二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ポケモン不思議のダンジョン「虹色の守護者達」 ( No.18 )
- 日時: 2010/04/30 22:40
- 名前: みやっさん ◆E53IZBWzfE (ID: 3A3ixHoS)
03.きこえる<中編>
揺さぶられる感じがした。
(おぁ? 何が起きた?)
彼は不思議に思い、体を動かそうとしたら、体が動かなかった。
(何だ? ん? 動かない?)
まるで縛られたかの如く、体は全く動かない。
(ぐ、ぁ——、)
すると、体からどんどん力が抜けていくような感じがした。
体が——冷たくなってきた。
(ま、ず、)
すると、どんどん体が重くなり、何か、無くなりそうな予感がした。
(意識が、遠、の、く)
——大丈夫!? 起きて! 起きて!
遠くなる意識からはっきりとわかる。
声が、きこえる。
——頑張って!!
まるで自分に言い聞かせているようだ。彼はジーンと、心に何か熱いものが入ったような気がする。
すると、全身に熱が広がり、体が柔らかくなった。
意識も、近づいてきた。
あたたかい。
(指が動く——! 目も、開く)
うっすらと、彼は目を開けた。
「うむ? ……むぁぁ、」
ぼや〜っと、姿が見えてくる。
しばらくして、世界がはっきりと見えた時、初めて目の前にはチコリータがいることを認識できた。
「気がついた?」
チコリータが声をかけてきた。彼は歯切れ悪く。「あ……はい」と答えた。
瞬間、彼は何かを感じた。
(何か……変だ)
「あの? この近くに……」
チコリータが話しかけてくる。おかしい、やはりこの考えは消えなかった。
「ボスッ、」と、チコリータは何かを言おうとした。
(そうだ——!!)
刹那、彼は大声を張り上げた。意味深な言葉で、
「どうして、“喋ってるの?”」
「……は、はぁぁ!?」
この言葉にチコリータは驚愕の声を上げた。
“何を言っているのか”?チコリータも、ピカチュウの、さっぱり分からなくなった。
「どっ、どういう……事よ」
「こうい事だ。逆に聞きたい……あぁ、」
彼は閃いた。“意味”が通じた“意味”が、
「質問が悪かった。……どうしてポケモンが喋って、」
途切れた。否、途切られたのだ。
チコリータの前足が思いっきり彼の顔面を突く。
「か、はっ!?」
水のたまった地面のくぼみまで、距離からしておよそ数十メートルくらい飛ばされた。なんて力だ。彼は思った。
「何、頭のおかしい事言ってんのよ!? 馬鹿じゃない!?」
チコリータは怒り心頭に、叫び散らした。
「あんたなんて助けなきゃよかった! 茶番よ! 時間の無駄よ! ……まったく、仕事があんのに、」
「仕事?」彼は濡れた体をゆっくり起こした。
「うっさい! 関係ない!!」
チコリータは大きな声で一蹴した。
「……まぁ、被害者を免れたついでに、“ここは危険だからね、早く逃げたほうがいいわよ”。あと……死なないでね」
「えっ?」
チコリータの後半の声が聞こえなかった。そして、その注意の声ももっと気になった。
そのあと、チコリータは早口に言った。
「アンタ、顔洗ったほうがいいわよ! ホントッ、アホ面だから!」
「お、おい!」
そう言ったチコリータはいつの間にか消えていた。
「な……なんだよ。なんで、喋るんだ? あのチコリータ?」
そうして彼は、チコリータの「顔を洗え」にとりあえず、従うことにした。
(水……って、俺ずっと水場にいんじゃん)
自分が水に浸っているのをすっかり忘れていたようだ。
彼は、顔を水で洗うため、手でかごを作った。
そのかごで水をすくう。ある生物の独特な行動である。
両手を使って、水に入れた……とき、
「あっ……、」
彼は、絶句してしまった。
手が短い。
手が黄色い。
手が……小さい。
揺れる水面が時が止まったかのように、否、彼に見せつけるかのように水が鏡のようになった。
「————ッ!?」
彼は、驚いた。
水面に映った驚いた「ピカチュウ」をみて——だ。
「なっ、何だよ……こりゃあ……」
水面に映っている、つまり自分であることを認識した。
(違う……俺の、姿じゃない?)
不意な疑問が頭をよぎった。
(俺は何でチコリータが喋ると、質問をしたんだ?)
何をわけのわからない事を言っている、彼、もといピカチュウは、そんなじぶんを、気味悪がった。
(俺は、何だ?)
考えるだけで苛立ちがこみ上げる。
何も分からない。自分の頭が悪いのか、世の中がおかしいのか、まず、世の中が何なのか分からない自分に腹が立った。
一本の木に目が行った。
腹が立った時に起きる、破壊から生まれるストレス解消。
使うときは、いまだ。
「ク、ソ、があああああああああああ!!」
短く小さな足が、一本の木を揺らすほどの大きいキックを食らえた。
「イテー……」
無我夢中に蹴った。
残るのは、激しい鈍痛と、大きな溜息。
そんな白けた空気で、まだ揺れる木から何かが落ちた。
「ギャッ、」
「!!」
木から落ちたのは、キャタピーだった。