二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ポケモン不思議のダンジョン「虹色の守護者達」 ( No.44 )
- 日時: 2010/07/23 23:43
- 名前: みやっさん ◆E53IZBWzfE (ID: cakHq5Qm)
- 参照: 間欠、簡潔、完結に!3K!!!
06.ありがとう
地を蹴った瞬間、自分の体の軽さに改めて気付いた。
(結構軽い、滞空時間は数秒くらいかな?)
独自で予想しつつ、一旦スピアーから数メートル離れた。
(ピカチュウは何の技が使える?)
落ち着いた思考で人間だったころを思い出す。
(相手は虫だ。俺は電気技が使えて……ダメージは食らえるか、)
考えている時間は十秒もなく、状況的にはお互いがにらみ合っているとこだ。
(物理攻撃で言ってみるか? でも体格はあっちの方がいいし、速さも、たぶんアイツの方が戦い慣れしてる。でも、俺はかつては———、)
かつては、次の思考が止まった。
(……アレ?)
自分は人間だ。という確信はついた。しかし、次の言葉が出ない。
根拠が頭から離れている——つまり、ピカチュウは結論である人間だった。という事しか“思いだせなかったのだ”。
(記憶が…・・足りない、のか)
がっくりと心の中で溜息を吐いたとき、前方から声が迫ってきた。
「にらみ合いはシマイだァ」
眼前、スピアーの手の針があった。
「!?」
手針を後ろに引き、そのまま前に突き出し、攻撃をしようとした。
「!!」
ピカチュウは地面を蹴り、体重を後ろにかけ、バック宙のようにして避けた。
そして、風を斬るようにスピアーの手針は空振りした。
秒単位の動きに双方は目を丸めた。
(あのネズミ、俺の動きが見えるのか!?)
(———ッッああああ危なかった!! で、でも……きっとあの動きはまだ、ゆっくりだと思う。本気だったら、たぶん俺も読めなかった)
やっと互いの強さを知ったか双方はニヤッと笑った。
スピアーは不敵な笑み、ピカチュウは……ひきつり笑いだった。
「その調子じゃ、俺と同じように思考回路を貼りめぐらせてたのか!」
「へーえ。お前も……考えるのか、そっくりそのまま返すぞ……」
「……」
その様子をチコリータは全部見ていた。
(うん……十分戦えてる……)
戦う様子をチコリータはじっと見つめる。
(スピードも……悔しいけど、あたしより読みが早い)
チコリータは溜息をひとつついた。
先程のピカチュウの言った言葉が頭に浮かぶ。
(———「お前も戦士だろ。守るもんなんか多い、組織、この森、この国も……俺はここにいた以前の記憶なんてない。でも……分かるんだ。お前や、周りにいるポケモンたちが、」———)
いろいろ考えていた。
まず、自分のプライドというものがあった。
そして、組織のプライド、戦士が見知らぬポケモンに救われた、なんてマヌケな話は、双方とも聞きたくない事だ。
それこそ、ピカチュウが大口を叩き結局倒せなかったら、殴り潰そうかとも考えた。
しかし、見えた。
ピカチュウのまっすぐな視線を、しっかりと。
そして、その後のピカチュウの言葉に、
(———「俺はお前を守る。今言ったぞ。守ると言ったんだ。これ以上の口出しはするな———)
(———「俺は——人間……なんだよ!!」———)
チコリータは不思議な気持ちと、懐かしさを感じた。
彼は出会って、すぐ前足で顔面を思いっきり蹴ってあしらい、あの後、自分がスピアーにやられ、そして木陰からやってきて守ると言いい、きなり人間だと発言をしたり、
こんな短時間の間に、ひとりのポケモンに振り回されたチコリータは、
彼の存在の視点を変えた。
ここを、彼に預け、
彼を、手に入れようと、
チコリータは彼に勝て欲しい———と、
熱い視線で、彼……ピカチュウを見続けたのである。
「これは、よけれねえ!」
スピアーは手針を高く振りかざす。
「くらェ!!」
ピカチュウに向け、細かい小さい閃光の針が手針から数百近く放たれた。
スピアーのミサイル針だ。
「うわァ!?」
ピカチュウはこの技に想定はなく、————直撃してしまった。
「うっ、」
両膝をついて、その痛みがジワリとやってくる。
細かい針はかゆみを伴うような痛みを広げ、先行の光として生まれたため、じわじわと体が熱く感じる。
「フン! やっぱり俺の方が強ェな!!」
スピアーはピカチュウを見下し、下卑た笑いを空に散らす。
「いつ……倒れると言った?」
「チッ……そうだねェ、油断するところだったぜェ」
と舌打ちをして、しかし笑みを含ませていた。
(あのスピアー……楽しんでいる)
木陰でチコリータはそう考えた。
しかしピカチュウも、苦痛を書くし、笑う。
「!?」
露骨に驚くスピアーにピカチュウはニヤッと笑う。
高く飛ぶ。
「俺は……急にこんな世界に飛ばされて、意味分かんねえんだよ……どこまで信じていいか、はっきり言って、これは夢物語でありたいって考えているんだ。……それがなんだ? いきなりこんな姿になってるわ、こんな形で闘わなくちゃいけなくなったわ……マジ意味分かんねえんだよ、」
高く飛ぶ。
「もうアレこれ頭にいれたくないんだけどよ……残念ながら、人間のころに誓ったっぽい言葉が頭から離れなくって……執念って奴か? ……イヤになるね……、だからさ……、」
高く飛び、ピカチュウはおもむろに息を吸い込み、
力強く吐き出した。……頬へと。
すると、ピカチュウ赤い頬から微弱、やがて強い電気が生まれた。
「な! あ!? ……ガァ!」
「……今たまった怒りを……お前に放出してやったよ、」
—————————————、
森が一面、強力な光によって白く包まれた。
さながら、時が止まったかのようなものである。
そして、電気がまわりにピリピリ残っていて草などから電気が伝わり、チコリータの木陰にもピリピリと静電気のような電気が体を刺激した。
直後真っ黒になった体をわずかに浮かせるスピアーがあった。
しかし、浮くにも乱れ、不規則に羽の音を雑に鳴らす。
「ハァ、——ハァ、隠し技かァ?」
「へへっ、俺も……出せるとは思えなかった、」
「クソ……め」
そしてスピアーは力尽き、地面にと落ちた。
「ハァ——、ハァ——……」
ピカチュウも相当なダメージがあった。
力の配分を甘く見ていた。
あのとき、自分が頬から初めて電気を放した時、とにかく敵を倒さなくては、という気持ちがとてもあったのと、守らないといけない、という強い気持ち、さらに怒りが力の抑制という志向が完全にショートしていた。
そして自分にも大きなダメージの代償があったのだ。
とにかく、ピカチュウは敵を倒すことができるのである。
まだ草を踏むとピリッと電気が伝わる。
ゆっくりとした足取りで木陰に近づく。
そしてピカチュウは指し所の言葉を出した。
「倒せたけど……周りがメチャクチャだな、……ゴメン」
謝るピカチュウにチコリータは返す言葉を失った。
失ったが、チコリータは意思を伝達しようとした。
前足をコツっと、ピカチュウの額に当て、
「ありがとう、」
ぼそっと、消えそうな声だが、ピカチュウにはしっかり聞きとった。