二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【D灰】…空白の歯車…【3/26up】 ( No.301 )
日時: 2012/05/19 12:54
名前: なさにえる (ID: ovLely7v)


   第22夜

「う……ら?」


 とぎれとぎれの意識の中でギルバーシュはその言葉を理解出来ずに呟いた。





「そう、裏」

 シエルはそういって笑うとイノセンスが再び発動の光を放った。
 禍々しい黒い光を。


「こいつもグロリアが死ぬと同時にオレに付き、性質までも変化させたのさ」
「殺すなよ」
 そばにたつテッサイアが釘を刺した。
「分かってますよ。テッサイア先輩」

 イノセンスが回転を始め、太陽の方を向いた。

「"地獄ノレンズ"」

 無数のレンズに集められ、更に強さを増した光がギルバーシュの目前で輝いた。
 その危険性を悟っても痺れて身体を動かす事が出来ない。

「安心しろよ。テッサイア先輩とグロリアの分だけで勘弁してやるから……せいぜい全身大火傷ぐらいだ」

 集約された光がギルバーシュに向かって業火の光線となって放たれた。
 逃げる時間はない。
 目映い閃光が狭い路地で炸裂して、一瞬遅れで熱波が広がった。

「あちち」

 シエルはぴょんぴょん飛び跳ねる。
 テッサイアも熱風に思わず目を細めた。
 少し収まると焼けこげた砂の上に横たわるギルバーシュの姿が確認出来た。

「どうすんの?こいつ」
「教団に連れてく。いろいろ聞きたい事があるからな」
「そうはいくか。野良犬共」

 突然響いた女の声に再びテッサイアたちの警戒レベルが跳ね上がった。
 現れたのは栗毛の長い髪を持つ美しい女と荒々しい野獣を思わせる男。輝く紅い瞳と二人にまとわりつく血の匂いが一般人ではない事を告げていた。

「こいつの仲間か」

 手の中でイノセンスを掴みながらテッサイアは呟くが女、ルナはそんな行動には目もくれず淡々と"言葉"を発した。



 、、
「黙れ」

__何が…

 言葉を続けようとしてテッサイアは自分が言葉を発する事が出来ないのに気づいた。
 隣のシエルの困惑した表情を見るとシエルも同じようだ。
 ルナはそんな二人には目もくれず、ギルバーシュに近づくと軽々と肩に担いだ。


__させるか…

 せっかく敵の情報を手に入れるチャンスだ。
 シエルは再びイノセンスで攻撃をしようとしたがルナはそんな行動など気にも止めていないようにすたすたと歩いていく。


 、、、
「動くな」



 再び発せられた言葉でシエルは動く事さえ出来なくなった。
「無駄だ。さっきの攻撃は遠目でも見えた。お前はどうやら太陽の光を媒体に強力な攻撃を生み出すようだが、もう日も傾いている。こうしているあいだにも。もはや先ほどの威力はでないだろう」

 悔しいがその通りだ。
 シエルは動く事も出来ずその行動を目で追う事しか出来なくなった。

「帰るぞ」
「なぁ、ルナぁ」
「仕事は済んだ。タイムオーバーだ」
「たった五分しかすぎてないだろ」

 ヴォルフの腕に赤い光がともった。
 その光を見てテッサイアはシエルと同類の、しかもそれ以上の危険性を感じ取った。

__ありゃあ、ヤバい

「一瞬で終わるさ」

  、、、
「やめろ」

 先ほどテッサイアとシエルに向けられたのと同じ強い"言葉"がヴォルフに向けられた。
 ルナの方を向いたヴォルフの紅い瞳がルナのそれとぶつかり合った。
 見えない戦いが繰り広げられているような一瞬の沈黙。結局それに軍配を上げたのはヴォルフだった。
 手の光が消え、しぶしぶといった表情でため息をついた。
 同時に空気が揺れるとルナとヴォルフ、そしてテッサイアとシエルの後ろに同時に人が現れた。

