二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】大江戸戦記〜たとえ世界が違っても〜序章UP ( No.39 )
日時: 2010/04/29 16:31
名前: †槐朱† ◆ZnBI2EKkq. (ID: 3xnkBRQd)
参照: http://www.nicovideo.jp/watch/nm9048573

 第一訓


今日は朝から騒がしかった。女官が忙しく動き、各国からの来賓者が雑談をし、軍の将軍や警吏は宴の催される会場の警備についての打ち合わせをしている。

桜燐はその様子を心此処に在らずの状態で見ていた。

天幕のせいではっきりとは見えないが、なんとなく様子が分かる。


「如何致しましたかな、桜燐様。」

その声で我に返った。声を掛けてきたのは初老の男。白く長い髪と髭をこしらえている優しそうな老人だった。

老師せんせい。」

この男は、桜燐を始めとする王族の者たちに学問を説く言わば家庭教師のようなものだ。

「本日は御生誕、真におめでとうございます。」

老師は軽く礼をした。それに倣い、桜燐も会釈をした。

「ありがとうございます。」

「民は今日のこの日を心待ちにしております。桜燐様も麟椙の次世を担う、この国にとっては尊き御人。その事をお忘れなさる事の無い様に。」

「……心得ております。老師。」

寂しげな表情で、桜燐は答えた。

「ではわたくしはこれで失礼致します。各国の親王や姫君にもご挨拶をなさい。礼儀も確りしていなければいけませぬぞ。」

老師は微笑み、その場を後にした。その老師の後姿を見送り、桜燐は立ち上がった。

「桜燐様、どちらへ?」

椅子の傍に仕えていた女官が問うた。

「各国の親王様やお姫様にご挨拶をなさい、と老師が仰っていたから……ご挨拶をしに行って来ようと思うんです。……駄目ですか?」

「いえ。そんな事はございません。桜燐様のお顔を見たいと皆さん仰っていましたよ。わたくしも付き添いますね。」

「分かりました。」

「いいですね?桜燐様。貴女は王族です。斈のあざなを天より承りし方なのです。公衆の面前でも堂々とした立ち振る舞いが要求されます。顔を紅くしてもじもじしたりする事の無いようにお願いいたしますよ?」

「え?……ふ、不安です。私に出来ますか?」

そう桜燐が言うと、女官は笑った。

「大丈夫です。堂々とするといってもどうか落ち着いて、お気を楽にしていてくださいませ。」

桜燐は頷き自分の座っていた椅子の前にある天幕を手で払いのけ、階段を下りた。

するとその場にいた者たちの視線は、一斉に桜燐に向けられた。