二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.51 )
日時: 2010/07/28 17:14
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: zz4.lYYr)

しばらく沈黙が流れ、不意に塔子が口を開いた。

「なあ白鳥。夕香ちゃんに豪炎寺のこと、聞いたんだろ?」
「え? 塔子さんが、どうして知っているのさ?」

 蓮が驚いていると、塔子は風景を見つめながら答える。

「実は瞳子監督から『白鳥くんは、放っておくと北海道の大地で凍死していそうだから、迎えに行ってあげてちょうだい』って、こっそりメールが送られてきたんだ。その中にどうして白鳥がいなくなったかも、書いてあったよ。だからあたしパパに会ってから、みんなに適当な言い訳して抜けて来たんだ」
「そっか。お父さんと会ってどうだった?」
「元気そうだったよ。本当に無事でよかった」

 そう話す塔子の横顔は本当に嬉しそうだった。しかしその笑顔はすぐに曇り、

「でも、パパはなにか隠しごとをしているんだ」
「隠しごと?」
「エイリア学園に攫われた時に、何か見せられたらしいんだけど……それがなにか教えてくれないんだ」

 塔子は不満そうに頬を膨らませ、足をぶらぶらと揺らす。
 
「あたしだけじゃない。スミスや警察の人にも……パパは一人でなにかを抱え込んでいる。あたし、どうすればいいんだろう」

 完全に表情を曇らせ、俯いてしまった塔子を見た蓮は、

「塔子さん」
「なんだよ」
「お父さんを信じてあげなよ。きっと財前総理は、なにか大事な決断をしないといけないんだ。総理って言うからひょっとしたらこの国の行く末を決める大事な決断なのかもしれない」
「どう信じろって言うのさ」
「黙って傍にいてあげれば……あ、メールとか電話すればいいと思う。僕たちは大人じゃないから、総理の悩みを聞くことなんてできない。でも、そのうち塔子さんのお父さん自身が、信じられる身近な大人に話してくれると思う。今、お父さんはきっと一人だと思っている。だからお父さんに”一人じゃないって”メッセージを発信し続けなよ。いつか誰かを信じる日までさ」

 笑顔で言い切った蓮を、

「あ、ああ……」

 塔子は見つめた。すぐに蓮はたじろいで、

「あ。意味不明だし、ながったらしいよね。ごめん」
「いいよ白鳥。あたしなんか気持ちがすっきりした。パパが誰かを信じるまで、あたしがパパを支えるよ」

 蓮に笑顔が戻る。だが恥ずかしいのか、

「……ところで瞳子監督が、塔子さんを迎えによこすなんて意外」

 すぐに話題を転換させる。

「あたしもだよ。なあ、監督のメールに書いてあったんだけど、白鳥って地理が苦手を通り越してすごいやばいんだろ?」
「うん。小学校のとき、都道府県名を書くテストで0点とったことある」

 と実にあっさり蓮は言いきった。
 それに塔子は呆れた表情を見せ、

「例えば北海道の位置ってわかるか?」
「うん。日本の一番北で、その下に沖縄県があるんだよね? 首都は函館で、他にアイヌ町とか、ムツゴロウ王国とか、流氷って町があるんだよね?」
「首都じゃなくって県庁所在地! しかも函館じゃなくて札幌だぞ! それからアイヌ町とかムツゴロウ王国なんて……あるのか? 後、沖縄県は日本の最南端だ」
「うう……覚えたくない。日本の地理なんて生きて行くのに役に立たないのに」

 地理が大嫌いな蓮は、頭を抱えて悶える(もだえる)。
 そして塔子は盛大なため息をつき、

「こんな地理ダメダメのお前が、白恋中学校に行けるのか?」
「た、多分行けないかな……」

 蓮はだじだじになりながら答える。

「本当に瞳子監督の判断は正しい。白鳥一人だったら、絶対に札幌辺りで凍死しているよ」

 事実をズバッと言われ、蓮は苦笑いを浮かべる。

「瞳子監督、意外と優しいよな。だから豪炎寺をチームから外したのも、何か意味があると思うんだ」
「だったら面白い情報をつかんでるぜ?」

 名誉挽回、と蓮は夕香が描いてくれた絵を鞄から取り出し塔子に渡す。その時に夕香から聞いた話も簡潔に伝える。
 おおまかな話が終わると、絵を見ながら塔子はうなりながら手を顎にあてた。

「”怪しいおじさん”か。確かにこいつのせいで豪炎寺がチームを離れたとするのも一理あるよな」
「でも、これだけじゃなにもわからない。このおっさんがどこの誰なのか、何者なのかわからないと……豪炎寺くんって言うゴールにはたどり着けない」
「あたしたちはサッカーで言うと、まだボールを蹴ったばかりで相手陣地内に進めていないのか」

 塔子は腕組みをし、しばらくしてはっとしたような顔をした。

「そうだ! SPフィクサーズに協力してもらおう!」
「え? SPのみなさんに?」

 蓮が声を高くして問い返すと、塔子は笑顔で、

「うん。政府の機関だし、情報量も多い! このままやみくもに探しまわるよりいいと思うよ」
「せ、政府の機関を私利の目的で使用していいのか?」
「豪炎寺がいなくなったことは、世界滅亡にも匹敵するだろ! とやかく言っている暇はないよ!」

 塔子の力強い言葉に黙らされた蓮は、

「ま、まあね……」

 しぶしぶ了解した。
 心の中で国民の皆さん、税金無駄遣いしてごめんなさいと謝りつつ。

「なあ白鳥」

 塔子がまた遠くの景色に視線を送って言う。

「ん?」
「豪炎寺のこと——これから二人だけで調べないか?」
「チームのみんなには秘密にしろってこと?」

 蓮も塔子と同じく遠くの風景にめをやる。

「うん。夕香ちゃんのところにいた”おじさん”が何者かわからない以上、下手に動くと危険だ。みんなを巻き込みたくないし、二人だけの秘密にしておこう」
「……わかった。僕と塔子さんだけの秘密」
「あたしたち”豪炎寺調査隊”の、な」

 塔子は軽くウィンクをした。

〜つづく〜
長いので二分割〜!初めに投稿したら、きれいに文字数オーバーに;;
蓮は地理ダメです。某サイトの地図とか参考にしていますが……私も地理はかなり苦手な分野です。歴史は得意なのに^^;