二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.43 )
日時: 2010/07/20 10:38
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ErINZn8e)

第三章 新しい風の中で

「あたしも円堂たちと一緒に行くんだ!」
「だめです、塔子様!」

 だだをこねる塔子が、スミスにべーと下を出した。そしてすぐに円堂にかけより、

「円堂! さっきのあたしの実力を見ただろ? 雷門イレブンに参加したって足手まといになんかならないだろ?」

 かなり強い口調で円堂に迫る。
 迫られた円堂は少したじろぎながら、そうだな。と軽く返事をした。その返事を聞いた塔子は満足げな表情を浮かべて、胸を張る。

「ほら。円堂だってあたしのことを認めてくれている」
「しかしですね……」

 スミスが渋い顔を浮かべた時、タイミング良く明るいノリの携帯着信音が鳴った。失礼、とスミスは塔子に背中を見せるようにして、少しかがんだ。機密事項の話なのか、声はかなり小さめである。

「えっ! 財前総理が解放された……本当か!」

 急にその声は大きくなり、同時にスミスが手で何かを手早く指示。SPフィクサーズはスミスを残し、四方八方に大慌てで散らばって行った。

「塔子様。一度東京に戻りましょう。財前総理が、先ほど国会議事堂前で見つかったそうです」
「え! パパが……」

 塔子は一度嬉しそうな顔をしたが、すぐに口を真一文字にし、決意に満ちた瞳を見せる。

「だめだ。あたしのせいで、パパは攫われたんだ。申し訳なさすぎて顔なんか見せられない」
「……塔子」

 そっと塔子に歩み寄ると、円堂はポンと塔子の肩に手を置いた。

「財前総理は、きっとお前のこと心配していると思う。だから、会いに行ってやれよ」
「円堂。でもあたし……」

 塔子が困ったように円堂から視線をそらすと、

「塔子さん」

 瞳子と目があった。

「私たちも、一度国会議事堂へ行くわ。財前総理には聞いておきたいことがあるもの。みんな、いいわね?」

 雷門イレブンはしぶしぶ、といった感じで頷く、
 それを見ていた夏未が、そっと蓮に耳打ちをしてい来る。

「豪炎寺くんが外されたことで、みんなは監督に不信感を持っているようね」
「……だっていきなりすぎるだろ」

 蓮も瞳子に聞こえないほど小さな声で悪態をついた。

「エイリアが、次にどこに現れるかわからないからな。少しくらい寄り道してもいいだろ」
「ではみなさん。塔子お嬢様をよろしくお願いいたします」



 深夜。キャラバンは順調に高速を走っていた。関西方面を抜けたとはいえ、窓ガラスの外には都会の鮮やかなネオンが煌々(こうこう)と輝いていて、地上に星座を作っているように思える。

「夕香……夕香って誰なんだろう」

 そんな光景をぼんやりと見ながら、窓枠にひじをついていた蓮がぼやく。
 深夜であるため他のメンバーはすでに眠っており、横では円堂が座席の背もたれによっかかり、穏やかな寝息を立てている。

「豪炎寺くんの妹さんよ。今は入院中なの」
「あれ、監督起きていたんですか?」

 寝ているとばかり思っていた瞳子が独りごとに答えてくれ、蓮はいささか驚いた。

「ところで病院って?」
「彼女は一年前事故にあって、ついこの間目覚めたばかりなの。まだリハビリ中」
「どこの病院にいるんですか?」
「稲妻総合病院に入院しているわ」

 そこまで聞くと蓮は視線を少しの間下に向け、

「……監督。僕だけ、単独行動って許されますか?」
「どういうことかしら」

 瞳子に尋ねられ、蓮は覚悟を決めた顔ではっきりと答える。

「夕香ちゃんに会いに行ってきます。そうすれば、豪炎寺くんがいなくなった理由、わかる気がするんです」
「豪炎寺くんがいなくなった理由を、あなたが調べて何になるのかしら」
「確かに、どうにもならないかもしれない。わからないかもしれない。でも、黙っているのは一番嫌なんです。少しでも糸があるなら、ゴールに続いているかもしれない。わからないなら、知るように努力しろ……そのココロをここで教わりましたから」

 本当は自分がただ知りたいと言うわがままだ。
 彼が夕香と呟いた時の声は、どこか辛そうだった。と、言うことは夕香ちゃんを尋ねればなにかわかるかも。ただそう思っただけのこと。
 反対されると思っていた。

「……いいでしょう」

 少し間が空き、瞳子の許可が出た。
 しかしただし! と強い言葉が続く。

「ただし期限は3日後よ。調査が終わり次第、北海道にある”白恋(はくれん)中学校”に来なさい。3日後までにそこに来なければ、あなたをメンバーから外します」
「解雇通知ですか。3日もあれば十分です」
「じゃあ雷門町のバースターミナルで降ろすわ。今から準備しておきなさい」

 蓮がいそがしく鞄の中身をいじり始め、

「白鳥が一人で北海道まで行けるのか……?」

 その様子を斜め後ろの塔子がじっと見つめていた。

〜つづく〜
次回は夕香ちゃん登場!
ところで私はやたらと深夜のことを描いていますが、最高で4時まで起きていたことがあります。イナイレのスパーク発売日にその時間までやってました。