二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.125 )
- 日時: 2010/05/25 17:29
- 名前: るりぃ (ID: F/ANFiDr)
- 参照: http://アフォ小説家?
『愛が殺せと叫ぶから』上
目を開くと、必ず血の海にいる。
腰のあたりまで、私はそれに浸かっていて。
肘に力を入れて、ねっとりとした物を滴らせながら掌を赤から取り出す。
掌は、当たり前のように拳銃を握っていた。
警報が鳴る。
聴いてるのは耳じゃない。
私の中で、狂ったように鳴り響く警鐘は、心臓から喉を通り舌をかきわけて声となった。
叫んでも。
叫んでも止まらない警報を。
止めるのはいつも、一発の銃声。
力を無くした身体を、血の海に沈め。
自らの喉に向けて放った拳銃を思って、私はゆっくり瞳を閉じる。
どうして。
どうして私は、あの時貴方を撃てなかったのに。
今こうして、夢の中で自分を撃ち続けるのだろう。
愛が殺せと叫ぶから
-警鐘-
「…朝…か。」
私が刑事を辞めてから、何度目の朝だろう。
そんな風にぼんやり考えるのが日課になった。
佐助という名の殺人鬼を追っていた昔の私は、彼本人から殺人を犯した動機は私を愛しているからだと告げられ、しかも彼を取り逃がした。
佐助は…「逃げる気はない。君に殺されたい」…。
そう、言ったのに。
一緒に急行した仲間も佐助に殺され、それも全て私のせいかと思うと、刑事を続ける気になんてなれなかった。
事実としては、私が佐助に殺人を勧めたわけでも頼んだわけでもないから、私のせいということにはならないのだろうが、それは理屈に過ぎない。
事実、仲間は殺され、私は佐助を撃てなかった。
刑事を辞めたのには、もう一つ考えがあったからでもある。
彼は、私の心に残りたくて殺人を犯したと言った。
私が刑事だから、犯罪なんて手段を選んだのだ。
だから、私が刑事でなくなれば何か変わるかも知れないと思った。
彼の言葉を信じるなら、だけど。
「…全ての幕開けは君だから、幕を引くのは、君しかいない…。」
あの日、彼が残した言葉を呟く。
私しか、終わらせることは出来なかった。
それなのに私は、終わりを選ばなかった。
その答えはまだ見つからないが、私はそれを悔いている。
だから…あんな夢を見るのかも知れない。
「あぁ…やめやめ!」
過去を振り払うように私は首をぶんぶんと横に振ると、ベッドを軋ませて床に降りた。
どんなに辛くても、生きている限りは前に進まなきゃならない。
再就職する気分にはまだなれなかったが、家に閉じこもっていては滅入るだけなので毎日欠かさず外に出るようにはしていた。
いつものように身支度を整えて…と言ってもTシャツにジーンズだが…財布とケータイだけ持って玄関を出る。
朝というよりは昼に近いマンション前の公園は、ちらほらとベンチにサラリーマンやらホームレスが居るだけで、遊具で遊ぶ子供もいなかった。
外に出ても、別に行く当てが在るわけではない。
私は公園を横目に、ゆったりとした足取りで駅の方に向かった。
駅の裏側の、小さいが雰囲気のいい喫茶店が目当てだ。
そういえば、学生の頃からだろうか。
いろんな喫茶店に行っては、勉強したりぼんやりしたりして時間を過ごすのが好きになったのは。
警備会社にでも転職する気でいたが、案外喫茶店なんかで働くのもいいかもしれない、と少し笑った。
駅に向かう途中で、左手に建設中のマンションが目に留まった。
作業中なのか、壁に沿うように組まれた足場をカンカンと歩く音と、やたら延びのいい掛け声が聞こえる。
ここにもマンションが建つのか、と何気なく見上げると、太陽の光を遮って黒いものが急速に近付いてきた。
一瞬、訳が分からなくて。
気が付くと私は誰かの腕に引かれ道に倒れ込んでいた。
耳をつんざく金属音がして、その余韻が消える頃やっと上の方から作業員が騒ぐ声が聞こえる。
「…危ないところでしたね。」
耳元でするその声に瞑っていた目を開いて、さっきまで自分が立っていたところを見ると、そこには厚さ十五センチはある鉄骨があった。
あんなのが直撃したら即死である。
「……当たればよかった…。」