二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【D灰】…空白の歯車…8/26u…p? ( No.155 )
日時: 2010/09/05 12:30
名前: なさにえる (ID: foi8YFR4)


     第6夜 各地。


「あ、あなたなんなんですかぁ!!!」

思わず叫ぶグロリアの隣でテッサイアは苦笑しながら口を開いた。

「お前が噂のパスカヴィルって奴だろ?」
「!?」
グロリアは言葉を吐こうとした口をつぐむと驚いてテッサイアを見上げ、通路に立つギルバーシュを見下ろした。

一方のギルバーシュは少し不機嫌な表情を浮かべた。
「あれぇ、イカレ帽子ったら名前あかしちゃってんの???せっかくかっこ良く名乗ろうと思ったのに」
微妙な点でイカレ帽子=レオナルドに殺意を覚えるギルバーシュ。

「まぁ、いいや。僕はギル。よろしくね♪」
「あ。わ、私グロリア・カンパネルラです。こちらこそよろしく……」
思ったよりも友好的な雰囲気にグロリアも思わず名前を口走る。飽きれるテッサイアは頭をおさえる。
「で、早速なんだけど。グロリア……」
「?」




「…………死んでもらうから♪」

深紅の瞳がグロリアに牙を剥いた。


              ◆・◆・◆・◆・◆・◆

                       ________ロシア




「きもちいいねぇ〜♪」


雪を被った静寂の森で一人の青年がのんびりした言葉を吐いた。
頬を紅潮させ周囲を嬉しそうに見渡すのは首に巻いたマフラーが特徴的なシリス・アルキデス。
もともとロシア出身の彼は故郷の空気をいっぱいに吸い込んでいた。


「……とても気持ちいいなんて形容詞で表現出来る気温じゃないと思うけど?」

シリスはそういった人物の方へ不思議そうな顔を向けた。
「なんで?今日はそんなに寒くないよ???」
「シリスって感覚もずれてるのね……」
『毒蜘蛛』の店主でありパスカヴィル、ドロシーは白い息を吐き出しながら呟いた。
彼女が纏っているのは熊とおぼしき厚手の毛皮のコートだ。長い黒髪はまとめており、今は帽子も靴も毛皮といった防寒対策はばっちりすぎる格好だった。

「なれればドロシーも平気だよぉ」
「私は寒い所は苦手なの。それにここの寒さ以上よ、本当にそんなコートとマフラーで平気なの?凍死するわよ」
信じられないと言った顔でシリスを見る。

「え、とりあえず耳と首さえあっためとけば良いんじゃないの?」
「……間違ってはいないけど、間違ってはないんだけど。シリスの場合それだけじゃない」
「大丈夫、寒さで耳がとれちゃう時もあるんだよ」
「……だから、耳よりもコートそれだけで平気なの?って言う問題で」
「ドロシーは過敏すぎるんだよ。これでもちゃんとあったかいよ?」
「……信じられないわ」

なんだかんだで会話は成立しつつ(?)雪に足跡を残して二人は歩を進めた。



ふいに目の前が開けると二人は小高い丘の上に立っていた。
純白の渓谷を見下ろすと周囲に広がる森とは正反対の灰色の巨大な金属の建物が立っていた。
それを見下ろすシリスの表情が曇った。
「あぁあ〜、僕の故郷にあんな人工物ふさわしくないよ」
にくにくしげに建物を見るとすぐにシリスは自分たちの少し先に引かれた謎の"線"を見つけた。
どうやら建物を一周しているようにも見える。
「これあいつらの"警報線"だね」
正門以外の場所で”線”をこえれば侵入者として迎撃装置が作動する。
「大丈夫よ」
さっきまで寒さに震えていたドロシーの雰囲気が一変すると、瞳に一瞬で強い紅い光がともった。

「すぐに潰しましょう」
不敵に微笑むと”線”をこえた。
電子が鳴り響いて迎撃装置が作動した。
が、ドロシーに向かっていた弾丸はドロシーに触れる前に軌道をそれて側の地面にぶつかると爆発した。
「派手ねぇ」
標的のドロシーは呑気なものだ。
”線”を超えなかったシリスは目を閉じた。
ヴォイス   キャッチ
「音____捕捉!」


そう呟いてたシリスの耳にまるですぐ側に音源でもあるように建物内の音が流れ込んできた。

  ___侵入者一名。”線”をこえた模様。正体は不明だが迎撃装置が効かない。
        研究員はただちにシェルターへ退避しなさい、また____


そこまで聞いたシリスは捕らえていた音を手放すと目を開けた。

「随分大騒ぎだよ。よっぽどぬけた連中なんだね。こんな弾丸で止められると思ってるなんて」

「さ、誘導はこれでいいでしょ」
「ドロシー、僕どうするの?」
「少ししたら反対側からのりこんで頂戴」
「反対側って……正面玄関だよ」
「そうよ。シリスは堂々と平和に正面から乗り込むの」
「平気なの〜?教団関係者じゃないってバレたらここより攻撃凄そうだけど」
「シリスが全部壊せば良いでしょ」
「……全然平和じゃないよぉ」
そんな会話を雨のように降り注ぐ弾丸の中で行う彼ら。
「ねぇ、ドロシー。面倒だから僕に正門押し付けてるでしょぉ」
いつもは遅れているがさすがにこの扱いのさに抗議の声を上げる。

「いってらっしゃい♪」
ドロシーは手を振ると弾丸をものともせず威風堂々研究所へ歩を進めた。

「…………まぁいっか」
あきらめが早くマイペースなシリスは楽観的にそう言うと正門に歩き出した。