二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナズマイレブン】〜試練の戦い〜 ( No.411 )
- 日時: 2011/04/23 18:37
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)
- 参照: クララとレアンの暴言パラダイス①——無意識の加害者
「だ、誰だ!?」
冷気を吹き飛ばすように円堂が叫んだ。
その声に反応するように吹き付けてくる冷気は収まった。しかし、肌をぞくぞくと撫でていく気味の悪い寒さはまだ肌に残っている。それは冷”気”でも、人が放つ”気”のように蓮には思えた。中にいる人間は普通の人間ないことだけは何となく感じ取っていた。
蓮たちは顔をこわばらせながら、扉を乱暴に蹴破り、中に突入する。砂っぽい乾いた空気が喉を直撃し、蓮は咳き込んだ。風丸に背中を擦って介抱され、口を開けたまま立っている鬼道と円堂と同じ方向を見た。
何もない灰色の床を、明り取りの窓から差し込む日差しが、照らしていた。光の中にほこりが舞っている。だが日差しは別のものを、倉庫の奥に浮かび上がらせていた。それは秋や夏未とさほど変わらない少女たちの影。
一人は、以前バーンが纏っていたユニフォームをまとう少女。小さな胸のふくらみと細い腰が可愛らしい。背丈は秋ほどか。オレンジの髪をショートカットにしているが、前髪はカールを描くように渦を巻いていて、かなり独特のヘアスタイルだ。可愛い身体な半面、青い切れ長の瞳は吊り上っていて、きつそうな印象を与える。
もう一人はオレンジの少女よりほんの少し背が低い少女。かなり小柄で、木暮と同じ背丈に見える。濃い青い髪をボブカットにし、もみあげを黄色い髪留めで止めていた。垂れ気味な黒い目に小さな桜色の唇が人形のよう。顔付きは固く、与える印象は冷たい。
二人の少女は蓮たちと目が合うと、待っていたといわんばかりに口を歪めた。蓮たちは緊張のあまり生唾を飲み込む。静かなせいで、その音がはっきりと自分たちの耳に届いた。
「初めまして、かしら。あたしはエイリア学園マスターランクチーム、<プロミネンス>の一員、レアンよ」
「わたしは、同じくエイリア学園マスターランクチーム<ダイヤモンドダスト>の一員、クララ」
オレンジの髪の少女——レアンと、青い髪の少女——クララは、淡々と自己紹介をする。
『イプシロン』に続く新たなエイリア学園チームの登場に、蓮たちは驚きを隠せなかった。そういえば彼らはエイリア学園のチームだと名乗っているが、リーダーや他のメンバーが見当たらないのは何故かと蓮は思ったが、その疑問はすぐに消えた。驚愕の面持ちになりながらも、同時に緊張の面持ちも浮かべ、身構える。
「エイリア学園、オレたちに何のようだ! 木暮を返せ!」
円堂が怒鳴ると、レアンとクララは目を伏せて静かに笑う。蓮は、背筋を寒さが駆け抜けた気がした。
「そうね。返してあげてもいいわ」
「なんだって?」
予想外の言葉に円堂は聞き返すように言葉を漏らす。するとクララは、視線を横に動かし、黒い瞳で見据える。レアンもまた、同じ人物に目を向ける。——風丸の横にいる蓮に。
「あなたが、今すぐ雷門中サッカー部から去るのなら、ね」
落ち着いた声音で、クララはしっかりと蓮の瞳に視線を合わせながら言った。目つきこそ凪のように穏やかであるものの、視線自体は刺々しいものだった。目が合った瞬間に初めて感じ取れる、地雷のようなものだ。憎悪や怒りがこもった視線に蓮はたじろぎそうになるが、負けじとレアンとクララを睨み返す。
「何を言っているんだ」
蓮の低い声に、レアンとクララは蓮に向ける視線をますます厳しくした。蓮も目つきを鋭くする。蓮とレアン、クララの間には見えない空気がぴんと張り詰め、他のものが近づくことを拒んでいた。
しばらく無言のにらみ合いが続いていたが、クララが口を開く。
「あなたがいると目障りなの」
囁くような小さな声。けれど言葉はとても恐ろしい。円堂がクララに食って掛かろうとして、蓮が手を出して制する。風丸も鬼道も憤っているらしく、クララを睨む。続いてレアンが、
「あんたが雷門にいるとね、困る”お方”たちが居るのよ」
クララの言葉は無視することにするが、レアンの言葉が引っかかる。僕が雷門に居ると困る人って誰だ?
