二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ−限られた時間で、限られた命で、限られた愛を− ( No.81 )
日時: 2010/05/12 16:48
名前: 亮 (ID: cX1qhkgn)
参照: あんなに笑ってくれたお前は、物言わぬ亡骸となっていた。






怒らせる、つもりなかったんだよ。



ただ、お前に分からせたかった。






俺は、こんなにお前を好きだ、と。
でも、お前にとっての幸せはアイツといることだ、と。










それだけだから、戻って来てくれよ。










お願いだから。
もう、離れろ、なんて言わねェよ。





亡骸は何も語らない。





そこに倒れているのは、確かに彼女で。
その心臓がもう、機能していないのも確かで。


「弥」


呼びかけても返ってこないのも、確かで。
それでも、応えを求めずにはいられない。
だから、何度も語りかける。


「おい、弥。 こんなトコで寝てんじゃねェよ」


そうだ、 寝てるんだ。
寝てるんだ寝てるんだ寝てるんだ寝てるんだ寝てるんだ寝てるんだ寝てるんだ寝てるんだ!
弥は、きっと目を覚ます。


「おい・・・ッ 起きろ、俺様の命令だ」


自分の言葉で、跡部の脳裏に彼女との思い出が浮かんでは消える。

“俺様の命令”

その言葉1つで、彼女は困ったように笑いながら、カンペキに仕事をこなす。
どんなに、理不尽な要求も、笑って。
ただ、笑って。

“しょーがないなぁ、あほべは”

そんな風に、笑って。
でも、俺は怒って。


「起きろよ、命令だ。 いい加減、起きろ」(跡部)


応えが、返って来るハズ、無いのに。


「起きろ。 おい、弥! 寝てんじゃねェ、起きろ!」(跡部)


頭では理解している現実が、ココロに湧き上がってくる。
認めない、弥は、必ず。
いつだって、俺の命令に背いたコトなんて、無かっただろう?



ああ、1度だけ。



「イヤ」(弥)
「はぁ?」(跡部)

初めてだった。
弥から、いつもの笑顔が消えた。

「何言ってやがる。 お前と忍足はお似合いだぞ?」(跡部)

いつもの調子で。
俺はお前に何の興味もねェよ、そう言うように。
意地悪なカオで、笑ってみせた。

「何で、そう思うの?」(弥)

彼女は、焦ったように問う。
やはり、俺は笑みを浮かべて。


「仲良いのぐらい、見てりゃ分かるだろーが」(跡部)


そうだ。 ずっと見てた。
だから、お前が本当に思っているのが誰か、くらい分かってた。

「侑士と、付き合えば良いって、そう思うの?」(弥)

涙が、こみ上げる。

「当たり前だ」(跡部)

彼女は俯く。
そして、口を開く。
どんな表情か、なんて見なくても分かった。


「跡部は、やっぱりアホだよ。 なんにも、見てないよ。 見えてないよ!」(弥)


生徒会室の、ドアが大きな音を立てて閉まる。
涙が、こみ上げてくる。

“跡部様に近づくなら、これから先どうなっても知らないから!”

そんな、雌狐の声が、木魂する。
そう言えば、腕にアザがあったな。
だから。
これ以上、俺に近づくな。
忍足に、守ってもらえよ。



弥とは、それから話していない。
彼女は忍足とは付き合わなかった。

“振られた”

忍足はそれだけ言った。


「弥・・・」(跡部)


もう1度言う。


「起きろ」(跡部)


起きてくれ。
笑ってくれ。
ほんの少しで良い。
話しを、聞いてくれ。

そんな願いを込めて、抱きしめたそのカラダは、





















———————————————冷たかった。




















「わた、る」(跡部)

こみ上げた涙が、ゆっくりと流れ落ちる。





君の亡骸。





起きない。
笑わない。





何も語らない、君の亡骸。