二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.81 )
日時: 2010/08/20 14:19
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=PFpCZZgxuok

「風介、もっと笑ったらどう? にぱ〜って」

 蓮が右横にいる涼野に笑って見本を見せる。

「失敬だな。私の中では最高の笑顔なのだぞ?」

 涼野は少し尖った口調で応対する。
 確かに口元はちゃんと笑っているし、目もいつもより笑っているとわかる。さすがに本人が言うだけはある。
 しかし蓮としては、目元をほっそりとさせた『完全に笑った涼野が見たい』とひそかな野望を抱いているのだ。

「それじゃあ撮るぞ?」

 ただ本人が応じてくれそうもないので、ここはいったん退却。
 涼野の肩に親しげに蓮が腕をまわし、口元を笑わせ、ピースサイン。シャッターを切る音がし、フラッシュが闇夜を一瞬だけ昼に変えた。おじさんは、もう一つの携帯を取り出し、同じことをする。その間、二人は彫刻のように同様の体制で固まっていた。

「撮れたぞ?」

 おじさんの声に蓮はすぐに階段から跳び、礼を言いながら携帯を受け取った。
 そうしておじさんは欠伸をしながら、ゆっくりと丘を下り始めた。

「わしは帰るが、キミも友達と遊んでいないで早く戻ってきなさいよ?」
「知りません! 身体が疲れたら戻ります」

 そう声をかけるが、蓮には適当な返事をされた。
 早くも涼野と写真を見て盛り上がっている。
 おじさんは蓮のことを気にも留めず、さっさと進んで行った。丘には二人が残された。

「もっと笑えばいいのにな〜風介」

 蓮は自分の携帯に撮ってもらった写真を見ながら、涼野を肘で小突く。

「笑えと言われても……どう笑えばよいのだ?」
「ど、どうって? う〜ん」

 悩みこみ、数秒後蓮は思いついた! と叫ぶ。

「ピースをするとか。こんな具合に」

 左手でピースサインを作り、頬に当てて見せる。
 それを涼野は見て、

「こうか?」

 蓮の真似をし、ピースをして見せる。
 だが冷たい顔つきとピースは笑えるほど相性が悪い。蓮は噴き出しそうになるのを、必死にこらえていた。

「ま、さっきよりはましだね」

 感情を必死に抑え込み、蓮は大急ぎでカメラモードを起動。珍しい姿の涼野をきちんと携帯に納めた。
 とここで、蓮がパンと両手をあてる。

「あ、そうだ。今から風介を笑わせてみよう」
「は?」

 涼野がきょとんとした。

「大声で笑えば笑顔になるだろ? そうしたら風介も完全に笑えるんじゃないか!?」

 そう蓮に力説され、涼野は渋い表情になる。

「それはそうだが……私は、あまりお笑いなどでは笑わないほうだぞ?」
「難攻不落(なんこうふらく)の要塞ってとこか。よ〜し」

 渋い表情を浮かべながら、涼野は首をかしげる。
 その横で蓮ははり切りながら、携帯のボタンを押している。まず、『ミュージック』のフォルダを開く。いまどきの流行歌もぽつぽつとあるが、大部分はアニメのOPやらEDである。風介や雷門イレブンに見つかったら、もう生きていけない。
 その中から、某動画サイトから拾ったものを選ぶ。それはよくある『おかしな次回予告』と言う奴で、村の観光案内をしているのに、むちゃくちゃ怖いスポットばかりを紹介する内容。蓮的にはいいと思ったが、

「彼女は、ずいぶんと紹介する箇所を誤っているな」

 涼野には、理性的な突っ込みをいれられただけで終わってしまった。目論みとは違い、涼野の顔色は全く変わらず、効果なし。
 
「現実ツッコミするかっ! 次!」

 蓮はめげずに次の曲を再生。
 声優さんが、キャラクターの声で歌ういわゆる『キャラソン』である。アップテンポの曲で、叫びまくる、吠えまくるの嵐。なのに、突然綺麗な美声に切り替わる。歌詞の内容も萌えについて語ったもの。突っ込みどころが多すぎる歌だがこれも、

「何を言っているのだ?」

 涼野には通じない。冷淡な反応の元、『固有結界』撃沈。

「うわ、強いなぁ……次!」

 これならとありとあらゆる曲を流すが……やはり結果はどれも同じ。微かに眉根が動くことはあっても、冷静な表情は崩さなかった。

「うへ〜怖すぎる」

 蓮は力なく階段に座り込むと、顔を月に向け、祈るように両手を握る。

「あ〜神様よ、この人を笑わせる方法を教えたまえ」

 一発芸の類ではなく、蓮は全身全霊本気だった。しかし——

「……ふふふ」

 わずかに笑い声が漏れた。もちろん蓮ではない。
 びっくりして振り向くと、涼野が手を口に当てて必死に笑いをこらえている。顔は少し強張り、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
 だがダムが決壊するように、涼野が小さく笑いだした。ここまで声を上げて笑う涼野は、やはり不思議だ。そんなイメージがないからか。
 目は完全に細められ、月光を宿す雫が時折散る。

「はははは……素晴らしく滑稽だよ、蓮。この私を笑わせるなんて」

 涼野は指先で涙をぬぐいながら、片目だけを開けて言った。

「む〜少し屈辱的だが、まあいいか」

 蓮は少し頬を膨らませ、笑いつづける涼野の横に立つ。そしてカメラ部分をこちらに向け——シャッターを切った。
 カメラにばっちりと本当に心から笑う涼野と蓮が映る。

〜つづく〜
うはぁ。涼野さん笑ったらこうなるのかなぁ?
ふだんクールな人って笑うときはすごいですよね〜TVで見たら、本当にこんな感じでした^^ちなみに今回蓮が涼野さんに聞かせていたのは、み〜んな『嘘だッ!!』で有名なあのマンガのものですww知ってる人は友達に以下略。さてさて次回は塔子&蓮不在の雷門イレブン編ですv今さらですが、二番目に涼野が聞いた歌へのリンクを張りましたv