二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.123 )
日時: 2010/06/01 16:20
名前: るりぃ (ID: W/.Oe74D)
参照: http://アフォ小説家?

『嗚呼 なんてすばらしき日』

水曜日、前田と真田が昼休みに訪ねて来ることは恒例となっていた。
「そう言えば、先生って独身だよね?」
弁当をあらかた食べ終えた前田が俺に言う。
何かと思えば前田は自分の左手の薬指を差し、ゆびわ、と口にした。
「ああ、独身だ。」
「寂しくないの?」
そこへ新発売だという菓子に夢中になっている真田が口を挟んだ。
「慶次殿失礼ですぞ。伊達先生が結婚出来ないのはなにかしら理由があってのことでしょうに、それを…」
「テメェの方が失礼だ。」
「でもさ、先生だって身を焦がすような恋の一つや二つあったんでしょ?」
何故現在進行形ではないのかが疑問だが、目を輝かせ聞いてくる前田に、話してやろうという気になる。
「では少し、昔話でもしてやろうか。それこそ、身を焦がすような恋というものだったんだぜ?」

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アイツと俺は幼なじみだった。
将来は結婚しようね、などと他愛のない約束もしたが、小学生の時にアイツが引っ越して、それきりになっていた。
再会したのは親元を離れて、地方の大学に通っていたころだ。
アイツが柄の悪い輩に絡まれていたところを偶然俺が助けたんだ。
アイツもまた近くの女子大に通っていた。
運命を感じたな。
それはアイツも同じだったらしく、それから俺たちは交際を始めた。
お互い初めての相手だった。
アイツと居ると何もかもが輝いて見えた。
青い空も、いつもの通学路も、アイツが居れば美しかった。
もちろん、一番美しいのはアイツだったが。
結婚しよう、と、付き合って二年目の記念日に俺はプロポーズをした。
二人ともまだ学生だから、今すぐにとは言わない、でも俺が卒業したら、君と一緒に暮らしたい。
そう言って指輪を渡した。
情けない程に安物の指輪だったが、アイツは消え入りそうな声ではい、と言い、指輪を薬指に嵌めて泣きながら笑った。
幸せだった。
俺はきっとこのために生まれて来たのだろう、と思ったよ。
それから、卒業までの一年と少し、俺は教員試験の為に必死に勉強し、その合間、アルバイトに励んだ。
アイツとの生活の為に頑張ったよ。
アイツと会う時間は減っていったが、たった一年我慢すれば良いだけだ。
アイツもわかっていたからな。
しかし、今になってみればもっと、アイツと一緒に過ごしていれば良かったと思う。
もう、遅いが。
ある日、久しぶりにアイツに会うと、アイツは随分とやつれていた。体調が悪く、学校も休みがちだと言う。
大丈夫かと訊ねると、大丈夫よと笑顔を見せる。
でもそれは弱々しい、笑顔だった。
とりあえず喫茶店にでも入ろうと歩きだすと、急にアイツが倒れた。
俺は柄にもなく取り乱してしまい、ただアイツの名を叫んでいた。
親切な人が救急車を呼んでくれてアイツは病院へ運ばれた。
結局入院することになり、アイツの両親が北海道から出て来た。
そこでアイツが不治の病であることを知った。
もう長くはないと。
それからは病院へ毎日通った。
少しでもアイツの側に居たかったからだ。
彼女はちゃんと勉強してる?
とか春になったら一緒に暮らせるね、どんなおうちがいい?
とかそんなことばかり話した。
俺はそのたびに笑って、そうだなあ、最初は安いアパートだけど、いつか庭付きの一軒家を買うから、お前の好きな犬も飼えるし、子供だって 沢山、などと応えていた。
本当は二人ともわかっていたんだ。そんな日は永遠に来ないことを。
それでも、幸せな未来を、夢見ていた。
よく覚えているよ。アイツが死んだのは丁度、教員採用試験の合格通知が届いた日だった。
清々しい程に晴れていて、小鳥が陽気にさえずっていた。
そのような日に、何故、アイツだけが死ななければならないのかわからなかった。
不思議と涙は出なかったが、俺は全てにおいて無気力になっていった。
もう、自分の人生どうでも良いと、そう思った。
アイツの元へ行きたかった。
それでもそうしなかったのは、アイツとの約束があったからだ。
教師になると話した時、アイツは素敵な先生になってね、政宗ならなれるよ、と言ってくれた。些細なことだが、自分を信じてくれていたアイツのことを裏切れないと思った。
アイツのために生きていこうと思った。
だから俺は結婚はしない。
生涯、愛する女性はただ一人だからだ。

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話し終え、彼らに目をやると、二人とも号泣していた。
机の引き出しからボックスティッシュを取り出し、前田に投げてやる。
二人はそれで涙を拭い、鼻水をかみながら、感動したとか見直したとか聞き取り辛い声で言っていた。































まあ、今喋ったことは全て作り話なんだけどな。