮は幼馴染みの要望に応え、白い箱をそっと開けた。中には、生クリームのデコレーションケーキが鎮座していた。上にはブルーベリーやメロン、さくらんぼが散らされ、イチゴジャムがたっぷりとかけられている。デパートにありそうな高級なケーキだと思って、蓋を見ると、韓国でも名を馳せる有名なケーキ屋の名前。
「うわぁ、おいしそう」
蓮は喜びと驚愕が混じった声をあげた。すると、アフロディが微笑みながら、
「ボクたち三人でお金を出しあって買ったんだよ」
「ま、他ならぬ蓮の誕生日だからな。けっこー奮発しちまったぜ」
南雲が得意気に胸を張りながら、
「キミが以前、食べたがっていたからな」
涼野はクールな口調で教えてくれた。
そういえば、以前この店のケーキを食べたいと三人と会話したことがあるが、覚えているとは思わなかった。それだけ気にしていてくれたかと考えると、顔が火照る。頬を赤くしながら、相好を崩していた。
それをアフロディが蓮が照れていることをめざとく発見し、愉快そうに指摘する。
「照れているね。可愛いよ、蓮」
「相変わらず可愛いとか余計な一言が多い」
蓮は文句を言いながら、蓋をテーブルの脇にどかした。それからぽつりと、
「誕生日ってさ」
呟いて、囁く調子で続ける。
「”絆”を確認する日だなって思えた。誰かが僕の側にいるんだあって思える、とても大切な日」
アフロディたちは微笑んで聞いていたが、三人で顔をあわせると息を吸った。
「蓮、お誕生日おめでとう」
三人が声を揃えて蓮を祝福し、蓮は心臓をくすぐられたような快感を覚えた。
祝われることは、こんなにも嬉しいことなんだ。普通の人から見たら当たり前のことなのに、何故だか楽しくて仕方なかった。
今まで嫌だ嫌だと避けてきたものは、こんなに素晴らしいことだったのだ。今日こうして生まれたことを認めてくれる仲間に出会え、その事に気づけた。
”初めて”の言葉は、今まで感じたことがないぬくもりに満ちていた。細胞に染み渡るような優しい響き。胸に感謝の念を起こさせる力。言葉の力を感じさせる。昔の日本人は言霊とやらを信仰していたが、あながち嘘ではないと考えさせられる。
こんなにも素晴らしい言葉に釣り合う言葉は何だろう。蓮は、すぐに答えを見つけた。
「みんな、ありがとう!」
とびっきりの笑顔と、とびっきりの感謝の気持ち。
〜終わり〜