二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.146 )
日時: 2010/06/06 14:11
名前: るりぃ (ID: JnydBXXF)
参照: http://www.nicovideo.jp/watch/sm3822749

参 生きたい……


目が…霞む……

まだ僕は…生きているのか……?

足の感覚も、この支えになっている刀の感覚さえ無い

音も…聴こえない…


まだ時間があるはずなんだ………

時間が…なければ意味がないんだ!

『捕われた魂』

ピチョッ…

冷たい……此所は?
意識を手放したのか僕は。
まさかね、死んだなんて有り得ないこの痛みは本物だ。
ズキズキと心臓の音と同時に痛む傷。
暗く、埃っぽい空気の中目を開けた。
「だい…じょう……ぶ?」
「…ああ。君が一人で此処まで運んでくれたのかい?」
頷く少女。
話すのがあまり得意ではないのだろうか…不思議だ。
日の光が微かに穴から漏れている…もう朝か、いや昼かもしれない。
「此所はどこだい?」
「私が住んでる…廃墟…寺……すぐ近くで…あなたが倒れてた」
まだ僕が心配なのかあまり明るい表情とは言えない。
何故、他人にそれほどに執着できる?
君とは会ったばかりだ…
なのに……
「お腹…空いてない?食べる…?」
無器用に握られたご飯が笹の葉の上に乗せられていた。
「君が作ったのかい?」
頷いてから僕に食べろと言っているかの様に視線を向けていた。
形は兎も角、彼女の優しさに甘えよう。
人の暖かさも良いかも知れないと…この時思った。
「…おいしいよ」
その一言だけで、彼女は笑顔になった。
明るく微笑み僕を見つめる。
何故か心が暖かくなった。
「よかった…貴方が死ななくて…」
「え…」
僕は食べていた手を止め彼女を見る。
「すごい血…だった……だから手当て…」
「してくれたんだね、ありがとう。」
初めてなのに、目の前にいる彼女は優しく無関係な僕を助けてくれた。
優しさとは、なんと暖かな物なんだろうね……。

僕が、君を殺すなんて思いもしないだろう。

彼女が窓を開けてくれた。
静かに流れる時間…とても長く感じた。
日も傾き、暖かな橙色の光が差し込み太陽が沈むにつれ紫へと空も変わる。
夜の闇が……僕の心とやろうとしている事すべてに、惹かれているようだった。
僕が浴びてきたのは人の血。
それは紛れもなく僕がやった。
罪の意識など何も無い。
新しい秀吉の時代を見るが為…。
だから…僕が、こんな風になっていてはいけない。
もう、命も短く誰の傍にも居なくなるのだから…。
「半兵衛…?」
先程教えた名前を小さな口から鈴のような可愛らしい声で呼ぶ。
色白で、目はぱっちりとしている彼女の名前は…
「みちる。」
一言呼べば、最高の笑顔を僕に向けた。
こんなに純粋な子が今まで回りに居ただろうか?
ああ、暖かい…
「半兵衛…もう少し…休む……」
「ああ…そうだね。今は、寝かせて貰うよ」
起きていた上半身を布団に埋め…目を深く綴じた。
何よりも暖かく、久しぶりだった。
人を冷たくあしらう事が日々続いてたからか、何故彼女は暖かいのだろう。
この様な感情など不要なはずなのに……


だからこそ、殺さなくてはいけない、


彼女の前から消えるだけでいい筈なのに、それが出来ない。
いつか君と幸せになるとしたらきっと僕が死んだ後だから…
ずっと朝などこなければ良いのに

この僕が…笑ってしまうよ、

まったく、小さな子供の我儘だね。

布団の中は自分の体温で暖かい筈なのに、やけに心だけが冷たかった。
心臓だけ体温が無いように…
冷めきっていた。
「三日か……」
秀吉が僕を探してるはずだ。
帰らなければならない…。
いや、帰らなければいけない……彼女を…殺さなければ…。
自己満足でも……昨日みちるがくれた花を手にとる。
立ち上がった時に、ふらついたもののちゃんと大地を踏みしめた。
最後の最後まで、こんな僕に暖かさをくれたから…
「!…半兵衛っ!!」
駆け寄る君に……刀を刺した。
「っ……かはっ…」
「すまない…みちるとはもう一緒に居れないんだ。」

刺した手も心も、冷たい
「半…兵衛…?」
「っ!!」
熱い…目が……彼女を刺した同じ腹部に痛みと熱さが同時にきた。
「これは……?」
「半兵衛に…命を半分上げた……だから死ぬ時は、…」
    “ 一緒 ”
耳元で囁かれた意味もわからず意識が遠退く……
だが、これだけはわかる。
みちるも僕も…一緒に終わると言うこと。
目から涙…
 
 腹部からは血…

  口からは最後の言葉を…

“ 愛している ”

意識も何も無く、ゆっくりと倒れる。
みちるの手が僕の頬を撫で唇には…血と、重なるみちるの唇……

その翌朝……(sida Hideyosi)


「半兵衛……」
目の前に眠る友。
半兵衛の握り締めてる一輪の花を束にして…血溜りを吸い込んだ赤い土の上に花を置いた。






その顔は、永遠と幸せそうに眠る。

ー終幕ー
(1人の聡明な軍師は、永遠に捕われたまま)

参照は、気分転換でどうぞ。