 一つは方舟から、もう一つは白い球体から。



 方舟から現れたアレン、リナリー、レミシスは目の前の状況に一気に戦闘態勢にはいった。
 一方のタウは目の前のヴォルフとルナの殺伐のした空気を感じ取ってため息をついた。


__イカレ帽子の処刑決定。



「ルナ、ヴォルフ。時間だぜ」
「あぁ」

 ギルバーシュを担いで、二人は屋根の上に飛び乗った。


「テッサイア、グロリア。大丈夫ですか?」
 イノセンスを発動させたアレンが動けない二人のそばに駆け寄った。

「あぁ、あの女ノ性で動けネェけどな」
「どうやらあいつら、オレらを殺す気はネェみたいだけど」

「オレ?」
 グロリアの事情を知らないアレンはシエルの言葉を聞いて疑問符が浮かんだ。

「あぁ〜、面倒から説明あと」
「はぁ……」


 混乱するエクソシストをよそに屋根の上では再びヴォルフが手に光を纏い始めていた。

「相手からこんなに来てくれたんだ。ここはいっきに始末しとくのがいいよなぁ」
         、、、
「ヴォルフ!!!やめろ」

 ルナが真っ赤な瞳で"言葉"を発するが今度は軍配はヴォルフにあがった。




「そもそも、仕事を終えた時点でオレは時間なんて関係ねぇ」





    ヘル
___地獄___







 ヴォルフの手の光が血のように紅く輝いた。



「やばい」
 その光景を目撃したレミシスが警戒の言葉を発した。


__間に合うか

           シエル
 シエルは目を閉じると自分を閉じた。





「じゃあなぁ」



 ヴォルフの言葉が終わると同時に黒い光が炸裂した。
 一瞬でヴォルフを中心にした周囲、エクソシストたちを含んだ数mが球体を描いて塵と化した。土煙が舞い上がり何も見えなくなる。



「死んだか?」



 そう言った途端、脳天にルナの踵が落とされた。
 激痛にうずくまるヴォルフを目に怒りを称えたルナが見下ろした。


「お前は私たちを殺す気か!」

 とっさにルナがタウやギルバーシュ、自分を力で守らなかったら一緒に塵になっていたかもしれない。
 となりでタウも冷や汗をかいてヴォルフを睨んだ。

「そのうえ、奴らまで殺し損ねたな」
「あ?」

 ヴォルフはエクソシストのいた方向を見て、舌打ちをした。
 アレンたちはアレンのイノセンスの盾とシエルが消えた事で再び人格を取り戻したグロリアがイノセンスで守ったおかげでほぼ無傷でいた。


「これで気が済んだか?仕事は済ませた。帰るぞ」
「あぁ」
 その言葉でタウが周囲に半透明な球体を生み出して仲間を包んだ。
「待て!!!」
 リナリーが黒い靴を発動し、その球体に蹴りを放った。
 が、鈍い衝撃が走っただけでヒビすらはいらない。

 タウはそんな薄い笑いを浮かべてリナリーに手を振った。









                      __________あれ???




 その姿を見たリナリーの中で何かが引っかかった。
 動きが鈍り第二撃を放つ時間はなかった。






____パチンッ!



 指をならす音と同時に弾けた急とともにパスカヴィルは消えた。




「リナリー?」

 アレンが心配そうにリナリーを見た。
「どうかしたんですか?」


「……なんでもないわ!さっきあの女の子に攻撃された足で蹴ったもんだからちょっとね」
「そうですか…無理しないでくださいよ?」

 レミシスが怪我の治療をしているテッサイアやグロリアの方に走るアレンの後ろ姿を見てリナリーは考えた。





 
                 ______私、どこかで彼を……






 疑問を抱えるもリナリーはそんな心配を振り払い仲間のところへ走っていった。














___ロシア