二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.137 )
日時: 2010/05/30 13:50
名前: るりぃ (ID: D0RCrsH7)
参照: http://アフォ小説家?

愛姫リク♪『楽しい新婚生活』

『結婚おめでとう!』
こぼれたチューハイを布巾で拭いている時に気付いた。
机の上に置かれたメッセージ付きのポラロイド写真。
その写真の被写体になっているのは。
白いウエディングドレスを着てカメラに向かってピースをする新婦と。
二人で酒樽を持ち上げ逆に向け、酒を浴びせかけてはしゃぐ旦那や前田の風来坊。
新郎新婦の門出を祝う皆の幸せな笑顔に囲まれ、満面の笑みを浮かべる新婦に。
俺様は思わず昨日という記念すべき日の事を思い出す。
そして俺様は、おもむろに掃除する手を止め写真を手に取り、感慨深く眺める。
ああ、やっとアイツが俺様のものになったんだ……!!
その喜びに。
幸せそうな面々の揃うポラロイド写真において。
急に酒樽から滝のように酒を浴びせられ、息も絶え絶えになってむせている。
影の薄い画面左下のタキシードを着たオレンジ色のマリモが俺様である悲劇や。
「なんで結婚式の主役である新郎の俺様が、今日も酷い目に遭うんだ……?」
と、酒をかけられ自分の存在意義を疑った途端、ビールをぶっ掛けられ目に目薬の如く入って号泣した結婚披露宴や。
ドッキドキの初夜を期待していた俺様を裏切るかのように。
結婚式に来た友人達が大挙して新居に押し寄せ。
飲みまくってゲロった人々の看護に何故か俺様が一人で奔走せざるを得なかった事や。
片付けずに散らかすだけ散らかして帰った皆の後処理の為に、今、俺様だけ一人で早起きして掃除している事。
…等々の『迷惑俺様だけが被ってるんじゃね?』的事柄が、まるで光り輝く思い出のように思えてくる。
「ン……。」
チュンチュンと雀の鳴く音より目が覚めた俺様は、酒を吐くまで飲まされ続けたことによる二日酔いにくらりときつつも。
そう奥の部屋から聞こえた小さな寝息にふわりと笑みを浮かべ、そちらの方向を見る。
そこに眠るは、昨日俺様の妻となった、愛姫。
———そう、
昨日俺様は愛姫と結婚したのだ。
「愛姫、愛姫。」
「う〜…。もうあさなの……?」
もぞりと布団が動き、新妻の愛姫が掛け布団を被ったまま俺様に返事する。
昨日の自宅での二次会により汚れた場所を全部掃除し終わった俺様は(俺様って朝からスゴイ!)
ちゃっかり朝御飯まで完璧に作ってから昔から朝の弱い愛姫の頭を撫で、緩やかに起こす。
「そう。朝だよ、朝。この寝ぼすけさんめ!」
「えへへ…。ごめんね。ついうっかりいっぱい寝ちゃった!!」
俺様の台詞にテヘヘとはにかみ、頭を撫でる俺様の手に擦り寄る愛姫。
………。
良い。
良いんじゃないの!!
このラブラブさこそ新婚!!!!!
最早、結婚する前にクラスメイトに俺様の事を聞かれ、
「佐助?ああ、幼馴染で使いやすい佐助の事?」
と素で返事した愛姫とは比べられない可愛さである。
……ハイ、そこ。
俺様の事、可哀想とかM男とか思わないように!
逆に、十数年間そんなつれない愛姫に尽くし、密かにアピールし続け。
逆プロポーズされた俺様を褒めてほしい位である。
そんな俺様の心の中の思い出の悲しい回顧をよそに。
愛姫は窓からさす日差しに目を細め、うーんと言いながら伸びをする。
そして、まだ若干閉じかけの眼を台所と食卓に向け、きれいに机の上に並んだ朝食を見、少しだけ口を尖らしこういった。
「あーあ。佐助より早く起きて朝ごはん作ろうと思ったのに……。」
