二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.144 )
日時: 2010/06/06 14:15
名前: るりぃ (ID: JnydBXXF)
参照: http://アフォ小説家?

壱 魅つめるほどに美しく


魅つめる度…

眼が一度合う度に…

虜になっていた…


『魅惑の代償』


「…ァ…ッ……アニキ!!」
この頃、ぼーっとしている船長に一言注意する家臣…には見えない子分達。
一生懸命説明してもいつもこれだ。
最近はめっきり上の空…
子分達は皆、その様子を心配していた。
「おっと…すまねぇな。で、なんだったけか…」
「アニキ…ずいぶんと前からそうですぜ?」
「悪りぃ…調子が悪いんだ……」
その一言で家臣は皆で驚きわたわたと心配する。
元親もそんな子分達を見ては、すまないと思っていた。
「はぁ…」
海に何度も身を寄せて眺めても…
どんな宝を見つけても…
最後に浮かぶのはアイツの顔。
誰かも分からぬ人の女が俺に笑い掛けていた。
海の上……彼女とは会えない、探せない名前さえ分からない。
海が恋しくなるのことはあっても、陸が恋しくなるのは初めてに等しかった。
おかしい…自分は何故こんなにも頭に浮かぶ女に執着するのか。
「俺らしくもねぇ…でも逢いたくて仕方がねぇんだ」
暫くして、船は四国へと戻る。
その頃には意識など何処かへと飛んだように城内へと戻った。
名前さえ思い出せない人に恋こがれるのは…疑問などすぐに吹き飛んだ。
自室に襖を開けて入ってみれば女物の着物一枚が置いてあった。
ぐしゃぐしゃだが、名前はすぐに思い出した。
「    」
着物を手にとって、
少し破れた記憶の壁から名前が出てきた。
無理矢理引き出したに過ぎない名前…
「そうだ…アイツは……!」
思い出して部屋から着物を握り締めながら出た、
直ぐ近くの奴に聞く。
「みちるって知ってるよな?」
何故か確信があった。
此処に…一緒に側に居た気がする。
欠けた一枚は大きくて、
「アニキ…な、何言って……」
「ああ゛!?はっきり言え!!」
部下の肩を力一杯掴む。
その力は尋常とは思えなかった肩からは異常な骨の軋む音が聞こえる。
他の通りがかりの家臣が慌てて止めに入った。
「どうしたんです!アニキ!?」
「ア、アニキ!肩が…ッ!」
「……すまねぇ…ただ、みちるって女を知りたかっただけなんだ。」
その言葉に目の前の二人はまた固まる。
表情は哀しげだ…何をそんな瞳で見るのか……。
一人の家臣は生唾を呑み込み聴いた。
「思い…出したんですかィ?」
「………何を…だ?」
「その着物の女性を……」
二人目が言う。
真剣すぎる目に…何かあると元親は踏んだ。
着物…その単語に引っ掛かりがある。
頭に靄が掛る。
苛つく…。
「お前等何か…隠してんだろ?」
「アニキに隠し事なんて!!」
「滅相も無い!」
その慌て振りに何かあるとまた記憶が横切った。

”貴方様がいるならば…私は……“
”みちる…お前をずっと……愛…し………“

まるで…死に際の言葉が頭の中にふと、その後の言葉は…

「みちるは…死んだのか…」

「アニキ、思い出して…」
震えた声の家臣…元親はある場所へと向かう。
自然に足が進む。
その間に何があったのか、元親の歩いた後ろは家臣が倒れては唸っていた。
みちるの眠る墓…遺骨が剥き出している。
土は何度も掘り返した跡がなん箇所何度も見受けられる。
「邪魔をすんじゃねぇ…」
その墓の前にいる十数人の自分の家臣…
必死に止めようとしている。
「ヒッ…アニキもうみちる様は眠って…」
「いや、無駄だ…今年は止めさせて頂く元親様!」
「あ゛あぁぁああ!!」
それは狂乱した鬼のようだった。





誰がこの光景を信じるのだろう…
墓は真っ赤に染まり…、周りを囲うように自分の家臣が眠っている。
それは紛れもなく元親が斬った者達だった。
血は辺りを全てを包み、その中心には墓の前で骸骨を抱き締める元親が居た。
骸骨に口付けをする。
真っ赤に染まり果てた手で…

「みちる…やっと逢えた。」

逢えた喜びだろうか微笑み涙を溢しながら骸骨を抱いている。
周りから見たら尋常では無いが、周りには誰も居ない。
居る筈もない。



元親が斬ったのだから……。

元親の皆を斬る姿は怒り狂った鬼の様だった。

大切な年に一度の命日に元親は忘れる人がいる。
だが、その日必ず思い出し二人はまた廻り会う姿形は違っても…。
彼女は埋められた筈なのに遺骨は墓の上へと剥き出しになる。




それは命日に…



ー終幕ー
(妖に見初められた鬼は、ずっと骸骨にはり付けられる。)