二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ポケモン不思議のダンジョン「虹色の守護者達」 ( No.14 )
日時: 2010/04/25 20:51
名前: みやっさん ◆E53IZBWzfE (ID: cNHv/zeQ)

02.きこえる<前編>

ある所に、ある生物しか住んでいない世界があった。
ポケットモンスター。
縮めて、ポケモン。
ここは、ポケモンのみが暮らす“完全に創られた世界”、通称『レインボウ地方』と呼ばれている。

『レインボウ地方』とは、虹の具象化として作りだされた七つの国の総称である。
各国にはその国の存在を示す“命の色”が祀ってあり、その国の色にちなんで国の奥深くに眠っているという。その“命の色”が欠けてしまうと、その国の命は絶ってしまい、時間、空間と共に止まってしまうのである。
そんな『レインボウ地方』通称、「青の楽園」と呼ばれている国がある。
国の中ではいちばん首都のような場所で、ポケモンの一番の生息地でもあるのだ。
その地、「青の楽園」びて、木造建築で作られた大きな建物があった。
周りは物見やぐら、策などがあり、大きな松明と共に大きな門を構えていた。

「復唱ォォォォォ———ッ!」
外からでも聞こえるくらい大きな声が建物中から響いた。
騒音ポケモンのドゴームである。
彼はここ随一声が大きいポケモンなのである。
「一、守護者なるもの、風格、威厳、これ保つべし!」
『一、守護者なるもの、風格、威厳、これ保つべし!』
「一、守護者なるもの、悪を討つ戦士になるべし!」
『一、守護者なるもの、悪を討つ戦士になるべし!』
「一、守護者なるもの、常にポケモンの助け人になるべし!」
『一、守護者なるもの、常にポケモンの助け人になるべし!』
「一、守護者なるもの、すべてを愛し、尊重するべし!」
『一、守護者なるもの、すべてを愛し、尊重するべし!』
このやり取りを行い、もう一匹のポケモンが翼を広げ言った。
「……ウム! 今日もこの訓を胸に入れ、今日もしっかり頑張るように!」そういうのは『虹の守護者候補』育成学校通称“ギルド”の育成教官、ぺラップだった。
『虹の守護者候補』というのは、レインボウ地方に名が残される戦士のことで、様々なポケモンたちが“ギルド”に集まり日々、『虹の守護者』になるのを目指しているのである。
主な活動目的として、『レインボウ地方』の治安を良くしたり、悪を討ったり、困ったポケモンを助けるなどの活動である。
ランクがあり、昇格するほど守護する対象は増え、それも、“命の色”を守るなどの任務をこなさなくてはいけない。
そんな「戦士の卵」が生まれるのは、ここ“ギルド”。

ぺラップは頭を悩ませ、溜息を吐いた。
『虹の守護者候補』育成学校“ギルド”教官役、ぺラップは大量の資料に目を通した。そして溜息を吐いた。通しては溜息、通しては溜息の連発だった。
バササササササ……、
「あ……、まいった、まいった……」
不意にテーブルに置いてあった大量の資料や手紙がバラけた。
「うーむ、こりゃ仕方ない。おい! コリー! コリー!!」
「コリー」と名を呼ぶぺラップ。すると少し経ってから一匹のチコリータが階段から下りてきた。
「はいはーい! って、うわぁ……教官、紙がすごい事になっていますよ?」
地下にたどり着いた時、目の前に広がるのは紙の山。古臭いにおいが鼻を刺す。
「あぁ、こりゃいいんだ。それよりコリー」
とぺラップは咳払いを一つ。
「そろそろここに入って半月は経つだろ? 下積み巡回ではキリがないから、「おたずねもの」の逮捕はどうだ?」
「え……? あたしが?」
これを聞いてチコリータも目を丸めた。
「でも……まだ早いのでは?」
「構わん。お前は思ったより戦闘能力に長けているからの。私が見るからに負け戦を期待する必要はなさそうだ」
回りくどい言い方でぺラップはにやける。
また嫌な所でハードルを上げるな、チコリータは心の中で言った。
「ありがとうございます……で、例の「おたずねもの」は?」
「あぁ、これだ」
と、足下の紙を一枚取り、コリーに見せた。
「これは……!!」
これはコリーも息を殺した。
「同じ内容が百件以上来ているんだ。このまま放っておくのは我々の名が廃るしな。どうする?」
「しかし……これ……」
期待より大きな感情——恐怖という名の感情がコリーの心をつぶした。
(無茶苦茶だ!)、強く心の中で言った。言いたいのに、言えないのが禍々しい。
「————、分かりました。このコリー、全力持って逮捕します」
「よろしい」
黒い笑みがぺラップからこぼれる。

コリーは階段を上がる時、ぺラップに一声かけられた。
「死んだら、見放すからね」
(矛盾してるじゃないかーー!!)
負け戦には期待しない、そういったぺラップの後の言葉だ。コリーは腹が立った。
ズン、と力強く足踏みをし、“ギルド”から離れようとした時、
「コリー!」
すらっとした体形のワンリキーが目の前に現れた。
「きんにく先輩!」
「コリー任務かい? 久しぶりじゃないか」
彼はコリーよりツーランク高い先輩である。
「はい……あの、「おたずねもの」を……」
「お! 初陣じゃないか! どれ、相手は——、」
「これです……」
うつむき加減でコリーは紙を見せた。
「はっは、どれどれ……!?」
「きんにく先輩……、」
コリーは怖々と迫った。
「たまげた! ぺラップのおっさんも頑張ったじゃないか!」
「……試されたとおもんです」
「はっは、俺もやられた。ちょっと手強い相手かもしれんがやらなくてはいけないんじゃないか! 荷物は? 回復薬は? 欠けているんじゃないか?」
「揃ってます」
「そーおっか! はっは、頑張れ。終った時は……温かく、迎えてやる」
涼しい顔で、グっと親指を突き出した。
「……ありがとうございます!」
“ギルド”を颯爽と、コリーは走った。
「西にずっと向かったほうが目的に一番近いんじゃないか? 頑張れよ!」
「はーい!」
言われた通り、コリーは先にある四つに分かれた道の西の道を進んだ。
コリーの戦士としての初陣は、始まった。

青の楽園、ウエストフォレスト。
のどかな自然がめぐり、山々が連なった地帯、空気が良く主都部である青の楽園では珍しい部分だ。
——一匹のポケモンが倒れていた。
しばらくして、コリーは駆け足で森に入った。そして、それはすぐ眼に映った。
(被害者!? どうしよう……)
たまらず、一匹のポケモンを抱え、呼びかける。
「大丈夫ですか! 目を覚ましてください! 起きて! 起きてーー!!」
外傷は全く見られない、ピカチュウだった。
(ピカチュウ……だよね? 傷が、見当たらない)
外傷はないと考え、内蔵をやられたのでは? と考える。
すると、
(————!?)
手からもわかるくらい、ピカチュウの手が冷たかった。
(まずい! 絶対……、死なせない!!)
「大丈夫!? 起きて! 起きて! ……頑張って!!」
しばらくさすったその時、
「うむ? ……むぁぁ?」
うっすらと、ピカチュウは目を開けた。