二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 試練の戦い ( No.7 )
- 日時: 2011/03/12 14:30
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)
- 参照: 雷門は次です
大急ぎで階段を下り切った少年は、目の前にあるドアノブに手をかけ、思いっきり押した。すると4人掛けの机の上に広がる朝食が目に飛び込んできた。どれもまだ作られたばかりなのか、かすかに湯気が立っている。
「蓮! 遅いわよ」
赤いエプロンをつけた母親に怒られ、あたふたしながら少年——蓮は、席へと着く。鞄を机の下に、投げ込む。いただきます、と軽く言うと目にも止まらぬスピードで、テーブル上の食べ物を次々に胃の中へと消し去って行く。
「お行儀が悪いわよ。誰に似たのかしら」
母親は蓮の正面に座ると、呆れた顔で悪態をついた。
「らてひゃひひんへへっほっほ(訳・母さんが、起こしてくれなかったんだろ。僕は、朝は苦手なんだから)」
「ほら、早く。傘美野(かさみの)中学校に、行きなさい」
ずっと下を向いて食べていた蓮の手が止まった。パンを左手に持ったまま、不思議そうな顔で母親に尋ねる。
「は? 僕がこれから行く学校は、雷門(らいもん)中学校でしょ。傘美野は、隣町だろ。やだなあ、母さん僕をからかってるの?」
蓮は笑い飛ばそうとしたが、母親の顔は真剣そのものであった。渋い顔をすると、う〜んと唸(うな)りながら腕組みをした。
「それがね、母さんにもよくわからないの。今さっき雷門中学校の方から電話が来て、急いでお子さんを、傘美野に向かわせてくれって言われたのよ」
「サギじゃない?」
「そうねえ。でも、時間も時間だし。蓮、傘美野まで道もわかるし、大丈夫よね」
母親は立ち上がると、蓮の前にあった皿を片づけ始めた。扉の上にある時計に目をやると、既に8時15分——登校時間は8時30分だから、そろそろ出かけないと遅刻することは目に見えている。蓮は席を立つと、鞄を手に取り玄関へと走った。学校の指定靴……緑色で、かかと寄り少し右側に雷のマークがある上履きに履き替える。
「とりあえず傘美野に行く。遅刻したら、母さんのせいだからな!」
転がりそうな勢いで玄関を出ると、蓮は家の前にある坂道を大急ぎで下って行く。鞄が左に右に激しく揺れ、蓮の邪魔をするかのように動く。
「ヤバイ! 初日から遅刻なんてありえないぞ……」
「…………」
そう呟く蓮を見送る、一つの姿があった。
黒いローブに身を包んだ人間。細いやせ形で背はすらっと高い。体格からして女性か。その人間はいつ現れたのか、蓮の家の屋根の上にのっかっている。動かず、騒がず、ただただじっと彼の背中を送っていた。
〜つづく〜