二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.70 )
日時: 2010/08/03 14:43
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: NHSXMCvT)

 翌日——蓮が眠る部屋では、無機質な電子アラーム音が響いていた。高級羽毛掛け布団から蓮の手がするりとこぼれ落ち、アラームを止めるスイッチをオフに切り替える。続いて蓮は布団から起き上がり、ベッドから出した足だけを床につける。それから少しぼーっとしていた。ジャージのまま眠っていたので、首筋や顔にうっすらと汗が浮かんでいる。エアコンが効いていて、そこそこ涼しいのだがジャージ+厚い羽毛布団はなかなかきついものがある。

「……まだ6時30分」

 ベッドわきに腰かけたまま、蓮はデジタル時計の表示を見てぼやいた。いつもなら絶対に起きられない時間。どうしてか旅行先だと、いつもより早起きになる性分なのである。親がいない分、塔子に迷惑をかけられないといった責任感のせいに違いない。
 やることが特にないので洗面所へと行き、冷たい水で顔を洗い、鏡を見ながら髪を整える。

「おはよう。早いな」

 そこへ塔子が入ってきた。帽子を被っているせいか、髪は特に乱れていない。

「おはよう塔子さん」

 あいさつを交わすと、塔子の邪魔にならないよう蓮は右にずれた。
 塔子は洗面台に置かれた霧吹きに手を伸ばすと、それを持ちながら髪に吹きかけ始める。水滴が薄暗い明りの元に舞い、いい香りが辺りを包みこむ。それからくしで念入りに髪をとかしていった。

(へぇ……塔子さんはおしゃれだなぁ)

 そんな塔子を横目に見ながら、蓮は小さいタオルを水に浸し、汗まみれの首筋や身体を拭いていた。暑いので、ジャージの上は腰に巻きつけてある。

「よし終わった」

 やがて朝の手入れが終わったのか、塔子が霧降きやくしを持って部屋に消えて行った。蓮の方は昨晩中に私物は片づけてある。残っているのは元々置かれていた、コップや歯ブラシセットのみ。

「白鳥! 朝飯に行くぞ〜!」

 そんな塔子の元気な声がしたので、

「うん!」

 蓮もまた元気に声を出して部屋を出た。

 朝食の会場は昨晩と同じであるが、バイキング形式なので形状はだいぶ異なっていた。
 机の配置などは同じだが、いくつかのテーブルはくっつけられ、料理が並ぶ。少し目を向ければ、ふだんならまずお目にかかれない高級素材……例えばトリュフやフォアグラ、キャビアなどが豪勢に使われた料理が。少し横を見れば北京ダック。だが一般人向けのパンやジュースなどもしっかり置かれていり、蓮は少し安心した。それでも、格調が高そうなボーイやシェフには相変わらず慣れることが出来ない。
 朝の日差しが入ってくる食事会場は開放感にあふれ、そのうえさらに鳥のさえずりが上のスピーカーから流れ込んで、朝のさわやかさを演出してくれる。
 
 やはりボーイに案内され席に着いた二人は、各々(おのおの)で好きな料理をプレートに乗せる。蓮はクロワッサンやスクランブルエッグに、サラダを足したバランスのいい食事。飲み物は緑茶。
 対する塔子はご飯を取ってきたと思えば、プレートの上には何故かウィンナーやハムなどの西洋風料理。と思ったらわきには焼き鮭や肉じゃが。飲み物はオレンジジュース。和洋混合のよくわからないレパートリーだ。

「いただきます」

 二人は両手を合わせてきちんと礼をする。
 
「あ、おいしい」

 クロワッサンをかじった蓮が歓声を上げた。
 噛むと風味豊かなバター味が口の中に広がり、噛めば噛むほど濃厚さが増す。

「うまいだろ? ここの料理は天下一品なんだぜ」

 目の前に座る塔子がオレンジジュースを飲みながら、自慢気に言った。

「うん。こんなうまい料理食べたことないよ」

 そう蓮が感慨深げ(かんがいぶかげ)に漏らすと、塔子はグラスを置いた。

「なあ白鳥。今日の北海道に行くことについてだけど……」
「ん?」

 パンをちぎり、バターをぶっていた蓮の動きが止まる。

「せっかく後一日と何時間も休みがあるんだ。今日は北海道観光の日にしないか?」
「え〜……」

 本来なら大声を出したいが場所が場所なので、声をひそめながら呆れた声を出す。

「さっさと合流した方がいいと僕は思うよ?」
「昨日出たばっかりなのに、みんなはまだ白恋中学校についているわけないだろ? 先に行って会えなくてもつまらないし……な、いいだろ?」

 子供のようにせがむ塔子を相手に、蓮は項垂れる。

「でもお金……」

 また似たようなことを遠慮がちに蓮が尋ね、

「費用はあたしもちだから大丈夫だよ! それにもうスミスにそう行くからって頼んじゃった」
「…………」

 二の句が継げない。断わる権利がないのだから。

 朝食を終えた二人は電車に乗り、空港の最寄り駅で降り、そのまま空港に行った。そこで塔子に渡された航空チケットを見ると、行先が「千歳」。

「まずは旭山動物園に行くぞ!」
「あの……旭山に行くのか」

 飛行機に揺られ数時間ほど。千歳空港に降り立った二人は、スミスが迎えによこしたリムジンで一路旭山動物園へ。北海道は東京よりぐっと寒く、ジャージでいても涼しさを感じるくらいだ。
 そして半日ほどかけて動物園を見学。

「すごい! ペンギンが近くにいるぞ!」

 子供のように塔子が目に超新星を宿してはしゃぐ。トンネルのようなガラスドームの向こうには海の底の岩が綺麗に再現され、ペンギンが悠然と泳いでいた。

「ひゃあ……話には聞いていたがすごいや」

 この後、塔子はぬいぐるみやら限定グッズを買い込んでいた。蓮は両親への土産にとクッキーやペンギンのぬいぐるみ、シャーペンなんかを買った。
 夜は何故か夜景で有名な函館へ。そこで夕食(やっぱり高級レストラン。蓮はかなり疲れていた)や雷門イレブンへのお土産、自分用のお土産を買ったりしてすごした。そして宿は稚内(わっかない)。疲れが残るまま飛行機に乗り、また来た迎えの車で宗谷岬の近くにとった宿へ。今度は海辺のコテージといった感じで、部屋では波の音がはっきりと聞こえる。

「あたしもう疲れた……おやすみ」

 やはり塔子とは別々の部屋。疲れたのか宿に着くなり、塔子は欠伸をもらしながら部屋に入って行った。今日の部屋は木材で作られたベッドやタンスがあるだけのシックな部屋。キャンプで使うランタンが煌々と明かり変わりに輝き、独特の雰囲気を出す。だが、蓮としてはこっちのほうが落ち着く。
 
「まだ眠くないなぁ」

 あれだけはしゃいだのに、蓮は眠気が全然ない。はしゃぎすぎて逆に目がさえてしまったのだ。

「岬でも見てくるか」

〜つづく〜
今思ったのですが、蓮のイメージイラストって必要ですか?私は小説もだめですが、絵はもっとひどいんですよ^^;でもガゼルとこいつの一枚絵が見たいと思っていたり。ああ〜画力がほしい^^;