「それって、誰?」
「あなたに教える義務はないわ。ただ、一つだけ教えてあげる。あなたはね、その”お方”たちをとても傷つけているの」
馬鹿にするような口調で言っていた言葉を切ると、クララは垂れている目を吊り上げる。今まで違い、無表情だった顔に怒りがはっきりと刻まれていた。瞳にも憎しみや怒りの感情がはっきりと見え、今までの冷静さが嘘のように思われる。
「あなたはなんにも知らずに、”お方”たちを悩ませているの。少しは罪の意識を持っているのかしら!? 答えなさいよ!」
今までの冷静な口調とは打って変わり、激しい口調。唾が飛んできそうな勢いで、恐ろしい剣幕で蓮を問いただす。”気”が風となって身体に吹き付ける。円堂たちはクララの雰囲気に圧倒され、その場で立ち尽くしていた。蓮だけは、円堂たちの前に出た。円藤たちを守るように、腕を組んで仁王立ちになり、クララやレアンと対峙する。
「…………」
何、わけの分からないことを言っているんだと言い返すように、クララに冷めた視線を送る。誰を悩ませているのかは知らないが、こいつらの言うことはいちゃもんの可能性が高い。根拠のないでたらめだ。嘘だけで、雷門をやめるわけなんてない。
クララは呆れた顔付きで笑った。冷たい顔が哀れみを送ってくる。
「あなたは愚者ね。雷門中のサッカーは『仲間ごっこ』だってことに気づいていないんだもの」
「『仲間ごっこ』?」
蓮は思わず尋ね返した。クララはレアンに目配せし、レアンが哀れむように——見下すようにせせら笑ってきた。
「あんた、エイリア学園との戦いで倒れてばかりで、大して活躍していないそうじゃない。試合で役に立てないような人が、どうして雷門にいるの?」
「……それは」
蓮は頭に言葉が出てこず、口を閉ざしてしまう。レアンは、蓮の言葉尻を捕らえて畳み掛けてきた。クララと同じく、その瞳には強すぎる負の感情が渦巻いている。
「あら、咄嗟に答えられないの? やっぱり『仲間ごっこ』ね。どうせ『今は無理でも後で何とかなる』とか、言われていそうだけれど——それは、あなたを傷つけないための”嘘”。本当はみんな、あなたみたいに成長の見込みがない人は、やめてほしいと思っているの。でも、言えば双方の気分を害することになるわ。だから言わないの。自分が嫌な思いをしたくないから黙っている……雷門は、そんな自分勝手な人間の集まりよ」
以前に悩んでいたことをぶりかえされ、それでも図星なことを指摘され、蓮は悲しくなった。今すぐ消えてしまいたかった。
『試合で役に立てないような人が、どうして雷門にいるの?』と言うレアンの台詞が頭を支配し、何度も反芻する。円堂たちがレアンに噛み付く声も聞こえなくなっていた。
——チームのみんな本当は僕のことをどう思っているんだろう?
倒れるたびに心配そうに優しい声をかけ、介抱してくれる仲間たち。しかし、それは”本心”ではなく、レアンの指摘するとおり”仕方なく”と言う可能性もある。今までもそう感じることはあったが、その可能性は打ち消してきた。本心は嫌だが、”チームメイト”として、仕方なく助けてやっているのかもしれない。早くサッカー部からいなくなってほしいと思われているかもしれない。
「……僕は、僕は……」
蓮は頭を抱え、唸るような声を発した。何かを堪えるように唇をぎゅっと噛み、瞳を閉じている。身体が不安げに揺れていた。円堂たちが蓮に駆け寄り、三人で蓮の名前を呼ぶ。四人の様子を眺め、レアンとクララは顔を元の静かなものに戻した。レアンがすうっと短く息を吸い、
「ここまで言えば分かるでしょう?」
静かな声で問う。蓮ははっとした顔でレアンを見て、円堂たちは厳しい目つきで応対した。
「さあ消えなさい、白鳥 蓮!」
クララが怒りの炎を目に灯したまま叫んだ。
〜つづく〜
なんかまた親が帰ってきたー!(泣)すいません、コメントはメモッてますから後で携帯から返します。