俺様はその台詞に思わず目を見開いた。
「!?え、作ってくれるつもりだったの??!!」
旦那や愛姫のお世話を長年してきたせいで主婦根性の染み付いた俺様は、何の疑いもなく自分で率先して調理場に立ってしまっていたが。
「ま、いっか。朝ご飯、一品ぐらい増えちゃっても良いよね?ちょっと待ってて、すぐ作るから。」
そう言いながら、愛姫はすくりと布団から立ち上がりピンクのエプロンをタンスから引き出す。
そしてそのままエプロンの紐を結びつつ、台所のシンクの前に立つ。
ああ、まさかこの俺様にも誰かに尽くされる日が来ようなんて———…!!!!!
そう感動していた刹那。
グシャッ!!
と、何かを潰す音が聞こえた。
俺様はその音を不審に思い。
鼻歌の聞こえる台所を恐る恐る見遣る。
と、
そこには楽しそうに調理する愛姫の姿———
否、楽しそうにうまい棒を封を開けずに握りつぶしている愛姫の姿が。
愛姫はぐしゃぐしゃと中身のスナック菓子をつぶし、手ごたえが無くなったことを確認するとパッケージの封を開け、そのまま食卓の方へ歩みを向ける。
「はーい、完成です!!座って座って!」
机の上の朝食には、スクランブルエッグや少々の野菜ののせられた皿の横に、俺様が先に茶碗によそっておいたご飯がある。
俺様に座るよう促した愛姫は夫婦茶碗の俺様の方のみを手に取る。
そして、それはもう見事にそのまんま全てうまい棒の粉砕物を俺様の茶碗に盛られた白いご飯にぶっかけた。
そして満面の笑みでこういった。
「はい、どうぞ召し上がれ!!」
………。
俺様にどう反応しろと……?
しかし、たとえ調理時間30秒の10円クッキングだったとしても、愛姫が俺様のために折角手間暇かけて作って作ってくれた料理である。
良き夫として、愛姫を傷つけないよう、
そして「エヘ。ジョークジョーク!!」といって訂正してくれることを切に願い、たどたどしく言葉を紡ぐ。
「え、え…?なにコレ?」
「えー!!ふりかけだよ、ふ・り・か・け!!見て分かるでしょ!!」
「いやいや、どーみたってうまい棒を粉々にした粉末にしか見えないんだけど……?」
俺の茶碗の炊き立てでツヤツヤ光る米の上にふりかけられたうまい棒の粉末を尻目に、
愛姫は俺の分のおかずの皿を奪い、自らはうまい棒のかかっていないご飯をもぐもぐと口に運んでいく。
そして、暫くそうして、思い出したかのように俺様の法を向くと、満面の笑みでこういった。
「佐助の分までちゃんと私がスクランブルエッグ食べてあげる!!
だから、佐助は私の作ったふりかけで白米をおいしく頬張るといいよ!!
さあさあ、遠慮なく食べちゃって。」
「え、あのさ、俺様こういう前衛的な食べ物はちょっと口に合わないっていうか、
自分で作ったご飯食べたいっていうか……
俺様が反論をしようと其処まで言ったとき、その台詞は愛姫によってさえぎられた。
「わあ!!
このスクランブルエッグすっごくおいしい!!
二人分位ならぺろりと食べきれちゃいそう!!
佐助には私がこれから毎日ごはん作ってあげるから、佐助も私に毎日ごはん作ってね。
ちなみに昼ご飯はサラミ味だから、楽しみにしてて!!」
「う、うん……。」
朝日にも負けないはじける笑顔で愛妻にご飯を用意してもらう俺は、幸せ者だよな。
ハ、ハハハ……。
———こうして俺の新婚生活は、
『うまい棒(たこ焼き味)ふりかけご飯』を正当化し、
愛姫を喜ばせる為、涙をこらえておいしそうに食べる所から始まった。

■終わり■

「…私の妹だからな、頑張って来い。」
「…うむ。」
「俺様もう無いていい!?」